【風の港】空港で出会う人々の人間模様。日常と、ほんのすこしのファンタジー【中学生以上】

2024年3月28日

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風の港 村山早紀/作 水谷有里/イラスト 徳間書店

ここは、人生の交差点。たくさんの喜びや悲しみがひとときすれ違うところ。旅人たちは、ここで休み、そしてふたたび旅立ってゆく。空港で出会う人々の、色とりどりの人間模様を描く、ヒューマンストーリー。

この本のイメージ 短編集☆☆☆☆☆ 人生賛歌☆☆☆☆☆ ちょっぴりファンタジー☆☆☆☆☆

風の港 村山早紀/作 水谷有里/イラスト 徳間書店

<村山早紀>
1963年長崎県生まれ。日本の児童小説作家。「ちいさいえりちゃん」で毎日童話新人賞最優秀賞、椋鳩十児童文学賞を受賞。主な作品は「シェーラひめのぼうけん」「新シェーラひめのぼうけん」シリーズ、「風の丘のルルー」シリーズ、「はるかな空の東」などであり、近年は風早の街を舞台にした「コンビニたそがれ堂」シリーズ、「カフェかもめ亭」シリーズ等が人気を博している。

 「シェーラ姫の冒険」「風の丘のルルー」で知られる村山早紀先生のこの春の新刊。初版は2022年。「読楽」2021年4月号~12月号に掲載されたものにエピローグを加えて加筆修正されたものです。

 空港で出会う様々な人々の織り成す、色とりどりのヒューマンストーリーです。

 わたしは、若い頃の友人が「シェーラひめのぼうけん」のファンだったことがきっかけで、最近になって村山先生の本を読み始めました。すすめられていた当時はほんとうに忙しくて、本をぜんぜん読めなかったのです。

 その友人とは、震災以降連絡が取れなくなってしまいましたが、遅まきながら愛蔵版の「シェーラ姫の冒険」を読み、ぽつぽつとほかの本も読んでいます。どれも心温まるやさしい物語で、ちょっと疲れたなあ、と感じたときに読むと救われるお話ばかり。

 この「風の港」は、このサイトとしては少し大人っぽいお話です。
 最初の短編「旅立ちの白い翼」は、子どもの頃の夢やあこがれなどの瑞々しい気持ちが、大人の世界のままならなさで磨り減って自分と他人を傷つけてしまい、その気持ちがすこしずつ回復して立ち直ってゆくお話。

 まだまだ人生これからと言うような年頃の人には共感が薄いかな、とも思ったのですが、もしかしたら中学生くらいのときにこういう話を読んでおくほうが、大人になったときに同じような気持ちになったときの「心の予防接種」になるかも、そして、自分の夢を反対したり否定する大人とわかりあうきっかけになるかも、と思い直しました。

 「それぞれの空」は、空港の書店で働く女性の、ちょっぴりファンタジーな日常の物語。

 そして「夜間飛行」は三十数年ぶりに再会する親友同士の物語。
 たぶん、多いと思いますが、例に漏れずわたしも「夜間飛行」の眞優梨さんのファンです。
 ほかのお話も美しくて切なくていいお話ばかりなのですが、眞優梨さんのインパクトが強すぎて、全部ふっとんでしまうレベル。
 大切な人を守るために全力で悪女になれる女。しかも中学生のときに。強くて愛が深くて、美しい。
 誤解が解けるのに必要とした年月があまりにも長いのですが、それに耐えられたメンタルの強さがすごいなあ。まあ、全力で忙しくていたら月日が過ぎていた、と言うパターンかもしれませんが。

 しかし、男前な眞優梨さんの隣に立つ人がいままで誰もいなかったのかしらと思うと、眞優梨さんの周囲、目が節穴すぎますよ。

 「花を蒔く魔女」は、世界を旅する、心優しくてさみしがりやの魔女のお話。これも、やさしくて美しいお話です。

 わたしは、SFだのファンタジーだのと、好みは偏っているのですが、気力のあるときはばんばん人が死ぬ話も読みますし、アクションやバイオレンスものも読みます。(若い頃ほどではありませんが)

 でも、もう歳なので、精神的にしんどいときは、そういう「味の濃い」話は無理な時があるんです。そりゃ昔は菊池秀行先生だって、夢枕獏先生だって読みましたよ。大ブームでしたもん。(どういう小説か、ご存知無い方はお調べください)

 でも、今は読むと気合負けしちゃうんです。歳とると脂っこいステーキとかがたくさん食べられなくなるのと同じで。

 そういう時は、繊細で優しいお話が読みたくなる。悪人のいない、やさしい世界の物語を読んで、ひととき、肩の荷を降ろしたくなるのです。

 「風の港」は、ままならない日常に心が磨り減って疲れきってしまったときに、心の回復剤になってくれる本です。まさに旅の途中にひととき、休ませてくれるような。空港の喫茶店のやわらかいソファーで、ほんのすこしだけうたた寝をするような、そんな優しい物語です。そして、元気になったらまた旅に出る。

 少し内容が大人っぽいですが、中学生以上ならどなたでも。
 お気に入りの音楽と、お気に入りの部屋着、お気に入りの紅茶とお気に入りのお菓子を用意して。

 日常のなかで、ちょっぴり贅沢な時間を作って読みたい本です。

 ※この本には電子書籍もあります。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はほぼありません。あたたかくて美しい短編集です。日常に疲れた方に癒しをくれる優しい物語ばかり。
 HSPやHSCの方のほうが、より多くのメッセージを受け取れるでしょう。

 読後は、お気に入りのチョコレートを用意して、ゆったりとしたティータイムを。

 

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