【どんなときも名探偵】名探偵と一緒に事件をズバッと解決!ミルキー杉山シリーズ第4巻。愛されるロングセラー【小学校低学年以上】
俺はミルキー杉山。職業は探偵だ。アルバイトでサンタさんの格好をしてプレゼントを届けにいったら、大変な事件に巻き込まれてしまった。さて、どうするか……
この本のイメージ 推理☆☆☆☆☆ 名探偵☆☆☆☆☆ 怪盗☆☆☆☆☆
どんなときも名探偵 杉山亮/作 中川大輔/絵 偕成社
<杉山亮>
杉山亮(すぎやまあきら)。
1954年東京に生まれる。1976年より保父として、各地の保育園などに勤務。手づくりおもちゃ屋<なぞなぞ工房>を主宰。著書に「たからものくらべ」「子どものことは子どもにきく」「子どもにもらったゆかいな時間」「もしかしたら名探偵」など。
<中川大輔>
1970年神奈川県に生まれる。児童文学美術家連盟会員。おもなさし絵の仕事に、「BOOK術・子どもの本がいちばん」「魔女のよせなべ」「はらぺこ伊助と大どろぼう」「もしかしたら名探偵」など。
先日、「コブラ」の作者寺沢武一先生と「つる姫じゃ~っ!」の作者土田よしこ先生がお亡くなりになりました。
どちらもわたしたち世代にはとてもなじみの深い漫画家さんでしたので、哀しくてなりません。 心からお悔やみ申し上げます。
最近の若い世代の方はご存じないかと思いますが、「コブラ」と言えばわたしたち世代には一世を風靡したSF漫画です。
アメリカンコミック風の絵柄でありながら日本人の繊細な感性があり、ハラハラドキドキの展開も胸が熱くなるものでした。
女性キャラのセクシーなデザインが特徴でしたが漫画の内容には驚くほどエロさがなく、ニヒルでクールな主人公コブラと相棒のレディーの軽妙な掛け合いが魅力でした。
エロい描写などはなくても、ちょっとした会話で「大人の世界」を垣間見せてくれる演出が多かったのです。
小さな子どもは子どもにはわからない「大人の世界」にあこがれるものです。
なんだかわからないけど、すごい。なんだかわからないけどそうなんだな、とわからないこともわからないなりに楽しんでしまうことができるのが子ども。「コブラ」はそこらへんのさじ加減が絶妙の漫画でした。
本日ご紹介するのは、愛されるロングセラー「ミルキー杉山」シリーズの第4巻「どんなときも名探偵」です。初版は1997年。
初版当時に比べるとインターネットをはじめとしたテクノロジーの発達で世の中が驚くほど変化しているのですが、読んでいてまったく違和感がありません。この時代を超えた魅力はさすがです。
今回は「犯人はサンタクロース」と「ふしぎなあしあと」の二本。
ミルキー杉山のシリーズはパズルのような短編小説で、挿絵や文章を楽しみながら犯人を推理する参加型推理小説です。エラリー・クイーンの「国名シリーズ」のように「事件編」と「解答編」に別れていて、解答編を読む前に、読み返したりして考えることが出来るのが魅力。
子どもの頃からこういう作品に親しんでいると、自然に推理小説が好きになってゆくものかもしれません。
今回もミルキーの奥さん、たつ子さんが登場、大活躍します。
たつ子さんは抜群に頭が切れるのにいばるようなところはひとつもない。ミルキーが素直に助けを求めるのも妙なコンプレックスがなくてさわやかだし、ミルキーの顔を立ててくれるたつ子さんの気遣いも素晴らしくて、素敵な夫婦関係なのです。
ミルキー杉山のシリーズは、キャラクターそれぞれの作りこみが深いのに、すべての事情を読者にあきらかにしない面白さがあります。
だいたい、日本人なのにミルキーなんて名前、変わってます。
なぜ「ミルキー」なのか、はたして本名なのかあだ名なのか、はたまたペンネームなのか、さっぱりわかりません。
また、「わけあってわかれて暮らしている」妻のたつ子さんも、こんなに仲良し夫婦なのに「どうして」別れて暮らしているのかがまったく謎のまま。
けれど、ミルキーとたつ子さんの関係は良好のようだし、子どもたちもたつ子さんが大好きなようです。いったい、どんな事情があるのでしょうか。
このあたりのことを「大人にはいろんな事情があるんだよ」と言う雰囲気でさらりと流し、あれこれ詳しく説明しようとしないところがいいのです。子どもはその謎に対して、ひとりでいろいろと想像します。
「なんだかわからないけど、すごそう」「なんだかわからないけど、大人ってそうなんだな」……
子どもの「わからないけど、そこが面白い」と言う感覚が刺激される絶妙のさじ加減です。
ほとんどがひらがなで書かれており、とても読みやすいので小学校低学年から。かしこい子なら幼稚園から大丈夫です。読み聞かせにもおすすめ。ミルキー杉山の一人称なので、どうぞお父さんが読んであげて下さいね。
今回のお話はサンタクロースが登場するので、クリスマスプレゼントにも。
お子さまが気に入ったら、ほかの巻もどうぞ。どれも想像力と推理力の両方を育ててくれるストーリーです。
とぼけててゆかいな名探偵、ミルキー杉山シリーズ。
ストーリーやキャラクターが魅力的で知育要素も高く、男の子でも女の子でも楽しめます。パズルやクイズが大好きなお子さまなら、親子でクイズごっこをするご家庭ならだんぜんおすすめです!
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はまったくありません。殺人や暴力のシーンはなく、終始明るく楽しい物語です。性別関係なく楽しめるので、男の子にも女の子にもおすすめです。
今回も、たつ子さんがかっこいいです。
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