【ゆうえんちのわたあめちゃん】さらわれた遊園地の小さなマスコット人形は、おうちへ帰れるの?【四つの人形のお話2】【小学校低学年以上】

2024年3月18日

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ゆうえんちのわたあめちゃん 四つの人形のお話2 ルーマー・ゴッデン/作 プルーデンス・ソワード/挿絵 久慈美貴/訳 たかおゆうこ/装画 徳間書店

わたあめちゃんは、遊園地の屋台、「ココナッツあて」の幸せのおまもり人形です。お店の持ち主ジャックと、お祭りからお祭りへと旅をしながら、幸せに暮らしていました。ところがある日、わがままな女の子クレメンティナにさらわれてしまったのです……

この本のイメージ 「愛情」とは何か☆☆☆☆☆ お人形つよい☆☆☆☆☆ 「大切」とは何か☆☆☆☆☆

ゆうえんちのわたあめちゃん 四つの人形のお話2 ルーマー・ゴッデン/作 プルーデンス・ソワード/挿絵 久慈美貴/訳 たかおゆうこ/装画 徳間書店

 <ルーマー・ゴッデン>
マーガレット・ルーマー・ゴッデン(Margaret Rumer Godden, OBE, 1907年12月10日 ~ 1998年11月8日 )イギリスの作家。
1907年イギリスサセックス州生まれ。生後まもなく家族と共にインドに移り住み、12歳の時にイギリスに戻る。「人形の家」「ねずみ女房」「ハロウィーンの魔法」など。

 <久慈美貴>
岩手県生まれ。大学非常勤講師。訳書に「アリーの物語」「野獣の薔薇園」「ヴァイキングの誓い」など。

 <プルーデンス・ソワード>
1926年英国生まれ。彫版工として教育を受けたあと、フリーランスのイラストレーターとして絵を描き始める

 <たかおゆうこ>
多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。大手玩具メーカーの企画デザイン室勤務を経て渡米。カリグラフィー、水彩画、銅版画などを学ぶ。絵本、さし絵など多数

 「ねずみ女房」のルーマー・ゴッデンの、小さな子供のための物語です。お人形をテーマにしたファンタジーシリーズの第2巻。原題はCandy Floss. 原書初版は1960年。日本語版初版は2018年です。

 ストーリーは……

 「わたあめちゃん」は、遊園地の出店「ココナッツあて」(射的)のマスコット人形です。オルゴールの上に飾られた木馬のナッツにまたがってくるくる回るのが「お仕事」。
店の持ち主、ジャックは、わたあめちゃんを「しあわせのおまもり」と言って、とてもかわいがっていました。

 わたあめちゃんは、木馬のナッツと飼い犬のココ、そしてジャックと一緒に、ライトバンでお祭りからお祭りへと旅をします。彼女はとっても幸せでした。

 ところがある日、ジャックの店にクレメンティナという女の子がやってきます。彼女は大金持ちのお嬢さんで、親から何でも買ってもらえるわがままな女の子でした。クレメンティナは、わたあめちゃんをほしがりますが、ジャックは「しあわせのおまもり」だからと断ります。

 すると、クレメンティナは、わたあめちゃんを勝手に盗んで家に持ち帰ってしまったのです。

 わたあめちゃんは、無事にジャックのもとへ帰れるでしょうか?

 ……と、言うのがあらすじ。

 人形やぬいぐるみを主人公にした物語の特徴は、人形が自力で動けないことです。自力で動くことができない彼らは、自分の意思と反して、望まぬ環境に連れ去られることが多く、そして、自力ではなかなか解決できません。

 しかし、そんな彼らにも、強い「想い」があり「意思」がある……

 ルーマー・ゴッデンの書くお人形たちは、みんなとても頑固です。自力で動けず、人間が乱暴に扱ったら壊れてしまうお人形だからこそ、なのかもしれませんが、心は何よりも強靭なのです。

 クレメンティナの家に誘拐されたわたあめちゃんですが、彼女は絶対に諦めたりしません。自分の足で歩いてゆけないのに、なんとかしてジャックのもとへ帰ろうとします。「ポケットのなかのジェーン」は50年間、夢を捨てずに待ち続けたお人形でしたが、ゴッデンの描く人形たちの思いの強さには、心を揺さぶられます。

 ほぼ一生ねずみ穴から出ないであろうねずみが月を見た「ねずみ女房」もそうですが、ゴッデンの描く「ねずみ」や「お人形」は、自力ではなかなか自由に活動できなかった1960年代の女性の比喩だと感じます。

 一方、一見、甘やかされてわがままに育ったように見えるクレメンティナも、親が過剰なまでに彼女に与えすぎるがために、自力で何かをほしい、何かをしたい、と言う健全な欲求が握りつぶされてしまっています。

 クレメンティナは自分がいままで大人たちから与えられてきたものを「愛情」だと信じ、同じように「わたあめちゃん」にも「おうち」や「ベッド」、「ドレス」を強引に与えようとしますが、わたあめちゃんは受け取ろうとしません。

 クレメンティナとわたあめちゃんがどう分かり合うのか、わたあめちゃんはジャックのもとに帰れるのか、このあたりは読んでみてのお楽しみですが、たくさんの深いテーマが流れており、考えさせられます。

 「わがままではいけない」「人のものを盗んではいけない」と言う、シンプルな教訓だけでなく、物語の底に、自分の意思で何かをするよろこび、たとえ身動きできなくても強い意思を貫く大切さ、絶体絶命でもあきらめない心など、たくさんのテーマが多重構造で流れています。

 字は大きくて読みやすく、ひらがなは多め、すべての漢字に振り仮名が振ってあります。小学校低学年の、長いお話の読みはじめにぴったり。一人で読んでも、読み聞かせでも、それぞれのよさがあります。

 感受性の強い女の子にはぴったりの本です。これを読んで何かを感じることがあったら、「ねずみ女房」も手に取ってみてください。あれは、お子さまというより、お母さまにおすすめしたい絵本です。

 令和の世になっても、女の子にはまだまだ不自由なことがたくさんあります。「四つの人形のお話」は、考え込みがちな、内省的な女の子に、おすすめです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 単純なおとぎ話に見えて、とても深いテーマがいくつもながれているので、HSPやHSCの方におすすめです。親子での読み聞かせにも。お人形やぬいぐるみなどの心を考え、身の回りのものをより大切にするようになるかもしれません。

 読後は、わたあめや、りんごあめなど、お祭りの駄菓子で一休み。

 

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