【レモネード戦争】アメリカからやってきた経済も学べる児童文学!子供たちのレモネード戦争。小学校中学年以上におすすめです。【小学校中学年以上】
エヴァンとジェシーは仲良し兄妹。でも、ジェシーが飛び級でエヴァンと同じクラスになることをきっかけに、ぎくしゃくしはじめた。すれ違いがすれ違いを生み、ついに…
この話のイメージ ビジネスをわかりやすく☆☆☆☆☆ 楽しい☆☆☆☆
レモネード戦争 ジャクリーヌ・デイヴィーズ/作 日当 陽子/訳 小栗 麗加/絵 フレーベル館
最近は、子供向けヒーロー番組の主人公が上場企業の社長さんだったりして、会社の社長とかビジネスにも、ちょっぴり子供の興味が向いているときだと思います。
そんなお子様におすすめの児童小説がこちら。
アメリカからの翻訳本です。
本国では、好評を博してシリーズ化されているそうです。
主人公たちの設定年齢から推察すると、小学校中学年くらいを対象にしてるようです。字が大きく、ひらがなが多く、平易な文章で書かれているので、かしこい子なら小学校低学年でも、読み聞かせをしてあげながら読みきれると思います。
ところが内容は、本格的なビジネス書です。これが、なかなか、あなどれない内容なのです。
エヴァンとジェシーは仲良しの兄妹ですが、ジェシーが飛び級でエヴァンのクラスに入ることになってから、二人の関係がぎくしゃくしはじめます。
売り言葉に買い言葉が重なって、ふたりはレモネードの売り上げで勝負することになってしまいます。
アメリカの子供たちは、レモネードスタンドを出して手づくりのレモネードを売っておこずかいを稼ぐことが伝統になっています。おそらく、住宅地で子供が飲み物や食べものを販売することについて法律がゆるいんだと思います。
子供たちはレモネードを売るために、看板を作ったりスタンドを作ったり、飾り付けをしたりして、思い思いの趣向を凝らします。
計算は苦手だけど、友達が多くて行動力があるエヴァン。細かいことに気がついて計算が得意だけど、コミュニケーションに問題があるジェシー。それぞれがそれぞれの問題をなんとか克服しながら工夫して競い合います。
児童文学の形式をとっていますが、マーケティング理論など本格的な内容が目白押し。
ベンチャー立ち上げのイロハみたいなものがみっちり詰まっていますし、商売をする上でのあるあるのトラブルも描かれています。性格の違う人同士のコミュニケーションのすれ違いや、誤解などもわかりやすく書かれていて、兄か妹のどちらかにすんなりと共感できるようになっているのも上手いです。
アメリカの子供は、こういうのを読んで大きくなるのか…!
と、ちょっとした衝撃を受けました。
日本の児童文学は道徳的なものが多くて、お金を儲けることや大金を手にすることに抵抗がある話がほとんどです。大金を手にしてもなんらかのアクシデントで失ってしまい、「でも貴重な経験をした」で、終わるタイプです。
もちろん、現実には宝や大金は手に入らないことのほうが多いので結果よりも経験や過程のほうが重要、という考え方は大切です。しかし、そのパターンの話ばかりを浴びるように読んでしまいますと、お金に対する考え方のバランスが悪くなってしまうことは確かです。これは本当に難しい問題なのですが…
この「レモネード戦争」は、そういった、「お金儲けにまつわるあれこれ」がバランスよく含まれています。そのうえで、本格的な商売の法則みたいなものも子供にわかりやすく書かれていて、こういうのを「楽しく読んで」大きくなったビジネスマンが、外資系企業としてやってくるんだな、と思ったら、まったく勝てる気がしなくなってしまいました。
フロンティアの国って、根本的に何かが違う気がする……!
なので、この本はわりと本気でおすすめをいたします。先日ご紹介した「プログラミングガールズ!」とあわせて、学習教材としておすすめするレベルです。
本国で出版されているらしい続編、読んでみたいですね。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はほとんどありません。大人が読むとそこはかとない敗北感を感じるくらい、良質な本です。暑い夏にはレモネード飲みながらぜひどうぞ。
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