【若草物語】もうすぐ映画がやってくる!世代を超えて愛される、アメリカ児童文学不朽の名作。四姉妹の物語。【小学校高学年以上】
メグ、ジョー、ベス、エイミーのマーチ家四姉妹は、父が従軍牧師として留守のなか、母と五人で力を合わせ、仲良く幸せにつつましく生活しています。
この本のイメージ ほのぼの☆☆☆☆☆ やさしい☆☆☆☆ 幸せとは☆☆☆☆☆
若草物語 ルイザ・メイ・オルコット/作 海都洋子/訳
名作中の名作、「若草物語」です。ある年齢以上の世代では知らないものもいないんじゃないかと言うくらいの作品ですが、最近の方はあまり読んだことがないかもしれません。
時代は、アメリカ南北戦争時代。マーチ家のお父さんは、従軍牧師として、戦地に行っています。留守を任されたお母さんと、メグ、ジョー、ベス、エイミーの四姉妹は、つつましく仲良く暮らしています。そんな日常の物語です。
わたしたちのようなシニアオタクは、これらの古典児童文学を読むと、少しほっとするところがあります。今の本を読むのも楽しいし、新しい本は技巧的に優れていて素晴らしい本もたくさんあるのですが、古い本を読んだときのどこか落ち着く気持ちと言うのは、わたしたち世代特有のものかもしれません。
なので、若い方々に同じようにおすすめできるかどうかはわからないのですが、ぎすぎすとこじれがちな現代生活でお疲れならば、100年以上前の児童文学独特の、のどかで落ち着ける雰囲気は、 おすすめだと思います。
マーチ家は、ひどく貧乏でも、すごくお金持ちでもない、ごくふつうよりは少しつつましい家庭です。父は従軍牧師として留守にしており、優しい母と五人暮らし。メイドのハンナが支えてくれています。
主人公は、活発で小説家志望のジョー。本名はジョゼフィーンですが、女性らしいジョゼフィーンという名前が苦手で、周囲にはジョーと呼ばせています。さばさばしていて男の子っぽく、服はいつも焼け焦げやかぎ裂きだらけ。 そそっかしくて、いつも何かを壊してばかりいます。
姉のマーガレット愛称メグはたいへん美人で、やさしくおしとやか。すぐ下でジョーと大の仲良しの妹エリザベス(愛称はベス)は、内気で引っ込み思案ですが誰よりも愛情深く、まじめです。末の妹エイミーは、早く大人になりたい、おませな女の子。 女の子なら、誰かには感情移入できる、個性豊かな四姉妹です。
今の世代の人たちにも、何か感じ取ることができるところがあるのじゃないかと思えるところは、たくさんあります。
たとえば、この四姉妹のなかでベスは学校に行っていないのです。ベスは、愛情深くまじめで、問題があるような子ではないのですが、極端に内気でどうしても集団で勉強することができませんでした。
なんどか学校に通ったのですが、どうしてもベスの精神的な負担が大きかったため、両親は家で勉強させ、生活させることにしたのです。
わたしたちの時代、昭和の頃のほうが、「ベスが学校に通っていない」ことが理解できず、「ほんとうにこれでいいのか」と思う人が多かったと思います。実際、当時のわたしには、理解できませんでした。
現代はHSCや発達障害、いじめや鬱に対して理解が広がっています。ベスはいじめられたわけではありませんでしたが、彼女の繊細な神経では集団で勉強することが耐えられなかったのです。
おそらく、ベスは繊細すぎる子供、HSCだったのだと思います。彼女の感性はとても細やかで、少しのことをするのにも非常な勇気を必要としますが、本質的にとてもやさしく愛情深い子です。そんなベスを、姉のジョーはいつも守ってやりたいと思い、優しくしています。
主人公のジョーは、作者がモデルと言われており、実際にベスのような妹がいて、若くしてこの世を去ったと言われています。
古い時代、いまよりずっと格式や礼儀が厳しかった時代の物語だと思いますが、マーチ家の姉妹は、それぞれの個性を認められ、たっぷりの愛を注がれてすくすくと育ちます。
お隣の大きなお屋敷に住む、ローレンス家の子息は、そんな彼女たちの生活をうらやましく思い、夜にマーチ家のリビングの窓から見える一家団欒の姿を見てひそかにあこがれていました。
ガーディナー夫人のパーティーで、偶然、ジョーは廊下の奥に隠れていたローレンス少年と出会い、少しだけ仲良くなり、誰もいない廊下でダンスを踊ります。
そのときの会話から、「あの男の子は、ひとりでさびしいんじゃないかしら」と思ったジョーは、風邪で引きこもっていたローレンス少年の窓に雪玉をぶつけて話しかけるのです。
このあたりのシーンは有名で、当時の女の子は大好きなエピソードですが、あらためて今読むと、
ローリー、ヒロインか!
って思うくらい、ローリーが可憐でジョーがかっこいいですね。とても古い小説なので、もしかしたら、出版された当時は画期的な話だったのかもしれません。
その後、マーチ家とローレンス家は家族ぐるみのお付き合いになるのですが、この二つの家が価値観や経済的な違いをやすやすと越えて心からの親交を深めていく様子は、読んでいるだけで心がほんわりとあたたかくなります。
物語中盤になると、ローリーの親戚をはじめとして、この二家以外の「ふつうの人々」が登場し、彼らが仲良くしすぎていることに、あれこれとゴシップ的に嘴を突っ込まれて傷つくシーンが出てきて、ようやくこの世界も現実なんだと気づかされます。
けれども、この二つの家の交流だけで話がすすむあたりまでは、世界にこんな優しい場所があるのか、と言うくらい、「素のまま」の人間同士の交流が描かれるのです。つまり、作者は、マーチ家とローレンス家の交流こそ、「人が本来あるべき」姿と思っていたのでしょう。
いじめ、体罰、喧嘩、病気、などなど、四姉妹が乗り越える問題は日常の問題ばかりです。けれど彼らは失敗しながらも、いつも真正面から問題に取り組み、乗り越え、愛情深く生きており、彼女たちの物語を読んでいると、励まされます。
重苦しい日常に疲れたとき、週末にあたたかい紅茶を入れて、ゆっくり読むのにおすすめの本です。若い世代の人にもぜひ、読んでいただきたいです。学校に行けない子なんて、150年以上まえからいたんですよ。
(2020年3月19日追記)今日知ったのですが、映画化されたようです!メグがエマ・ワトソンだそうです!!まあびっくり。原作がすばらしいので、超・期待ですね!どうやらストーリーは「続・若草物語」の部分も入るようです。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はほとんどありません。( 一箇所、猩紅熱のシーンがあり、病気の場面が苦手な方はご注意ください) あたたかい紅茶と素朴なクッキーやパイなどをお供に、のんびりお読みになることをおすすめします。
※ちなみに、続若草物語のほうには、悲しいエピソードもありますので、今回は紹介しませんでした。(ベス…)
最近のコメント