【科学でナゾとき!】身近な事件を科学で解決する新感覚ミステリー、第二弾。【やまんばの屋敷事件】【小学校高学年以上】

2024年3月21日

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科学でナゾとき! やまんばの屋敷事件   あさだりん/作 佐藤おどり/絵 偕成社

パーフェクトな児童会長、彰吾には、誰にも知られたくない秘密があった。それは、変人の理科教師、キリン先生が父親だってことだ。でも、このキリン先生、じつはスーパー理科教師だったのだ……

この本のイメージ 身近な科学☆☆☆☆☆ ミステリー☆☆☆☆ スクールライフ☆☆☆☆☆

科学でナゾとき! やまんばの屋敷事件   あさだりん/作 佐藤おどり/絵 偕成社

<あさだりん>
1970年東京都生まこうれ。早稲田大学第一文学部卒。現在は長野県松本市在住。日本児童文学者協会会員・信州児童文学会会員。作品に「まっしょうめん!」シリーズがある。

<佐藤おどり>
イラストレーター。書籍・参考書などの装画や挿絵で活躍中。

 初版は2021年8月。
 このシリーズは、一つの本に三本から四本の短編が収録されているオムニバスで、どの巻から読んでも楽しめるようになっています。

 しかし、おおまかな時の流れはあるので、もし、順番に読みたい方は、まず「わらう人体模型」からお読みください。「わらう人体模型」のレビューはこちら

 このサイトでは、わたしの読書記録とともに、「わたしが子供の頃こんな本があったらよかったな」と思った本をご紹介しています。そのひとつが「勉強が楽しくなる本」。

 学校の勉強って、子ども時代の時間のかなりの割合を占めるので、授業やテストが嫌いだとかなり辛い人生になってしまいます。次から次へとテストがやってくる子ども時代、「なんのために勉強しないといけないのだろう?」と疑問に感じることもあるのではないでしょうか。

 そんなとき、「学校の勉強はこんなことに役に立つんだよ」と言う、「学ぶことの面白さ」を教えてくれる本がこれ。「科学でナゾとき!」です。

 学校の勉強が楽しくなりそうなファンタジーシリーズとして、角川つばさ文庫の「時間割男子」もこのサイトではご紹介していますが、これは乙女ゲーム的要素が強く、どちらかと言うと女の子向け。男の子が主人公のものを探していたとき、この作品に出会いました。

 ストーリーは……

 主人公、鈴木彰吾は自他共に認めるパーフェクトな児童会長。でも、誰にも知られたくない秘密がありました。それは、誰がみても変人にしか見えない、理科教師キリン先生が父親だと言うこと。

 常にかっこよくありたい彰吾は、ドジでかっこわるいお父さんが恥ずかしくて仕方がありません。しかし、このお父さん、身近な謎を理科の知識で解決する天才なのです。

 彰吾たちの学園生活は、謎とトラブルでいっぱい。そんな「子どもたちの大事件」をキリン先生の知恵と、彰吾たちの行動力で解決してゆきます……

 ……と、言うのがあらすじ。

 短い物語のオムニバスで、今回収録されている物語は、

  ・やまんばの屋敷事件
  ・ないしょの手紙事件
  ・なぞの白い粉事件
 
 の三本です。

 今回も、キリン先生が身近な理科の知識であざやかに事件を解決してくれます。
 キリン先生は、頭脳明晰で困ったときには頼りになり、家族を大切にするいいお父さんなのですが、科学以外はとことんポンコツで、デリカシーがありません。

 ハンドメイド作家のお母さんは、クリエイターなので、そんなお父さんのことがちょっぴり不満なようです。

 彰吾君は、そんなふたりのあいだに生まれた、容姿端麗、成績優秀でスポーツもそこそこできる(でも球技は苦手)人気者です。ちょっぴりかっこつけのナルシストなところがあるので、お父さんがこんな奇人変人だとはどうしても他人に言えません。

 けれど、身近で困った事件があると、お父さんは化学の力で鮮やかに解決してくれるので、どうしても頼ってしまうのでした。

 今回のお話では、彰吾君のよさも描かれています。彼の自分大好きで自信満々ポジティブなところが、悩んでいる友達の気持ちを引き上げたのでした。

 彰吾君には、ダサいお父さんのことを恥ずかしいと思う、ちょっといかんところがあるのですが、他人を馬鹿にしたり、見下したりすることのない、純粋な「自分大好き」ナルシストです。

 自分を上げるために周囲を下げるタイプのナルシストではなく、ただただ自分が上がるタイプ。純粋にポジティブなんですね。これは、彼のいいところです。
 その妙な自信と負けず嫌いさが「オレに解決できない事件はない」とばかりに、他人の困りごとに首を突っ込ませる。

 たしかに、こう言う人がいないと、ミステリーは成立しません。

 それに、なんだかんだ言って、お父さんのこともお母さんのことも大好きなのも、今回伝わりました。なんだ、いい奴じゃないですか。見直しました。(←なんだその上から目線)

 このお話では、キリン先生が身近な実験道具を使って謎を解いてくれるたびに、身の回りの「なんでかな」「どうしてかな」が少しずつ理解できるようになっています。

 それによって、「学ぶ」ことは、「わからないことがわかるようになること」「不明なことを解き明かすこと」だと教えてくれるのです。

 わからなかったことがわかるのって、面白い。知らなかったことを知るのって、楽しい。

 勉強って、結局はそうではないでしょうか。勉強を「教えられたことをおぼえること」だったり、「辛いことを努力して乗り越えること」だと思うと、耐えることは出来るのですが、だんだん毎日が辛くなってしまいます。
 もちろん、工夫次第で、つまらない勉強を面白くすることは出来ると思うのですが、そもそも「勉強は辛く厳しいこと」と言う決めつけが、勉強を辛くしているようにも思えるのです。

 「知る」ことは楽しい。そして、手に入れた「知識」を使って問題を解決するのも楽しい。

 すべてをそう思うことが出来なくても、そんなふうに解釈を変えてゆくことができたら、子どもの日常はもっともっと楽しいものになるかもしれません。

 子ども時代の幸せな時間は、大人になったときにその人の人生を力強く支えます。昔の人は「苦労は買ってでもしろ」と言いましたが、わざわざ苦労なんてしなくていいんですよ。努力を楽しむことが出来れば。

 「科学でナゾとき!」は、小難しい雰囲気が少しもなく、ゆかいな学園ミステリーの中に、科学の知識がちりばめられていて、読む人の好奇心を満たしてくれます。

 主人公の彰吾が小学五年から六年という年齢なので、小学校高学年から。でも、賢い子なら、小学校中学年からでも読めそう。学校で教わる理科が、わくわくミステリーに感じられる物語です。

 理科が大好きなお子さまにも、そして理科がイマイチ好きになれないお子さまにも、楽しく読める新感覚のミステリー。キャラクターが生き生きとしていて、等身大の学園ストーリーとしても純粋に面白いので、親子で読むのもおすすめです。

 ※この本には電子書籍もあります。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。登場人物はいい人、いい子ばかりです。また、キリン先生と彰吾のおかあさんもいいパパとママで、ホームドラマとしても面白い。

 日常生活と学校で教わる理科は、こんなにも関係していたんだな、と教えられる科学ミステリーです。

 読後は、肉まんとウーロン茶で一休みしましょう。

 

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