【なんでも魔女商会】チャレンジの気持ちを育てるリフォームの魔法。ファッションファンタジー第8巻。【火曜日はトラブル】【小学校低学年以上】
今、世間ではフェアリー女王御用達のグッズが大流行。そんなフェアリー女王は、古いしきたりを守って生活しています。ある日、エルフのメイド、スピネットがおさいほう魔女シルクのリフォーム支店にやってきました……
この本のイメージ リフォームは魔法☆☆☆☆☆ 新しいことへチャレンジ☆☆☆☆☆ 好きなことをする☆☆☆☆☆
なんでも魔女商会 8 火曜日はトラブル あんびるやすこ/作 岩崎書店
<あんびるやすこ>
群馬県生まれ。東海大学文学部日本文学科卒業。テレビアニメーションの美術設定を担当。作品に「だっこちゃんどこ?」「まじょのまほうやさん」「こじまのもり」シリーズなど。
小学校低学年の女の子に大人気、あんびるやすこ先生の「なんでも魔女商会」シリーズ第8巻です。初版は2007年。
「なんでも魔女商会」は、お洋服のリフォームをするおさいほう魔女シルクと、人間の親友ナナ、めしつかいねこコットンの活躍を描いたシリーズ。
基本的に一話完結で、どの巻を読んでもお話は通じるのですが、シルクとナナの出会いが描かれている第1巻をまず最初に読むほうがわかりやすいでしょう。
第1巻のレビューはこちら↓
今回のお話は……
今、世間では「フェアリー女王のお気に入り」グッズが大流行。火曜日の魔女新聞でフェアリー王室御用達グッズが紹介されているからです。
めしつかいねこのコットンは、「これが王室御用達」と言って「忠告クッキー」をお茶菓子に。
たいしておいしくはないし、ズケズケとした忠告をしてくるクッキーに、シルクとナナは渋い顔です。
そんなとき、リフォーム支店にお客さまが。
フェアリー城で働くエルフのメイド、スピネットでした。
スピネットは、王室つきアイロン係。でも、女王さまの「火曜日のドレス」に焼け焦げを作ってしまい、なんとかもとどおりに直してほしいとやってきたのでした。
リフォームが得意なシルクは「もとどおり」と言われて少し不満です。
けれど、これにはわけがありました。
フェアリー城では、何から何まで古いしきたりがあり、女王様のファッションも昔から「これ」と決まっていたのです。
もちろん、スピネットの仕事も先祖代々のアイロン係。女王様のドレスも、火曜日は紫色のこのドレスと決まっています。スピネットは、火曜日のドレスを全部だめにしてしまったのでした。
さて、シルクたちは、この問題を解決できるのでしょうか?
……と、いうのがあらすじ。
今回のテーマは「チャレンジ」。
フェアリー城では、なにもかもが古いしきたりできまっています。
お城で働くエルフたちの仕事も、先祖代々同じ仕事。アイロン係のスピネットは、音楽が大好きで妖精の楽器エルフィーナをふくのがとても上手でしたが、楽隊には入らずアイロン係をしています。
女王様も、食べるものや使うもの、着るものもすべて「しきたり」で代々の女王様とおなじものを使い続け、身につけていました。
今回は、そんなエルフたちにシルクが新しいことへの挑戦を促すお話。
シルクがリフォームした新しいドレスで美しく装った女王は、いままでしたことのない、新しいことをすることの喜びや楽しさを知るのでした。
リフォームは、古いものを新しくする技術です。ゼロから新しいものをつくるのも楽しいものですが、従来の古いものに手を加えて、まったく新しいものに変身させるのも「チャレンジ」です。
先祖代々のものを使い、先祖代々のしきたりどおりにしか生きてこなかった女王は、新しいドレスを身につけことで、次々と新しいことに挑戦できるようになりました。
古いものや、長く大切にされてきたものには、長く愛されるだけのよさがあり、受け継がれてゆく意味はあります。
ただ、やはり時代の流れのなかでどうしても現実にそぐわなくなってしまうものも。
たとえば昔は女性のおしゃれとされたコルセットや高いヒールの靴も、女性が激しく動き回ったり、重いものを運んだり走ったりしない時代ならよかったかもしれなくても、現代では色々と不便です。
女性のおしゃれは、わりと実用性とトレードオフなところがあり、昔ながらのデザインの服って、本当に不便なんですよね。
昔の女性のおしゃれな服はまずポケットがなかった。バッグもハンカチくらいしか入らない小さなバッグで、なにほども入らなかった。便利さを重視すると、どんどん当時の感覚では「おしゃれ」ではなくなってしまったのが悩みどころでした。
そんな女性の声が最近では伝わってきているのか、かわいい服やおしゃれな服でも飾りではない本物のポケットがつくようになりましたし、女性用のバッグもたっぷり入るおしゃれなものが増えました。また、安くていいものが増えたのもありがたい時代の変化です。
少しずつ、少しずつ、新しい感覚を取り入れて進歩しているんですね。
新しいことをするのは楽しいこと。
今、わたしは、「新しい本に出会うこと」をテーマに毎日ブログを書いています。シリーズ物も好きなので、今後もご紹介し続けますが、それと同じくらい、新しい絵本や児童書に出会うのも楽しい。
とはいえ、なんだかんだともう歳なので、いつなんどきブログを続けられなくなるかもしれない。それを考えると、「シリーズ物のご紹介だけはなんとしてでもやりとげなくては」とは思ってしまいます。
10巻前後で完結しているものは完結までは読んでしまいたい。でも、あんびる先生の作品は、もう全部読むのはあきらめたほうがいいかも……あまりにも多すぎる……!
しかも、今回はじめて「引き」がついて終わっています。つまり、ラスト近くに大事件が起きて「次回へ続く!」みたいな形のラストなのです。うへえ、どうなるのでしょうか。これは読まなくては!
ずっと同じシリーズを続けているあんびる先生も、このあたりで「新しいこと」に挑戦したくなったのかもしれません。
あんびる作品の魅力は、かわいらしいキャラクターとファンタジックな設定、毎回の小さな子ども向けのはっきりとしたテーマ、そして悪者のいないやさしい世界です。
どれを読んでも、うんうんとうなずき、癒され、励まされ、心を和まされます。
この「なんでも魔女商会」は、あんびる先生の魅力の一つ、お洒落なコスチュームも全面に押し出されています。しかも、人間の女の子ナナが毎回、シルクのドレスにあわせて小さな小物を作るので、ハンドメイドの楽しさも伝えてくれるのです。
今回はリボンを使った、簡単なすみれの花のつくり方。ナナのつくった小さなすみれはフェアリー女王のドレスを彩りましたが、これはヘアピンや小さなポーチ、トートバッグにつけてもかわいいですね。
読んで楽しく、作って楽しい、一粒で二度おいしい(古いよ)、あんびる先生の「なんでも魔女商会」。おうち時間の多い、寒い冬にぜひどうぞ!
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はありません。
古いものもいいけれど、しきたりを脱して新しいものにチャレンジしようというお話です。
お洋服やお裁縫が好きなら、男の子でも女の子でもおすすめです。
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