【こども孫子の兵法】強くしなやかな心を育てる! 斎藤孝先生監修の、わかりやすい孫子解説本。【小学校低学年以上】
孫子は、中国の春秋戦国時代に活躍した軍師と言われています。「孫子の兵法」には、この世の中を「強くしなやかな心」で生き抜くヒントが詰まっています。この本は、「孫子の兵法」を小さな子どもにもわかりやすく解説した解説書です。
この本のイメージ 人生訓☆☆☆☆☆ 問題解決☆☆☆☆☆ 戦わない心☆☆☆☆☆
強くしなやかなこころを育てる! こども孫子の兵法 斎藤孝/監修 日本図書センター
<斎藤孝>
明治大学文学部教授。1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。東京大学大学院教育学研究科学校教育学専攻博士課程等を経て現職。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導
本日ご紹介するのは、斎藤孝先生監修の「こども孫子の兵法」です。
孫子は、本名を孫武といい、中国の春秋戦国時代に活躍した軍師と言われています。孫武についての詳しい記録はあまり残されていませんが、「孫子」と呼ばれる貴重な書物が現代にも伝えられています。
この本は、その孫子の遺した「孫子の兵法」を、小さな子どもにもわかりやすく解説した知育本です。
「孫子」と言えば、マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏やソフトバンク会長孫正義氏をはじめとして、様々な経営者の愛読書として有名です。
きっかけは、ある児童小説
じつは、この本を本サイトでご紹介しようと思ったきっかけは、何年か前にフランスの児童向けファンタジー「タラ・ダンカン」シリーズを読んだことなのです。(いや、もちろん翻訳で)
その中のキャラクターが「わたしは孫子を読んでいる。いい本だからあなたも読みなさい」(うろおぼえ)と言うシーンがあるんですよ。
孫子! フランスの子供向け小説に「孫子」!
読んだときは、かなりの衝撃でした。
でも、よく考えたら、海外の児童小説って、子どもが大人と堂々と交渉したり、駆け引きしたりする場面が当然のように登場します。そして、トム・ソーヤーのように、うまく大人を出し抜いてしまう子どもだっています。
こう言う本を、あたりまえに読んで育った子たちが大人になって、ビジネスマンになって日本に来るんだ……そりゃあ、ひとたまりもないわ。
と、言うのが正直な感想でした。
日本人の美徳が弱点にもなる
その昔、円谷幸吉(つむらやこうきち)という偉大なマラソンランナーがいました。
彼は、お父さんに「男は後ろを振り返ってはならない」と言う教育を受けたため、走行中に振り返って位置確認することをせず、どんなときでも前だけを見て走る人でした。そのため、駆け引きやペース配分が出来ず、オリンピックのゴール直前で後方の選手に抜かれてしまったと言うエピソードがあります。
振り返って位置確認しないって、どんなに恐ろしいことでしょう。ペース配分を間違えたら、死んでしまうことだってありえます。昔の人は、そんな走り方をしていたのです。
この「日本人らしさ」と言う欠点はいまだにあって、令和になっても真面目な日本人を苦しめています。そして、やっぱりグローバルな場所では、大きな不利になっていると感じるのです。
日本の子どもは「孫子」を読むべきだ。だって海外の子どもは読んでいるんだから。
わたしは、そう思ったのです。
この本のここがオススメ
斎藤先生がこんなにすばらしい子供向けの解説書を作ってくださって、本当にうれしい。これこれ、ほしかったのはこういう本ですよ!
これ、本当にすばらしいんです。
「孫子」の中から現代に通じる箇所を、うまくセレクトして、わかりやすく解説してくれています。
字は大きく、イラストがついていてわかりやすく、そして、漢字にはすべて振り仮名がふってあります。ですから、ひらがなが読めれば全部読めるのです。
エッセンスだけを上手く抽出しているので、大人にもおすすめ。「ためになるな」と感じたページをコピーしてトイレの壁に貼ったり、スマホの待ち受けにしても。
構成は
第1章 勝つためのヒント
第2章 夢をかなえるためのヒント
第3章 困難に立ち向かうためのヒント
第4章 もう一歩踏み出すためのヒント
の4章にわかれ、孫子の知恵を再構成しています。
わたしが好きなのは、有名な「彼を知り己を知れば百戦して危うからず」と「勝ちをみること衆人の知るところにすぎざるは、善の善なるものにあらざるなり」。
なぜ、子どもたちに「孫子」が必要なのか
孫子は、繰り返し繰り返し、人と争うこと、ぶつかり合うことを避けるよう主張しています。孫子をよく読むと、争いに勝つことではなく、そもそも争わないことがとても大切だとわかるのです。
かといって、ただひたすら理不尽に耐えるのではなく、戦わないで主義主張を理解してもらうことが大切なのです。
そして、問題を解決することより、問題を起こさないことが大切なのだと気づかされます。
これは、問題が発生するのを恐れて、新しいことにチャレンジしないと言う意味ではありません。
大事故が起きたときにあざやかに解決してくれる人はかっこいいし、頼りになります。そう言う人は偉大だし、必要です。
けれども、ふだんから大事故が起きないように、あらゆる手を尽くす人はそれ以上に必要なのです。ただ、その人の働きや努力は、けっして評価される事はありません。なぜなら「何もおきていないから」。
けれども、孫子は百戦して百勝する将より戦わずして勝つ将のほうが「善の善なる」と書いています。
戦うと大きな損害が出ます。だから、戦わないで問題を解決できる人がもっとも優れているというわけです。ただし、戦わないで問題を解決した場合、その人が誰にも評価されない事はありえます。それがつまり、「何も起きていないから」おきる弊害です。
でも、「何もおきない」ことは本当に貴重なことなのです。
日本人は、「何もおきない」ことに対して、あまり評価しません。ミス無く、問題なく、不具合無く商品が販売され、スムーズにサービスが提供されることは「当然」だと考えているからです。
でも、これは当然ではないのです。何も問題が起きないために、影で数多くの人々が努力しています。
「何もおきない」という事は、本当にすばらしいことなのです……
「こども孫子の兵法」は、総ルビなので、ひらがなさえ読めれば、何歳からでもお読みいただけます。字も大きく、イラストもわかりやすいので、読み聞かせにもおすすめ。
そして、たいへんわかりやすくエッセンスを解説しているため、大人のビジネス書としても役立ちます。
一家に1冊というくらい、おすすめの本です。ぜひ、お手にとってみてくださいね。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はありません。生き辛さを感じている人に、しなやかに生きるヒントを与えてくれます。
解説も小さな子どもの心に寄り添った書き方で、わかりやすく、温かみのある文章です。「兵」や「戦い」「死地」などの孫子の言葉は、子どもの生活に置き換えられるよう上手に解説されています。
悩めるお子さまの問題解決に、疲れた大人のリラックスタイムに、会社の新人教育にと、あらゆる年代におすすめの良書です。
最近のコメント