【失われたものたちの本】あの名作映画を生んだ、恐ろしくも奇妙なファンタジー。母を求める少年の冒険。【中学生以上】

母を亡くしたデイヴィッドは父親の再婚に伴い継母ローズと暮らし始める。彼女の家には本でいっぱいの古い部屋があり、その持ち主ジョナサンは突然行方知れずとなったと言う。ある日、デイヴィッドは死んだはずの母の声に誘われ奇妙な世界に足を踏み入れる。
この本のイメージ ホラー☆☆☆☆☆ ファンタジー☆☆☆☆☆ ビターハッピーエンド☆☆☆☆☆
失われたものたちの本 ジョン・コナリー/作 田内志文/訳 創元推理文庫
<ジョン・コナリー>
アイルランド出身ダブリン生まれの推理作家。 トリニティ・カレッジとダブリン・シティ大学でぶ。 2000年にシェイマス賞、2003年にバリー賞を受賞。
<田内志文>
田内 志文(たうち しもん、1974年4月15日 ~)は、翻訳家、文筆家、スヌーカープレイヤー。埼玉県出身。ベストセラー「Good Luck」、「新訳 フランケンシュタイン」「新訳 ジキルとハイド」「失われたものたちの本」などの翻訳で知られる。
先日、異次元空間に封印されていたわたしですが、もう一度異次元にいかねばならないかもしれなくなってしまいました。まだ検査が残っているのですが、今年の夏は少しばたばたしています。
さて、本日ご紹介するのはジョン・コナリーの「失われたものたちの本」。原題はThe Book of Lost Things.原書の初版は2006年。日本語版の初版は2015年です。
今年公開されたスタジオジブリの映画「君たちはどう生きるか」の下敷きとなった小説と言われています。先日、ようやく映画も見てきました。
あらすじは……
第二次世界大戦下のイギリス。
本が大好きな12歳のデイヴィッドは、最愛の母親を病気で亡くしてしまいます。
父はローズと言う女性と再婚し、ローズの大きなお屋敷に引っ越しました。
そこには、かつてジョナサンと言う男性が使っていた本だらけの部屋がありました。
彼はある時、忽然と消えてしまったと言います。
ある日、デイヴィッドは死んだはずの母の声に導かれて、奇妙な世界に足を踏み入れてしまいます。
そこは、おとぎ話の登場人物や神話の怪物たちが蠢く、美しくも残酷な物語の世界。
元の世界に戻るため『失われたものたちの本』が必要だと言うのですが……
かなりホラー味の強い物語で、おとぎ話をベースにした王国の登場人物もダークでグロテスク。
少年は次々と襲い来る試練に立ち向かい、乗り越えるたびに成長し強くなりますが、スカッとはせず、後味の悪さが残ります。
明るく元気な冒険ファンタジーが読みたい人にはあまりおすすめできませんが、内容は面白く、ラストのどんでん返しも見事です。
ハッピーエンドではありますが、少しビター。
ダークファンタジーとせつないハッピーエンドが好きな方におすすめです。
さて、今日はついでですが映画の感想も書いておきましょう。(あくまで個人の考察です)
ここからはネタバレになりますので、大丈夫な方だけクリックしてください。
本の話に戻しますと、「失われたものたちの本」には昔の少女漫画の雰囲気があり、萩尾望都先生の世界などかお好きならはまると思います。
かなりボリュームがあります。ルビも少ないことから中学生から。
ラストではかなり盛り上がるのですが、それまでがダークな話が続くため、すこしだけ読むのに忍耐力が必要です。
でも、読み応えがあるファンタジーです。
今年の夏はあまりにも猛暑なので、家で読書をしたり、お出かけするなら映画館がいいですね。
読んでから観るか、観てから読むか。
どちらでも、面白い発見がありそうです。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ダークよりのファンタジーです。残酷なシーンもあります。「そういうシーンがある物語なのだな」とあらかじめ身構えていれば楽しめる方で、ダークファンタジーがお好きならおすすめです。
ラストは、少しせつないハッピーエンドです。
最近のコメント