【なんでも魔女商会】勝負より大切なものを知る、おさいほうの魔法。ファッションファンタジー第9巻【ルビーの魔法マスター】
フェアリー女王のドレスをリフォームしたことをきっかけに、シルクは最強のおさいほう魔女を決めるコンテストに出場することに。審査員は魔法洋裁学校時代の校長先生と教頭先生です。優勝者には「ルビーの魔法マスター」の称号が与えられ……
なんでも魔女商会 9 ルビーの魔法マスター あんびるやすこ/作 岩崎書店
<あんびるやすこ>
群馬県生まれ。東海大学文学部日本文学科卒業。テレビアニメーションの美術設定を担当。作品に「だっこちゃんどこ?」「まじょのまほうやさん」「こじまのもり」シリーズなど。
あんびるやすこ先生のファッションファンタジーシリーズ「なんでも魔女商会」第9巻は2007年初版です。
「なんでも魔女商会」は、お洋服のリフォームをするおさいほう魔女シルクと、人間の親友ナナ、めしつかいねこコットンの活躍を描いたシリーズ。
基本的に一話完結で、どの巻を読んでもお話は通じるのですが、シルクとナナの出会いが描かれている第1巻をまず最初に読むほうがわかりやすいでしょう。
第1巻のレビューはこちら↓
また、今回のお話は第8巻「火曜日はトラブル」から直接続いていることもあり、「火曜日はトラブル」から続けて読むとよりわかりやすくなっています。
「火曜日はトラブル」のレビューはこちら↓
お話は……
フェアリー女王のドレスをリフォームしたことで、「ナンバー1おさいほう魔女」と呼ばれるようになったシルク。
ところがそれが気に入らないお仕立て魔女たちから挑戦をうけることになりました。
六人のお仕立て魔女たちとコンテストをすることになったのです。
最初は勝負をふっかけられて迷惑なだけだったシルクでしたが、魔法洋裁学校の校長モスリン先生と教頭サージ先生が審査員となり優勝者が「ルビーの魔法マスター」のバッジがもらえると知って、気持ちが変わります。
あこがれの「ルビーの魔法マスター」になってバッジをもらいたいと思うようになったシルク。やる気が出たのはいいのですが、逆に気持ちが固くなってしまいなかなかいまくいきません。
シルクに与えられた「羽衣おり」の布地で美しいドレスをつくるという課題にぴったりのデザインが思いつかずに苦しんでいました。
そんなある日、風の精霊がやぶれたドレスをなおしてほしいと訪ねてきます。いつもなら絶対に引き受けるはずのシルクですが、今の彼女にはそんな心の余裕も無く、引き受けないばかりかナナと喧嘩までしてしまいます。
さて、シルクはいったいどうなってしまうのでしょうか……
……というのが今回のあらすじ。
いつもクールで冷静なシルクが珍しく熱くなってしまい、彼女らしからぬことをしてしまうお話です。
あんびる先生の別作品「魔法の庭ものがたり」でも、主人公ジャレットがハーブ魔女としていい仕事をしたいと気負うあまりに失敗してしまうエピソードがあります。人間、気負うといい結果にならないようです。
目標に向かってがんばるのはいいことだけど、それにこだわりすぎると大切なことを見失ってしまう。
なんのためにおさいほう魔女になったのかとか、誰のためにおさいほうの魔法があるのかとか。
勝負にとらわれて、大切なことが見えなくなっていたシルクでしたが、最終的には自分を取り戻し、そして、苦手だった人と仲良くなりライバルたちとも仲良くなります。
何かを作り出す、生み出す、装うというのは本来「勝ち負け」とは別の世界にあるもの。
勝負にこだわるあまりに大切なことを忘れかけていた魔女たちが、さいごは笑顔で手を取り合うハッピーエンドです。
あんびる先生のストーリーの魅力は、夢のある設定、悪人のいないやさしい世界、おしゃれなコスチューム。今回はライバルの六人の魔女たちと彼女たちのデザインしたドレスも登場し、いつにも増して華やか。
また、その時その時のテーマに添って、人間の子どもナナでも作れるちょっとしたハンドメイドのアクセサリーの作り方も掲載されているのが楽しい。
今回は、ボタンとリボンで作る、ロゼッタ型のブローチです。
文章は平易で読みやすくすべての漢字にふりがながふってあります。小学校低学年から。
おしゃれやハンドメイドに興味があって、ファンタジーが好きなお子さまならストライク。友情あり勝負あり、人情ありのファッションファンタジーです。
装うこと、作ること、物語を楽しむこと、そのどれかが好きなら「なんでも魔女商会」をぜひどうぞ!
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はありません。勝負も大切だけど、もっと大切なものがあるよね、と言うお話です。
お洋服やお裁縫が好きなお子さまにおすすめです。
読後は温かい紅茶とパンケーキでティータイムを。
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