【ローワンと黄金の谷の謎】内気なローワンが村を襲う脅威と戦う。ローワンシリーズ第2巻【リンの谷のローワンシリーズ】【入手困難】【重版希望】【小学校中学年以上】

2024年3月5日

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ローワンと黄金の谷の謎  【リンの谷のローワンシリーズ 2 】  エミリー・ロッダ/作 さくまゆみこ/訳 佐竹美保/絵 あすなろ書房

魔の山の冒険から戻ったローワンたちは、持ち帰ったヤマイチゴを大切に育て、リンの谷の新しい特産物にしようとしていました。そんなとき、魔女のシバが不吉な夢を見ます。谷に脅威が迫っているらしいのです。そして、「旅の人」たちが谷に訪れ……

この本のイメージ 謎☆☆☆☆☆ 冒険☆☆☆☆☆ 新たな仲間☆☆☆☆☆

ローワンと黄金の谷の謎  【リンの谷のローワンシリーズ 2 】  エミリー・ロッダ/作 さくまゆみこ/訳 佐竹美保/絵 あすなろ書房

<エミリー・ロッダ>
Emily Rodda、1948年4月2日 ? 。オーストラリア・シドニー生まれのファンタジー作家。代表作は「ふしぎの国のレイチェル」「リンの谷のローワンシリーズ」など。

 ずっと読みたかったローワンシリーズの第2巻です。調べましたが、現在、市場には中古しかないようです。まぎれもなく名作なので、電子化か重版希望です。


 わたしは、本好きなのですが、事情があって長らく本が読めなかったため、ベストセラーと呼ばれている小説でも未読のものがたくさんあります。このブログはわたしの読書記録も兼ねているので、すでに有名な本や、ロングセラーの名作、現在では絶版になっている本なども、取り上げています。まだまだ読みたい本がいっぱいあるんですよ……(涙)

 「魔の山」の冒険から戻り、リンの谷に水を取り戻したローワンたち。季節は春になり、山からアランが持ち帰ったヤマイチゴが、村中で育てられて甘い実を実らせていました。村の人たちは、これを谷の特産物にしようとしていたのです。

 一見平和に見えるリンの谷でしたが、静かに脅威が忍び寄ってきていました。魔女のシバは不吉な夢を見て、谷に危険が近づいてきていると感じます。

 そんなとき、谷に「旅の人」たちが訪れます。「旅の人」たちが二年続けて来ることはめずらしいため、何かあるのではといぶかる谷の人たち。

 そして、突然、その時はやってきます。村人たちがばたばたと倒れ、深い眠りについてしまうのです。
 「旅の人」たちの呪いでは、と旅の人たちを問い詰めるローワンとアラン。しかし、どうも違うようです。

 「旅の人」たちの長、オグデンは、その謎を解く鍵が「黄金の谷」にあると直感し、旅の人の女の子ジールとローワンを探求の旅に出します。そして、ローワンたちがそこで見たものは……

 と、言うのがあらすじ。

 今回のお話で、リンの谷の周囲にも様々な国や種族があることや、植物、動物などの生態系についても明かされます。リンの谷の人々は、かつてゼバックという獰猛な民族に奴隷として使われていた民族の中の、強くて屈強な人々の生き残りでした。
 平和に見えるリンの谷でしたが、いつかはゼバックと再び戦わなければならなくなるかもしれないという不安があったのです。

 お話を読みすすめてゆくと、この物語は多様性の物語だとわかってきます。

 屈強なリンの谷の人々のなかで、ただひとり内気で気弱なローワン、谷の人たちと旅の人たちのあいだに生まれたアラン、ゼバックの子でありながら旅の人たちに育てられたジール……

 周囲の人たちとは「どこかちがう」とされていた子たちが、谷の人たちや仲間たちを助けるために活躍します。

 また、今回のお話では谷でただ1人、ローワンだけが春先のくしゃみと鼻水に悩まされます。これは現代のわたしたちが読むとすぐに花粉症だとわかる症状なのですが、もちろんリンの谷の人々はそんなことはわかりません。
 魔女のシバが、ローワンのためだけにムヨウギクという雑草で作ったせんじ薬を毎日飲むことで、なんとかこらえていました。

 このローワンの花粉症が、なんと結果的に谷を救うことになります。

 「ローワンと魔法の地図」でも、一見弱そうに見えるローワンが一番強く、いかにも強そうだった谷の人々は魔の山をのりこえられなかったように、今回のお話でも同様の逆転現象が何度も起こります。

 弱さは強さであり、無力は強力であり、無用なものだと思われていたものが一番役立つものだった……

 つまり、この世には無用なものなどはなくて、すべてが関りあって存在している。だから、役に立たなくて、邪魔で無用だと思われていたものが、必要不可欠になる局面があるかもしれないのだから、目先の都合で切り捨ててはいけない。

 そして、目先の都合で無用なものを切り捨ててきた文明は滅んでしまうのです。

 「リンの谷のローワン」は繰り返し繰り返し、表面的でありきたりな価値観に疑問を投げかけ、ひっくりかえしてきます。これが、この物語の魅力です。

 お話自体は、一話完結なので、どこから読んでもわかると思いますが、「ローワンと魔法の地図」から順番に読んだほうがわかりやすいでしょう。
 字は程よく大きく読みやすく、難しい漢字には振り仮名がふってありますし、細かい章に分かれていますので、小学校中学年から。でも、大人でも充分楽しめる上質なファンタジーです。

※現在入手困難なようです。中古か、図書館でさがしてみてください。

 エミリー・ロッダは多作な方で、何作もシリーズを書いていますが、このローワンシリーズは格別の面白さです。構成が巧みで伏線のちりばめ方や回収が見事で、思わず「おおっ」と声を上げてしまいます。

 有名なシリーズなので、ご存知な方も多いと思いますが、異世界ファンタジー好きの方でまだのかたはぜひ。
 わたしもまだ2巻目を読んだところですが、続きを読むのが楽しみです。

※この本は現在、Amazonでは新品は入手困難です。中古(古書)でお求めになるか、図書館、または書店に置いてある場合があるので、お近くの書店の書店員さんにお尋ねください。

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