【なんて素敵にジャパネスク2】あの少女小説を電子書籍で。おてんば姫の平安大活劇絵巻第2巻【電子書籍】【中学生以上】

2024年4月14日

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なんて素敵にジャパネスク 2  氷室冴子/作 集英社コバルト文庫

「入道事件」を鷹男とともに解決した瑠璃姫。しかし、事件は完全には終わっていなかった。何ものかに命を狙われ、身を隠すことにした瑠璃姫だが、思わぬ出会いが運命を揺るがすのだった…… (なんて素敵にジャパネスク 2  氷室冴子/作 集英社コバルト文庫

この本のイメージ 平安時代☆☆☆☆☆ ラブコメ☆☆☆☆☆ ファンタジーではない☆☆☆☆☆

なんて素敵にジャパネスク 2  氷室冴子/作 集英社コバルト文庫

<氷室冴子>
氷室 冴子(ひむろ さえこ、本名:碓井 小恵子(うすい さえこ)、1957年1月11日 ~ 2008年6月6日) 1957年北海道生まれ。藤女子大学国文学科卒業。77年、「さようならアルルカン」で青春小説新人賞受賞。少女小説の代表的人気作家。著書に「なんて素敵にジャパネスク」など多数。

 伝説の少女小説「なんて素敵にジャパネスク」です。初版は1985年。新装版が1999年に、復刻版が2018年に出版されています。現在、紙の本のほうは時々欠品するので、電子書籍のほうが入手しやすいと思います。

 氷室冴子先生といえば、わたしたち世代が娘世代の頃には知らないものがいないほどの超絶人気作家で、書く話書く話がすべてコミカライズされそれも大ヒット、と言う一種の社会現象と言う感じでした。

 当時「読書」は一般人のかなり身近な趣味で、駅前には必ず本屋があり、駅のホームのキオスク(売店)ではかならず新刊の文庫本が置いてある時代でした。電車待ちの時間や、乗車中にすることといえば読書だったのです。今はおそらくみなスマホを見ていると思いますが、あれが本だった時代が昭和平成でした。

 氷室先生というのはそんな時代に、それまで手薄とされていた中学生、高校生くらいをターゲットにした等身大のお話を書いて人気を博された方です。今では「ラノベ」と言われて一大ジャンルになっているカテゴリーですが、当事はそのような小説がほとんどなかったのでした。

 そんな時代に、氷室先生は新進の少女小説家としてデビューし、瞬く間に圧倒的な人気でトップに躍り出た方でした。
 もうね、女子のあいだでは知らないものはいないくらいの勢いでした。
 あまりの人気に、わたしは当時ブームに乗り切れてなかったのです。すすめられてはいたのですが。

 当事はライトノベルというジャンルが生まれたばかりの頃で、猛烈に面白い作品があまりにも多すぎたのです。買わなければならない本が多すぎました。
 ファンタジーやSFのほうが好きだったわたしは、ごくふつうのラブコメや青春ストーリーが主流の氷室作品は後回しにしていたのは確かです。

 当時のわたしの認識は氷室冴子はふつうの女の子が読む小説で、わたしのようなオタクは栗本薫とか新井素子とか菊池秀行とかを読むというイメージでした。今にして思えばわりと思い込みなんですが。

 この歳になって、昔友だちにずいぶん薦められたよなあ、あのときに読んでればよかったなあと思い、コツコツと読んでいます。
 いやあ、面白いですね。あのとき読まなくて申し訳なかった、友よ。

 と、いうわけで、氷室先生の代表作「なんて素敵にジャパネスク2」のご紹介です。
 平安時代、ちょっと風変わりでおてんばな瑠璃姫が陰謀渦巻く宮中の事件を持ち前の無鉄砲さで解決する平安冒険活劇少女小説。ラブコメ要素もあります。

 お話は「なんて素敵にジャパネスク1」から完全に続いていますのでご興味もたれた方はまずは「なんて素敵にジャパネスク1」から順番にお読みください。
 「なんて素敵にジャパネスク1」のレビューはこちら

 今年のNHK大河ドラマは紫式部だそうですが、わたしたち世代は娘時代に「なんて素敵にジャパネスク」と大和和紀先生の「あさきゆめみし」が大ヒットしたので、あの時代にロマンを感じる女性は多いのではないでしょうか。
 戦国時代ものが多い大河ドラマで平安絵巻とは、どんな感じになるのでしょう。楽しみですね。

 さて、「なんて素敵にジャパネスク2」のお話は……

 第1巻で「入道事件」と呼ばれた政変の解決に活躍した瑠璃姫。
 ところが、この事件、まだ禍根が残っていたようで、瑠璃姫の命が狙われてしまいます。

 そんなことで大人しく引き下がるわけもない瑠璃姫は、事件を解決すべく動き始めるのですが、そこで彼女は意外な人物と出会うのでした……

 ……と、いうのが今回のあらすじ。

 大きなネタバレはできないのですが、第1巻で残されていた伏線が一気に回収されます。
 瑠璃姫、高彬、鷹男など1巻からの登場人物はそのまま新キャラも交えてよりダイナミックに物語は展開し、ページをめくる手がとまらなくなります。

 わたしは「クララ白書」「アグネス白書」とこの「なんて素敵にジャパネスク」しかまだ読んでいないのですが、氷室作品のヒロインには独特の瑞々しさと純粋さがあります。

 なんというか、一応の義務みたいなふうでラブ要素はあるのですが彼女たちの行動の芯になっているのは恋愛ではないのです。

 「クララ白書」のしーのもそうでしたが、瑠璃姫はさらにその部分が突き抜けていて、彼女にとって大切なのは「正義」ですらない。ただただ、純粋でまっすぐな人としての愛情(恋愛感情ではない)だけを抱いて信じた道を駆け抜けるのです。

 これは強烈な魅力です。

 たいていの少女向けコンテンツの場合、友情や家族愛、親愛、信頼などすべての感情の上位に恋愛感情が置かれ、友情と恋愛のあいだで、または家族愛と恋愛のあいだで揺れ動く感情が描かれます。

 でも、氷室作品は違うのです。
 あらゆる感情の上位に「人としての愛情」が置かれる。

 その優先順位を瑠璃姫は揺るがさない。
 しかも、それは「正義」ですらなく、悪を倒すために恋愛を捨てるとかそういうのでもない。
 ただただ純粋な愛情だけで信じた道を突っ走る。

 わかる。思春期の女の子がのめりこんだ理由が。この年齢のわたしですら瑠璃姫はまぶしい。
 氷室作品の女の子たちは、一点の迷いもなく「あたりまえでしょう」といわんばかりに「この世には恋愛感情よりもずっと大切な情がある」と信念を貫くのです。

 若い頃、よく「彼氏とは別れることもあるけど、友情は一生ものだからね」と女友だちと言い合っていました。
 偶然にも「クララ白書」にそんな言葉があるとあとで知り、「あんた氷室冴子読むべきよ」と強く勧めてくれた彼女を思い出します。

 これほどキラキラと絢爛豪華な世界を描き、凛々しい公達たち、心ときめくイケメンたちを登場させ、ほのかなラブ要素も漂わせながら、芯にあるのはまったく違う。むしろ、恋愛要素はつねに脇へ置かれる。でも、面白い。

 氷室先生は、女の子が幼い頃からなんとなく抱いていた違和感を理解していたのではないでしょうか。
 どうして女の子向けのコンテンツはある年齢になると恋愛ものばかりになるのか。どうして女の子はすべての感情のなかで恋愛を優先しなければならないのか。
 夢や目標への情熱や、家族への愛情や、友だちへの友情や、動物を愛する気持ちや、人としての心配や人情や……そんな純粋な気持ちより「そんなことより」恋愛が「本当に」大切なのだろうか?

 そんな固定観念を瑠璃姫は鮮やかに蹴散らして、信念の赴くままに突進します。信じたことをやりぬくのです。

 女の子のためのキラキラときめきストーリーの皮をかぶりながら、骨太の物語です。
 若い頃に抱いていた情熱を思い出させてくれる、深く流れる強さを秘めた少女小説でした。

 文章はリズム感がよく読みやすく、瑠璃姫の一人称で書かれているので親しみもあります。平安時代の慣わしなどもわかりやすく説明されているので当時の風俗などもわかり、平安情緒も楽しめます。

 昔の名作も電子書籍で気軽に読めるようになったのが、ハイテク時代のいいところ。また、大河ドラマの影響で最近は紙の本もどうやら増刷されているようでアマゾンにも在庫があるようです。
乙女心にひたりたい時、少女小説の名作をお探しのとき、この機会に「なんて素敵にジャパネスク」をぜひどうぞ!

 ※読書リーダーは、読書専用の端末をお使いになると、メールや電話、SNSなどで中断されないのでおすすめです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。
 明るく楽しい、ラブコメディーです。平安時代が時代設定ですが、ファンタジーではありません。綿密な考証のうえに平安時代の風俗を描きながら、ハラハラドキドキの謎解きサスペンス要素もある、冒険活劇少女小説です。

 女の子の冒険物語がお好きな方に。

 読後はおいしい緑茶と落雁でひとやすみ。

 

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