【カッレくんの冒険】児童文学の古典名作! 名探偵になりたい少年カッレくんの冒険小説シリーズ2作目【小学校中学年以上】

2024年3月17日

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カッレくんの冒険 アストリッド・リンドグレーン/作 尾崎義/訳 岩波少年文庫


カッレくんたちは、赤バラ軍と白バラ軍に分かれて、バラ戦争をしていました。その途中、近所のグレーンじいさんの家によじのぼるさい、じいさんが若い男ともめているところを目にします。数日後、グレーンじいさんは死んでしまうのですが……

この本のイメージ 殺人事件☆☆☆☆☆ 少年探偵小説☆☆☆☆☆ ヒロイン危機一髪☆☆☆☆☆ 

カッレくんの冒険 アストリッド・リンドグレーン/作 尾崎義/訳 挿絵/エーヴァ・ラウレル 岩波少年文庫

<アストリッド・リンドグレーン> スウェーデン生まれ。小学校の先生や事務員をしながら数多くの作品を発表し続けた。国際アンデルセン賞受賞。作品に「長くつ下のピッピ」など。

 「名探偵カッレくん」の続編です。原題は Masterdetektiven Blomkvist lever farligt.(名探偵ブルムクヴィストの危険な生活) 初版は1951年。日本語版初版は1958年です。

 カッレくんシリーズは、子どもの頃読んだことがなくて、初読なんですが、読んでみたらかなり本格的な探偵冒険小説で驚きました。リンドグレーンの作風が幅広すぎる……。

 ストーリーは、


 難事件を解決して、「少年探偵」と呼ばれるようになったカッレくんですが、今は、子どもたちどうしの「バラ戦争」に夢中でした。カッレくんと親友のアンデス、エーヴァ・ロッタは白バラ軍として、シックステンたちの赤バラ軍と戦いながら村中を駆け巡っています。

 ところが、その途中、近所のグレーンじいさんの家の屋根によじ登っていたとき、グレーンじいさんが若い男の人とお金のことで口論になっていたのを見てしまいます。

 グレーンじいさんはこっそり非合法な高利貸しをしており、借金の回収問題で男ともめていたようなのでした。

 そして、数日後、子どもたちの遊び場「大平原」で、エーヴァ・ロッタがグレーンじいさんの死体を発見してしまうのです。しかも、その直前、彼女は犯人らしき人と言葉を交わしてしまっていました……

 もう、犯罪調査なんていいやと思っていたカッレくんでしたが、エーヴァ・ロッタが危ないとわかると、事件解決に乗り出します。さて、カッレくんは、事件を解決し、エーヴァ・ロッタを守ることができるのでしょうか?

 ……というのがあらすじ。

 「長くつ下のピッピ」が、めちゃくちゃはっちゃけたお話なので、リンドグレーンってそういうイメージが強かったのですが、カッレくんのシリーズは、かなり本格的な少年探偵小説です。これがお子様探偵ごっこではなく、子どもたちは何度も危ない目に遭います。

  エーヴァ・ロッタは、この手の冒険小説のおてんばヒロインの元祖と言う感じで、男の子にも女の子にも愛される萌えポイントがいっぱい。

 元気で、快活で、運動神経は抜群、そして食いしん坊なのに痩せていてかわいい。ちょっとおっちょこちょいで、抜けているところもあるお嬢さんです。

 今回は、カッレくんたちの住む小さな村で殺人事件がおきてしまい、ことの重大性に、さすがに自分が首を突っ込む気になれなかったカッレくんでしたが、エーヴァ・ロッタがこの事件に巻き込まれたと知って、立ち上がります。

 カッレくんは、自分の中に「ブルムクヴィスト氏」と言う名探偵がいて、彼に語りかけるワトソンみたいな人と自問自答のような会話をする、一人遊びをしていました。イマジナリーフレンドみたいなやつですね。

 その空想の中では、自分は名探偵だったのですが、本人としてはそれは「ごっこ」で、実際は自分はただの少年だと自覚していたようです。

 前回の「名探偵カッレくん」で大活躍して、実際の宝石泥棒逮捕に貢献したのですから、もっとうぬぼれているかと思ったら、わりと冷静でした。そして、さすがに殺人事件に介入するような気にはなれなかったのです。

 というのも、カッレくんの村はとても小さくて、全員が顔見知り。殺されたグレーンじいさんはよく知っている人で、顔を知らない男が犯人だとしたら、絶対によそ者だからなのでした。

 しかし、そんな気乗りのしないカッレくんも、幼馴染みのエーヴァ・ロッタが巻き込まれたとあっては、話が別というわけです。

 エーヴァ・ロッタは事件の直後、あやしい男に「ねえ、今何時?」と話しかけてしまい、「二時十五分前」と返事をもらっていたのです。これで、犯行時刻が絞り込まれてしまいました。

 この「今何時ですか?」と言う会話、最近の若い方にはちょっと理解できないと思うので解説しますと、まだ携帯電話もなく、腕時計も高価だった時代、子どもたちが時間を知るすべは、腕時計を持っている大人の男の人に「今何時ですか?」と聞くことだったのです。

 だから、原っぱなど、周囲に店や時計のある建物がない場所で、見知らぬ大人に子どもが「今何時ですか?」と聞くのは、この時代、一般的な会話だったのです。しかし、ことがことだけに、これは恐ろしい。

 このエーヴァ・ロッタの身の危険には地元の新聞紙も悪いほうに一役買っていて、目撃者らしき彼女の個人情報を詳しく書いてしまったのです。いつの時代もこうなのでしょうか。なんだかリアル。
 もちろん、エーヴァ・ロッタのお父さんはかんかんになって新聞社に抗議しますが、新聞はもう売られてしまったあと。

 エーヴァ・ロッタは家から出ないで生活をしますが、それでも、彼女の身は安全ではなくて……

 なかなかおそろしい状況です。エーヴァ・ロッタもさすがに、恐怖を感じ、事件のことがトラウマになったりと、苦しみます。根が明るいたちとはいえ、身に起きた事件の重大さは、彼女のもともとの明るさではカバーできなくなってしまったのでした。

 子どもたちの遊び「バラ戦争」と、グレーンじいさん事件が絡み合い、最終的にどちらも解決するようになっています。
 親友のアンデスが、豪快で楽天的ないいやつで、「どんな難事件もカッレなら解決できるさ」と本気で思っているところがかわいい。いいなあ、こういう友情。

 かなり危ない目にもあいますが、ちゃんと事件は解決します。

 わりとボリュームのある話ですが、文章は平易で難しい漢字には振り仮名が振ってありますので、小学校中学年から。まずは、「名探偵カッレくん」から順に読むとわかりやすいでしょう。「カッレくんの冒険」は2冊目のお話です。

 少年探偵ものの元祖みたいな小説ですが、本格派で、まったく古びた感じがしません。いまのお子さまでも楽しく読めるはずですし、大人もハラハラしながら楽しめます。

 男の子も女の子も楽しめる、サスペンス&ミステリー冒険小説です。「コナン君」のようなミステリーものが好きで、まだの方はぜひ、読んでみてくださいね。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 殺人事件ですが、気をつけて書かれているので残酷なシーンはありません。子供向けの正統派探偵小説です。子どもらしい心理も書かれていて、それでいて、どきどきするおもしろさ。大人のビョルク巡査が子供どうしの遊び「バラ戦争」に真面目に配慮してくれるのにもほっこりします。

 読後は、エーヴァ・ロッタのお父さんの甘パンとコーヒーでほっと一息。

 

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