【なんでも魔女商会】自分らしさとは? 自分の行く先を自分できめるファッションファンタジー第11巻。【魔女スピカからの手紙】【小学校低学年以上】

2024年4月13日

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なんでも魔女商会11 魔女スピカからの手紙 あんびるやすこ/作 岩崎書店

リフォーム支店にドラゴンのピンキーがやってきました。シルクのおば魔女スピカが南の島に旅行に行くためです。シルクのための一週間分の予言カードを持って……(なんでも魔女商会11 魔女スピカからの手紙 あんびるやすこ/作 岩崎書店)

この本のイメージ リフォーム☆☆☆☆☆ 自分らしさ☆☆☆☆☆ 占い☆☆☆☆☆

なんでも魔女商会11 魔女スピカからの手紙 あんびるやすこ/作 岩崎書店

<あんびるやすこ>
群馬県生まれ。東海大学文学部日本文学科卒業。テレビアニメーションの美術設定を担当。作品に「だっこちゃんどこ?」「まじょのまほうやさん」「こじまのもり」シリーズなど。 

 

 おさいほう魔女シルクと親友の人間の女の子ナナの活躍を描く「なんでも魔女商会」シリーズ。
 「なんでも魔女商会11 魔女スピカからの手紙」は、2009年初版です。

 基本的に一話完結で、どの巻を読んでもお話は通じるのですが、シルクとナナの出会いが描かれている第1巻をまず最初に読むほうがわかりやすいでしょう。

  第1巻のレビューはこちら

 今回のお話は……

 リフォーム支店にシルクのおば星占い魔女スピカの飼いドラゴン、ピンキーがやってきました。
 スピカが南の島に行くから一週間預かってほしいというのです。

 お礼なのか、シルクの一週間分の占いが書かれた予言カードが荷物のなかにありました。

 占いは魔女たちにとって大切なこと。ナナには信じられないくらい、シルクはスピカの予言カードに悩まされてしまいます。

 そんなとき、四つ子のねずみたちがドレスのリフォームを希望してやってきます。
 四匹はいままで何でも一緒、すべておそろいのドレスを着ていました。
 でも、それぞれが誰かがわかる、個性がはっきりしたドレスにリフォームしたいと言うのです。

 さて、シルクはどんなドレスにリフォームするのでしょうか?

 ……と、いうのがあらすじ。

 今回のテーマは「自分らしさ」。
 誰かに影響されるのではなく、自分の、自分だけの考えや自分だけの美しさを大切にするということ。

 そっくりな四つ子のねずみたち、アン、ドゥ、トロワ、キャトル。
 四匹はいままでなんでも一緒、同じものを選んできましたが、それぞれがそれぞれだとわかるドレスを着たいと思うようになりました。
 けれど、自分たちはそれぞれ、ほんとうはなにが好きでどうしたいのか、あまりにも四匹一緒に行動してきたがために、簡単にはわからなくなっていたのです。

 現実世界でもそんなことはままあります。
 「みんながこうしているから」「偉い人がこう言ったから」「テレビがこう言ってるから」そんなふうに、なんとなく流されてものを決めてしまうことは少なくありません。

 シルクたち魔女にとってはそれが占いでした。魔女たちにとっては占いはとても大切なものだったからです。

 けれど、それは「みんなの意見」や「偉い人の意見」「テレビの情報」などと同じ、「自分はどうしたいか」を決めるための情報のひとつ。ときには本当かも嘘かもわからないこともある。

 自分は何者なのか、本当は何が好きでどうしたいのか……
 それがいちばん大切なことでした。

 子どもであろうと大人であろうと、生きていれば重大な判断を下さなければならないときが訪れます。
 そんなとき、他人の意見は結局は参考程度にしか役に立ちません。
 自分の人生において、自分以上に真剣に悩んだり考えたりする人はいないからです。

 ろくに調べることも検討することもなく、「なんとなく」で決めてしまうとあとで後悔することになるかもしれません。強い口調で何かを言ってくる人が、その口調と同じくらいの強さで責任をとってくれることはまずないのです。

 でも、「みんなこうしているから」でなんとなく流されるように決めることに慣れてしまうと、この四つ子のねずみたちのように本当は自分は何がしたかったのか、何が好きなのか、わからなくなってしまうこともあるのでしょう。

 では、そんな子たちには自分の考えと言うものはないのか? と言うと、そんなことはなく、心の底のほうにちゃんと「自分自身」が潜んでいるのです。

 シルクは四つ子それぞれの「自分らしさ」をそれぞれが気づけるようにお手伝いをしました。それによって完成したのは、それぞれの個性を生かしつつ、「四つ子らしさ」もある素敵なドレス。

 四匹がそれぞれの個性を持ちつつも「四匹一緒」であることも魅力であると言う、彼女たちらしさを大切にしたドレスだったのでした。

 他人と同じでありたい気持ちも、他人とは違うところがあることも、どちらも否定しないあんびるワールド。似ていることも違うことも、どちらも素敵な個性なのです。

 文章は平易で読みやすく、すべての漢字に振り仮名が振ってあります。
 五十音が読めればひとりで読みきることができますし、毎見開きに愛らしい挿絵が入っていて、ところどころにはフルカラーの挿絵もあって華やかです。小学校低学年から。

 毎回のシルクのデザイン画がおしゃれで可愛い。また、今回のナナのハンドメイド講座は「コードペンダント」です。
 おしゃれやハンドメイドに興味があって、ファンタジーが好きなお子さまに。起承転結とテーマがはっきりしているお話ばかりなので読書感想文も書きやすいでしょう。

 秋といえば、芸術の秋、ハンドメイドの秋。
 何かを作りたくなる季節です。

 ファッションやハンドメイドがお好きなお子さま、可愛いもの美しいもの、魔法が大好きなお子さまに。
 「なんでも魔女商会」をぜひどうぞ!

 ※この本には電子書籍もあります。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はまったくありません。
 可愛くておしゃれなファッションファンタジーです。お洋服やお裁縫、ハンドメイドが好きなお子さまに。
 今回は、自分らしさを探す物語でもあります。

 読後は温かい紅茶とジンジャークッキーでティータイムを。

 

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