【名探偵カッレくん】児童文学の古典名作! 名探偵になりたい少年カッレくんが活躍する痛快少年探偵小説。【小学校中学年以上】

2020年12月27日

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名探偵カッレくん アストリッド・リンドグレーン/作 尾崎義/訳 岩波少年文庫

名探偵を夢見るカッレくんは、ある日エイナルおじさんの行動を不審に感じ、捜査を始めます。仲良しのアンデス、エーヴァ・ロッタとともに、大犯罪にせまるカッレくん。はたして、彼はこの難事件を解決できるのでしょうか。

この本のイメージ 探偵☆☆☆☆☆ 冒険☆☆☆☆☆ 友情☆☆☆☆☆

名探偵カッレくん アストリッド・リンドグレーン/作 尾崎義/訳 岩波少年文庫

<アストリッド・リンドグレーン> スウェーデン生まれ。小学校の先生や事務員をしながら数多くの作品を発表し続けた。国際アンデルセン賞受賞。作品に「長くつ下のピッピ」など。

名探偵カッレくん アストリッド・リンドグレーン/作 尾崎義/訳 岩波少年文庫

 初読です。
 たいへん有名な児童小説ですが、まだ読んだことがありませんでした。
 読んでみたら、かなり本格的な探偵小説だとわかり、びっくり。

 探偵になりたい男の子のドタバタコメディかと誤解していました。申し訳ございません。(平伏)
 どっちかと言うと、コナン君みたいな、子どもが大人の大事件を解決する系の話でした。1946年初版、日本での初版は1957年のようです。
 考えてみれば、リンドグレーンは「長くつ下のピッピ」とか、子どもが大人を軽々とへこませる話を書く人でした……。

 率直に言って、面白かった!

 カッレ・ブルムスヴィクトは、13歳。名探偵にあこがれる少年です。親友はアンデスと、お隣のパン屋の娘エーヴァ・ロッタ。この三人組でいつも仲よく遊んでいます。

 ある日、エーヴァ・ロッタのママのいとこ、エイナルおじさんがやってきて、エーヴァ・ロッタの家にしばらく滞在することになりました。けれど、このおじさん、怪しいのです。

 エイナルおじさんの不審な行動に、「探偵の直感」が働いたカッレくんは、彼を捜査することにします。そうしているうちに、だんだん大きな事件に巻き込まれてゆき……

 というのがこのお話のあらすじ。

 「山賊のむすめローニャ」はファンタジーですし、「長くつ下のピッピ」はピッピの怪力ぶりなどがもはやファンタジーの領域に入っていますが、「名探偵カッレくん」はファンタジーではなく本格的な探偵ものです。「少年探偵団」と同じジャンルで、子どもが大人の世界のトラブルに巻き込まれ、事件を解決してしまうお話です。

 どちらかと言うと「トム・ソーヤーの冒険」(1876年)に近いかもしれません。洞窟も出てきますし、最後はお金も手に入れるので、影響を受けていたように思います。やんちゃ坊主たちの小競り合いが、うまく事件に絡み合っていて、最後のあっと驚くどんでん返しに続いてゆきます

 カッレくんの冒険は「探偵になりたいパディントン」みたいな、本人はくそ真面目なのにうまく行かないドタバタギャグなのかと思ったら、どうして本格的な捕り物へと発展します。
 そういえば、リンドグレーンってそういう作風でした。子どもにも大人にも、わりと容赦がない物語なんですよね。

 でも、カッレくんはピッピにくらべたら、かなり常識的な子です。また、名探偵にあこがれているだけあって、観察力もあり、行動力もあります。

 そして、シャーロック・ホームズにあこがれているカッレくんには、ワトソン役の相棒もちゃんといるんです。心の中に。

 カッレくんは、心の中のもう1人の自分を「ブルムスヴィクト氏」と呼んで、ワトソン氏のように話しかけます。心の中で「ブルムスヴィクト氏」と会話しているときだけはカッレくんは名探偵なのです。たぶん、こうやって自問自答しているあいだに、考えをまとめているのでしょうね。これって、いま流行の「イマジナリーフレンド」と言うやつでしょうか。リンドグレーン、時代を二歩も三歩も先んじていたようです。

 最初はギャグかな、と思っていたんですけど、わりとどうしてしっかり推理するし、ちゃんと悪人をやっつけます。
 もちろん、途中は大人に逆襲されて大反省するのもお約束。でも、カッレくんはがんばります。さいごはちょっぴり神様の偶然が助けてくれたりもします。

名探偵カッレくん アストリッド・リンドグレーン/作 尾崎義/訳 
※こちらはリンドグレーン作品集

 リンドグレーンは女の子キャラがものすごく魅力的なのですが、この作品のヒロイン、エーヴァ・ロッタもとってもキュート。

 かわいくて運動神経抜群で、勇気があって行動力があるのですが、別に男子に対抗しようとしているわけでもなく、身なりに気を使わないわけでもなく、おしゃれで、その必要があるときはしとやかにかわいらしく振舞います。

 けれど、子ども同士で遊ぶときは、本気で怒れば男子と混じって取っ組み合いのけんかもするし、川でずぶぬれになって殴りあいをすることも。

 そして、エーヴァ・ロッタのパパも、それを見つけてもたいして怒りません。いつものことだな、って感じで気をきかせてひっこんでしまいます。(そして、エーヴァ・ロッタはそれで満足しているのです。自由にけんかさせてくれるから)

 リンドグレーンは「強い女の子」を書かせるとピカイチです。
 ローニャは身なりはぼろぼろの野生児、ピッピは奇抜な服を平気で着ている女の子ですが、エーヴァ・ロッタはまた違うタイプ。

 おしゃれでかわいくて、なんでもできるエーヴァ・ロッタ。でも、壁をよじ登ったり、馬に曲乗りしたり、男子とグーで殴りあいをしたりとそんじょそこらの男の子より腕白なのです。
 そして、食いしん坊。パパの工場の甘パンをしょっちゅういただいて、ぱくぱく食べているのですが、ぜんぜん太っていません。(毎日暴れまくっているからかもしれませんが)

 児童小説のヒロインとして理想的ではないでしょうか。さすがはリンドグレーン、男の子だけでなく女の子の夢もわかっています。

 最近は特撮ヒロインにも、「力持ちで食いしん坊でかわいい」女の子が出てきましたが、これってある意味、女の子の永遠のあこがれだと思います。凶暴でかわいい食いしん坊の、おしゃれな美少女。女の子の「こうだったらいいな」が全部入っていますもん。

 しかも、エーヴァ・ロッタは、男子と喧嘩するときは凶暴だけど、ふだんはちゃんとおしゃれをしておしとやかに振舞うこともできるのが最高にカワイイ。だって、他人の見ていないところで無作法して人前ではおしとやか、っていうんじゃないんですよ、どっちも男の子の前なんです。

 男の子とおんなじように、一緒にけんかに参加して大立ち回りをするのに、別の場面ではおんなじ男の子たちにかわいらしく振舞うんです。昨日はズボンで泥遊びするけど、今日はドレスでお嬢様ごっこするわよ、くらいのノリで。素敵すぎます。(そういえば、今思い出したけど、強くて美人で食いしん坊って、30年以上前から日本にもいたわ……サクラさんが。(2020.11.12.追記))

 いかんいかん、ヒロインの話で熱く語りすぎました。これはカッレくんのお話でした。

 日本では、コナン君というスーパー少年探偵がいるので、いまから「名探偵カッレくん」を読んでも、いにしえの少年少女のような感動はないかもしれません。

 けれど、児童文学ならではのレトロな味わいや、北欧スウェーデンの子どもたちの日常などが瑞々しく描かれており、わくわくした気持ちにさせられる独特の魅力があります。

 少年漫画のスーパー少年探偵よりは情けないし失敗も多いけれど、等身大の少年ぽさが、フィクションとリアルをちょうどよく混ぜてくれて、カッレくんが身近な、隣のクラスの男の子みたいに感じられるのです。

 少年探偵ものがお好きな方で、未読の方は、ぜひ「カッレくん」の世界に触れてみてください。

 「トム・ソーヤーの冒険」と、「シャーロック・ホームズ」「エーミールと探偵たち」が合体したような、全部盛りの豪華幕の内弁当です。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 探偵小説なので危険なシーンはちょっとだけありますが、気をつけて書かれているので残虐なシーンや流血シーン、痛そうなシーンはおどろくほどありません。腕白少年ものにありがちな程度なので、「そうとわかっていれは大丈夫」な方にはおすすめです。

 少年漫画が好きなお子様、とくに「名探偵コナン」など少年探偵ものが好きならぜひ。人が死なないのでコナン君よりマイルドです。
 エーヴァ・ロッタがとにかくおいしそうにパンを食べるので、読後はおいしいコーヒーと菓子パンをご用意くださいね。

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