【であえてほんとうによかった】偶然の出会いから生まれた深い愛情。ちょっぴりせつないティラノサウルスシリーズ第八巻。【絵本】【4歳 5歳 6歳】

2024年4月14日

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であえてほんとうによかった  ティラノサウルスシリーズ 8  宮西達也/作・絵 ポプラ社

むかしむかし、嫌われもののティラノサウルスがスピノサウルスの子どもをバクリと食べようとしたとき、思いもよらないことがおき、ふたりは小さな島に取り残されてしまいました……( であえてほんとうによかった  ティラノサウルスシリーズ 8  宮西達也/作・絵 ポプラ社)

この本のイメージ 偶然の出会い☆☆☆☆☆ 心の成長☆☆☆☆☆ 恐竜☆☆☆☆☆ 

であえてほんとうによかった  ティラノサウルスシリーズ 8  宮西達也/作・絵 ポプラ社

<宮西達也>
1956年、静岡県生まれ。日本大学芸術学部美術学科卒業。作品に、「おまえうまそうだな」(けんぶち絵本の里大賞)「おれはティラノサウルスだ」「あいしてくれてありがとう」(けんぶち絵本の里大賞・びばからす賞)「帰ってきたおとうさんはウルトラマン」「パパはウルトラセブン」(ともにけんぶち絵本の里大賞)「うんこ」(けんぶち絵本の里大賞・びばからす賞)「大きな絵本 にゃーご」(第38回造本装幀コンクール展読書推進運動協議会賞)「ちゅーちゅー」(けんぶち絵本の里大賞)「きょうはなんてうんがいいんだろう」(講談社出版文化賞・絵本賞)「ふしぎなキャンディーやさん」(日本絵本賞・読者賞)など多数ある。

 初版は2009年。「であえてほんとうによかった」は「おまえうまそうだな」にはじまる「ティラノサウルスシリーズ」の第8巻です。

 このお話、基本コンセプトは同じなのすが、続き物なのかそれぞれが違うお話なのか、そこらへんはあいまいになっています。どうやら第4巻以降は続いていなそうです。

 もし、最初からお読みになりたい場合は「おまえうまそうだな」からお読みになるといいでしょう。

 「おまえうまそうだな」のレビューはこちら

 今年はお正月からたいへんな自然災害があり、そのうえ次から次へと事故や災害が続いているので心が休まる暇がありません。

 この絵本も地震のシーンがあるのでご紹介することをかなり迷いました。(そもそも、「ティラノサウルスシリーズ」は火山の活動期の時代と言う設定なので物語中に頻繁に地震があります)

 今回は、突然の自然災害で小さな離れ小島で暮らすことになったティラノサウルスとスピノサウルスの子どものお話。いつものようにただの乱暴者だったはずのティラノサウルスの心に優しさが芽生え、すこしずつ成長してゆきます。

 ティラノサウルスシリーズは、もともと別の生物を喰い、他者から奪う喜びしか知らなかったテぃラノサウルスが弱きものを助け、守り、思いやりや優しさを与える喜びや幸せを知ってゆく物語です。
 少しせつないラストになることが多いのですが、短い物語のなかでティラノサウルスは大きく成長します。

 勝負に勝ったり、何かを得たり、気に入らないものを壊したりすることは一時的な喜びをもたらしてくれるのかもしれません。

 しかし、深いところで継続的に支えてくれるのは、ささやかな思いやりや小さな優しさの積み重ねだったりするものです。ティラノサウルスは「奪い取る喜び」しか知らなかったので、そのような幸せの形があるとは思いもよらなかったのでした。

 「もらう」より「与える」ほうが深い幸せを感じられることを知るのはかなり高度なことです。
 この場合の「与える」は「奪われる」や「取られる」とは違い、みずから「与えたい」と思うことから生まれる行為なので他人に促されて行うのとも違うのです。

 誰かを助けたい、親切にしたいという気持ちは人間には誰しもあるのですが、自分自身がそれどころではないくらい困っていたり、心身ともに疲れきっていたりするとそんな気持ちが磨り減ってしまうこともあります。

 そんなときに必要なのは、まずは自分の心を癒すこと。
 純粋で、優しさに満ちた何かに触れること。動物だったり、美しい自然だったり、シンプルでやさしいストーリーだったり……

 ティラノサウルスシリーズは、過酷な現代社会で磨り減ってしまった優しさを回復させる力を貸してくれます。少しだけ、後押ししてくれるのです。

 いつもいつもは優しくできなくても、上手に親切に出来なくても。ティラノくんだって、がんばっているのだから。

 文章は見開きに最大で二十行前後、文章のボリュームはややありますが、すべてひらがなとカタカナで書かれていますので、五十音が読めればひとりでコツコツ読みきることができます。もちろん、読み聞かせにも。

 激動の年の幕開けになりましたが、ささやかな幸せを忘れずに生きたいものです。
 子どもから大人まで、意地っ張り恐竜のファンタジーをぜひどうぞ!

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 とてもいいお話なのですが、大地震のシーンがあり、少し哀しい結末になります。
 この国は地震が多い土地なので、もし、地震にトラウマのあるお子さまや保護者の方がいらっしゃる場合は、まずは大人の方がお読みになり、ご判断されてください。
 あえて必要とされる方もいらっしゃるだろうと思います。
 必要な方に届きますように。

 

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