【馬と少年】自分のルーツを探す旅。ファンタジーの不朽の名作、第5巻。【ナルニア国ものがたり】【小学校中学年以上】

2024年4月10日

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馬と少年  ナルニア国ものがたり 5   C・S・ルイス/作 瀬田貞二/訳 岩波少年文庫

貧しい漁師の息子シャスタはある日、奴隷として売られることを知り、ものいう馬ブレーとともにナルニアを目指して逃亡の旅に出ます。途中でナルニアを陥れようとするカロールメン国の陰謀を知り……

この本のイメージ ファンタジー☆☆☆☆☆ 哲学☆☆☆☆☆ 貴種流離譚☆☆☆☆☆

馬と少年  ナルニア国ものがたり 5   C・S・ルイス/作 瀬田貞二/訳 岩波少年文庫

<C・S・ルイス>
本名クライブ・ステープルス・ルイス(Clive Staples Lewis 1898年11月29日 ~ 1963年11月22日)。アイルランド系のイギリスの学者、小説家、中世文化研究者、キリスト教擁護者、信徒伝道者。全7巻からなるハイファンタジー小説『ナルニア国物語』の著者として有名。

<瀬田貞二>
瀬田 貞二(せた ていじ、1916年4月26日~1979年8月21日)は、日本の児童文学作家・翻訳家・児童文学研究者。
J・R・R・トールキン「指輪物語」の翻訳が有名である。その他、日本の民話の再話もあり、「かさじぞう」「ふるやのもり」などはロングセラーである。
1957年、「なんきょくへいったしろ」(こどものとも1956年8月号 福音館書店)で産経児童出版文化賞を受賞、ついで1963年「あふりかのたいこ」で、1966年「ホビットの冒険」の訳で、1967年「ナルニア国ものがたり」の訳で同賞受賞。1975年、「指輪物語」の翻訳等で日本翻訳文化賞、1977年、児童福祉文化賞奨励賞受賞、1979年、「きょうはなんのひ?」で絵本にっぽん賞、1982年、「落穂ひろい」で日本児童文学学会賞、日本児童文学者協会賞特別賞、毎日出版文化賞特別賞受賞。

 原題はThe Horse and His Boy. イギリスでの初版は1954年。日本語版初版は1966年、岩波少年文庫版は2000年です。

 世界三大ファンタジーのひとつ、ナルニア国ものがたり第5巻。(世界三大ファンタジーとは、40年くらい前によく言われていた言葉で、善と悪、光と闇などをテーマとした、細密な世界設定のクロニクルものとして、「ナルニア」「ゲド戦記」「指輪物語」をあげる方が多かったのです)

 どの巻も一話完結ですが、おおまかな流れはあるのでアスランとペベンシーきょうだいが出会う第1巻「ライオンと魔女」から順番に読んだほうがわかりやすいでしょう。
 「ライオンと魔女」のレビューはこちら

 今回のお話は……

 年代としては「ライオンと魔女」の時代。
 まだ、ペベンシーきょうだいがナルニアの四人の王としてナルニアを統治していた平和な時代の物語です。

 とある貧しい漁師の息子シャスタは、あるとき自分が奴隷として売られそうになっているのを知ります。
 もともと育ての親のひどい仕打ちに愛情をもてなかったシャスタは、自分を買おうとしていたカロールメンの貴族の馬ブレーが口をきけると知り、一人と一頭でともに自由の国ナルニアを目指して逃亡することに。

 道中でカロールメンのカラバール地方の領主キドラシ・タルカーンの娘、アラビスと出会い道連れとなります。アラビスは政略結婚で嫁に出されるのを嫌い、口のきける馬フィンとともに逃げ出してきたのでした。

 仲間となったシャスタ、アラビス、ブレー、フィンでしたが、ひょんなことでカロールメンのラバダシ王子のナルニアへの陰謀を知ってしまいます。

 はたして、ナルニアを救うことはできるのか?

 ……と、いうのがあらすじ。

 今回のお話は第1巻「ライオンと魔女」の途中のお話。
 ジョン、スーザン、エドマンド、ルーシーの4人が不思議の国ナルニアに迷い込んだあと四人の王となり、平和な国を築き幸せに統治していた頃の物語です。

 ジョンは非の打ち所のない王として活躍しており、スーザンは美しく成長していました。エドマンドは賢く、ルーシーは頼もしく成長しています。
 しかし、カロールメンのラバダシ王子がスーザンの美貌に心を奪われ、なんとしてでも手に入れたいと望んだため大きなトラブルに発展してしまうのでした。

 この危機をナルニアは乗り越えられるのか、そして、貧しい漁師の息子シャスタの正体は……?

 謎を追いながら主人公シャスタたちの冒険を読み進めるうちに、この時代のナルニアをめぐる様々な情勢やナルニア以外の国の様子などもわかってきます。

 もちろん、頼もしいライオン、アスランも登場。要所要所でシャスタたちを助けてくれます。

 この「ナルニア国ものがたり」はもともと敬虔なキリスト教信徒だったC・S・ルイスが、キリスト教の教えを子どもたちにわかりやすく伝えるために書いた物語でもあるので、そこここに哲学的な要素がちりばめられています。

 しかし、そのようなことに気がつかなくてもファンタジーとして面白く、大人でも楽しめる名作です。

 「馬と少年」では危険にさいして勇気を出すこと、困難にさいしてあきらめないこと、困っている人を躊躇なく助けることなど、心の強さ、やさしさが人として大切であること、そしてそれは人の生まれ育ちとはまったく関係ないことなどが描かれています。

 シャスタたちの立場や服装、置かれている環境などはめまぐるしく変化しますが、シャスタもアラビスも自分自身のありのままを貫きます。

 そんな描写は児童文学らしくストレートで、子どもが読めば大きな学びになるでしょうし、大人が読むと忘れそうになっていた人生の基本に引き戻してくれるのです。

 大人になると妙に知恵がついてしまうと同時に、何事もついつい逃げ腰になり困難に際して真正面から立ち向かうことも少なくなってしまいます。でも、こうした作品を読むと気が引き締まりますね。

 子どもが読むとまっすぐな想いに勇気付けられ、大人が読むと大切なことを思い出させてくれる、児童文学の不朽の名作です。
 夏休みの親子の読書にぜひどうぞ!

 ※この本には電子書籍もあります。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。
 今回はナルニアだけでなく様々な国が登場し、異国情緒を楽しめます。

 いつものように哲学的な要素がありますが、むずかしさはありません。HSPやHSCのほうが多くのメッセージを受け取れるでしょう。
 
 読後は英国紅茶でティータイムを。

 

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