【リブリアの魔女】伝説の魔導師に弟子入りしたい!新人魔女の大冒険【小学校高学年以上】

2024年1月20日

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リブリアの魔女 日野祐希/作 くらはしれい/絵  アリス館

大切な魔法演舞会を高熱で欠席してしまったメノア。師匠が見つからなければ魔導師になることはできない!困り果てたメノアは姉のリリーナの親友、伝説の魔導師シェリルを紹介してもらうのだが……(リブリアの魔女 日野祐希/作 くらはしれい/絵  アリス館)

この本のイメージ 本格ファンタジー☆☆☆☆☆ 魔女☆☆☆☆☆ 自己実現☆☆☆☆☆

リブリアの魔女 日野祐希/作 くらはしれい/絵  アリス館

<日野祐希>
静岡県出身。作品に「さよならの月が君を連れ去る前に」「余命一年の君が僕に残してくれたもの」(スターツ出版文庫)、「菜の花工房の書籍修復家」(宝島社文庫)、「秘密の神田堂 本の神様、お直しします。」(スターツ出版文庫)、「カラフル ノート 久我デザイン事務所の春嵐」(SKYHIGH文庫)、「ライブラリー・ツインズ ようこそ月島大学図書館へ」(アリス館)がある。

<くらはしれい>
岐阜県在住。雑誌、一般書籍の装丁画・挿絵やオリジナル雑貨のイラストなどを手掛ける。絵本に「レミーさんのひきだし」(作・斉藤 倫、作・うきまる/小学館)、「王さまのお菓子」(作・石井睦美/世界文化社)がある。

 ハロウィンシーズンにおすすめの本格魔女ファンタジーのご紹介です。初版は2023年2月。

 赤い表紙に長いおさげをなびかせてほうきに乗った少女。飾り罫が美しい装丁は、本編を読むとその意味がわかります。

 メノア・ヘーゲンはリブリア王国魔法学院を卒業したばかり。
 けれど、大切な魔法演舞会に高熱で参加できなかったため、魔導師の師匠を見つけられずにいました。

 魔法使いの頂点に立つ魔導師になるためには、魔法演舞会で魔法を披露し魔導師に弟子にしてもらわないといけなかったのです。

 戦わずして脱落してしまったメノアは、姉のリリーナに頼み込んで師匠を紹介してもらいます。

 彼女こそ伝説の魔導師シェリル・デュラン。今は魔導書を作って生活しているらしい。
 しかし、訪ねて行ったメノアが出会ったのは、実力こそ計り知れないが身の回りのことはいっさいできない残念美女。
 これはこの先が思いやられる……と不安になったメノアでしたが、シェリルの修行は厳しいながらも楽しくてメノアはのめりこんでしまいます。

 やがて、メノアはシェリルから「弟子になるための試験」を言い渡されます。
 はたして、メノアは合格できるのでしょうか?

 ……と、いうのがあらすじ。

 大きくなったら何になる?
 小学校高学年って、そんなことを考え出すお年頃。

 昔々大昔、女の子の「夢」の花形は「お嫁さん」でした。
 その頃は「お嫁さん」のことは「永久就職」と言って、職業のひとつみたいに思われていたのです。
 働く女性は結婚すると仕事を辞めてしまうので「腰掛け」と言われ、結婚しないで働いたり結婚しても働く女性のことは「職業婦人」と言って、変わり者扱いでした。

 いまでは婚活と言う言葉があたりまえになっていますが、これはかなり新しい言葉で、そんな言葉がなかった頃のほうがお見合いや縁談は就職活動なみにヘビーで、お金持ちの家のお嬢さんはそのためにお料理教室に通ったり、お茶やお花を必死で習ったりしたそうです。(うちは庶民なのでそんなことはしてませんけども)

 逆に令和の今、「大きくなったら何になりたい?」と聞かれて「お嫁さんになる」と女の子が言うのはかなり珍しいのかも。
 ずいぶんといい時代になりました。

 もちろん、こういった時代背景には夫婦どちらかの稼ぎだけでは家庭を維持できなくなったと言う事情もあり、いいことばかりではないのですが、小さな女の子が希望に胸を膨らませて「パティシエになりたい!」とか「お医者さんになりたい!」とか言える世の中になったのは純粋に喜ばしいことだなと思います。

 この物語の主人公メノアは、魔導師になりたい女の子。

 今となっては一般的なファンタジー用語として定着していますが、実はこの「マドウシ」と言う言葉は「グインサーガ」で知られるファンタジー作家栗本薫先生が作った造語です。(正確には栗本先生が作った言葉は「魔道師」(気づいたので自己修正しました。申し訳ありません))
 「魔法使い」でも「魔術師」でもなく、「魔導師」。
 「魔法使い」と言うと「魔法使いサリー」ちゃんみたいな小さな杖をキラキラさせた魔女っ子イメージがあるし、「魔術師」と言うと手品師みたい。
 西洋のファンタジーに登場する、荘厳な魔術使いを表現する適当な言葉がなかったのです。
 この言葉が生まれてから、日本人の中で「魔法」に対する憧れがぐんと膨らむようになりました。

 このお話「リブリアの魔女」での魔導師とは、魔法使いたちの頂点に立つ優秀な魔法使いのこと。
 魔導師になるには、魔法学院を卒業し、卒業後の魔法演舞会で師匠に見出されて弟子入りしなければなりません。

 しかし、メノアは肝心の演舞会を高熱で欠席してしまったのでした。

 あきらめきれないメノアは魔法学院の教員をしている姉に泣きつきます。
 そこで紹介してもらえたのがシェリル・デュラン。
 最年少で魔導師になったと言う、天才でした。

 メノアはシェリルのもとへ行き、下働きをしながら住み込みで生活を始めます。

 このシェリルと言う人が、女医や有能女性経営者にいがちな、身の回りのことがまったくできない残念美女。
 魔導師としては一流中の一流なのに、部屋の片付けや家事はいっさいできず、身だしなみは適当、髪は寝癖だらけ、部屋はぐちゃぐちゃと言った有様。

 それなのに、いざと言うときにきちんとした身なりをして魔法を使えば輝くばかりに美しく、驚異的な実力を発揮する魔導師なのです。

 ああ、いるいる、こういう人。
 めちゃくちゃ美人で有能で、非の打ち所がない仕事ぶりなのに自宅は崩壊してる。
 仕事場では一分の隙もない美貌とスタイルなのに家ではボサボサのひっつめ髪と曇りきったメガネにジャージ、食事はカップラーメン、みたいな。
  すべての集中力と努力を仕事に全振りしてるので、他のパラメーターがゼロ(またはマイナス)になっている。けれど、その部分をサポートしてくれる人がいると超人的な力を発揮する人。

 メノアはそこで有能秘書ぶりを発揮して、シェリルの生活を支えます。

 しかし、こんなプライベートが壊滅状態のシェリルですが指導者としては実に優秀で、メノアは修行を楽しみながら知識をぐんぐん吸収してゆくのでした。
 ここが読んでいて気持ちのいいところ。

 無駄な精神論は説かないけれど大切なことははずさないシェリルの指導。若いのに何が必要で何が必要でないかをわかっている彼女は、生まれながらの才能だけの魔導師ではないのです。

 メノアはどんなふうにシェリルの課題を乗り越えてゆくのか、はたしてあこがれの魔導師になれるのか。
 それは読んでみてのお楽しみ。

 小さな女の子の冒険物語の形でありながら、リリーナ、シェリル、マリー、ケイトなど、夢に向かってがんばる女性が何人も登場します。それぞれがそれぞれのやり方で自分の道を歩んでいて、何かを目指している女の子ならきっと共感できる人がみつかるはず。

 わたしはロックウェル商店のマリーさんが大好き。
 自分の仕事に愛情があって、大好きな金属や鉱物の話になると話が止まらない。仕事をしているだけで幸せと言う感じの女の子です。

 大きくなったら何になる?

 そんな気持ちが芽生えてきたら、「リブリアの魔女」を。
 自分だけの「何か」を見つけること、何かを目指すこと、その道を歩むこと、その喜びとすばらしさを描いいたファンタジーです。

 子どもが読めば、未来に夢がふくらむでしょうし大人が読めば初心に帰って大切なことを思い出させてくれます。

 「リブリアの魔女」は夢をあきらめないすべての女の子におすすめです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 驚くほどネガティブな要素はありません。けれども、主人公の精神的成長は真正面から描かれており、すがすがしい成長物語になっています。

 読後はお気に入りのハーブティーで魔女っぽく、ティータイムを。

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