【ローワンと伝説の水晶】マリスの民の運命をにぎるローワン。彼の選択は? ローワンシリーズ第3巻【リンの谷のローワンシリーズ】【入手困難】【重版希望】【小学校中学年以上】

2024年3月9日

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ローワンと伝説の水晶  【リンの谷のローワンシリーズ 3 】  エミリー・ロッダ/作 さくまゆみこ/訳 佐竹美保/絵 あすなろ書房

海辺の民マリスからの突然の使者。それは、母ジラーが背負うさだめを知らせる使者でした。母とともにマリスの村へ向かうローランでしたが、ジラーには恐ろしい運命が襲い掛かります……

この本のイメージ 使命☆☆☆☆☆ 冒険☆☆☆☆☆ 選択☆☆☆☆☆

ローワンと伝説の水晶  【リンの谷のローワンシリーズ 3 】  エミリー・ロッダ/作 さくまゆみこ/訳 佐竹美保/絵 あすなろ書房

<エミリー・ロッダ>
Emily Rodda、1948年4月2日~ 。オーストラリア・シドニー生まれのファンタジー作家。代表作は「ふしぎの国のレイチェル」「リンの谷のローワンシリーズ」など。

 

リンの谷のローワンシリーズ第3巻です。原題はRowan and the Keeper of the Crystal .初版は1996年。日本語版は2002年です。
 ローワンシリーズは、現在、一部に入手困難のものがあり、それについては中古か図書館でしか読めない状態ですが、まぎれもなく名作なので、全巻お読みになることをおすすめします。

 エミリー・ロッダの小説は他にも読んだ事はありますが、他作品と比べて「リンの谷のローワンシリーズ」の面白さは段違いです。
 よく、名作を書くときには作家に「言霊が降りる」と言います。ローワンを書いていたときだけ、作者に何か降りていたんじゃなかろうか。それくらい、引力のあるお話です。これがいま、入手困難なんて、もったいない。

 わたしは、面白い本については、正直に「面白かったです」と書く主義ですが、ものすごく面白い場合はつい、押し付けがましく「読むべき」と書いてしまいます。

 「ローワン」は、読むべき。

 さて、今回のお話は……

 海辺の民、マリスから使者がやってきました。
 マリスを守護する不思議な水晶にかげりがみられ、新しい水晶の司を選ぶ時が来たのです。マリスの水晶の司は、マリスの三つの種族、銀のアンブレー、緑のフィスク、青のパンデリスを統べる長なのです。

 そして、その水晶の司を選ぶ「選任役」はなんとローワンの母ジラー。

 マリスの民は、種族内での争いを避けるために、他種族のリンの民に代々選任役を任せていたのです。その子孫がジラーなのでした。ジラーの補欠としてローワン、そして付き添いでストロング・ジョンが同行し、三人はマリスに向かいます。

 候補はアンブレーのアーシャ、フィスクのシーボーン、パンデリスのドス。

 ところが、選任の儀の直前、ジラーは謎の毒で倒れ、瀕死の床についてしまいます。

 急遽、選任役に選ばれてしまったローワン。そして、ジラーを救うには、少ししか時間がありません。

 はたして、ジラーを救い、正しい「水晶の司」を選ぶことができるのでしょうか。

 ……と、いうのがあらすじ。

 いにしえのマリスの賢者は、種族内の争いを避けるために水晶の司の選任役を他種族にまかせたのです。しかし、すでに長い歴史の中で制度は腐敗し、マリスの民は、リンの谷の選任役の一族をあの手この手で調べ上げると言う方策に出ていたのでした。

 つまり、それぞれの候補者が様々な方法で自分を選ばせるよう、誘導しているかも知れず、また、彼らが言う事も、どこまで本当かわからないのです。

 何が嘘で何が真実かもわからない、混沌とした状態のなかで、ローワンは、自分の心だけをたよりにすすむことになります。

 彼が選んだ道は、ジラーを助け、マリスの民も助ける、かかわる誰もを救う道。ジラーを襲った正体不明の毒の解毒剤を手に入れ、そして、正しい「水晶の司」を選ぶ道です。
 しかし、ジラーは瀕死、水晶の司も力つきかけており、のこされた時間は夜明けまで。

 不可能に近いといわれながらも、ローワンは自分にはそれができる、と信じて冒険に身を投じます。

 最終的にローワンはこれらの試練を乗り越えるのですが、ラストまでにどんでんがえしもあり、最後まで手に汗握る展開が続きます。

 ローワンのシリーズは、一巻から徹底して派手なアクションや戦闘シーンはなく、一般的な感覚での「戦う」シーンはありません。
 それに相当する山場は、ローワンが旅の中で幾度と無く厳しい選択をせまられ、それを乗り越えてゆくところです。

 ローワンは必死に考え、すべての人にとって最善の方法を選び、それを成し遂げます。
 他の人たちは、いつも何かを選び取り、何かを切り捨てる方法を選ぶのですが、ローワンだけがそれをしません。
 絶対に、すべてを救おうとします。
 それは、逆の立場であれば、ローワンは必ず切り捨てられてしまう側の子どもだったからかもしれません。

 屈強な民族たちの暮らすリンの谷で一番弱く、みそっかすだったはずのローワンは、幾多の冒険を乗り越えて、着実に成長しています。彼の長所は逃げないことで、まさに、ただそれだけでした。

 困難はいつも大きく、ローワンを常に押しつぶそうとします。そして、つぶれそうになることもしばしば。
 けれども、ローワンは、小さい一歩を積み重ねて、着実に乗り越えてゆきます。

 励まされる物語です。

 文章は平易で読みやすく、字は程よく大きく読みやすく、難しい漢字には振り仮名が振ってあります。
 小学校中学年から読めますが、大人でも楽しめます。
 構成も巧みで、決して予定調和的な童話ではなく、本格ファンタジーです。ラストのどんでん返しなども見事です。

 主人公の成長物語としても正統派で、内向的で気弱なローワンが、一歩一歩前進して強くなってゆく様子は、現代の子どもたちの心に寄り添う内容だと思います。

 リンの谷のローワンシリーズは、現在、2巻と3巻が入手困難となっており、中古か図書館でしか読めません。しかしながら、本当に名作なので、ぜひ、1巻から順に読んでみてください。

 異世界ファンタジーが好きなら、必ずはまります。

 そして、出版者様、ぜひとも重版、よろしくお願いします。(と、テレパシー)

※この本は現在、Amazonでは新品は入手困難です。中古(古書)でお求めになるか、図書館、または書店に置いてある場合があるので、お近くの書店の書店員さんにお尋ねください。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素は少ないお話です。むしろ、HSPやHSCにおすすめのファンタジーです。内気で気弱なローワンが、少しずつ着実に成長してゆくお話なので、内向的で、現在苦しい状況にいるお子さまや、がんばっている大人におすすめです。
 励まされます。

 週末の午後や、お風呂上りのリラックスタイムに、たっぷり時間をとってお楽しみください。

 

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