【パン屋のイーストン】かわいい森のパン屋さんと、動物や精霊たちのふしぎファンタジー。読み聞かせにぴったりの、ほのぼの絵本です。【小学校低学年以上】
かぐわし森のイーストンは、パン屋さん。火の精霊アチネと、切り株のおうちで今日もパンを焼いています。
この本のイメージ かわいい☆☆☆☆☆ ふしぎ☆☆☆☆☆ おいしそう☆☆☆
パン屋のイーストン 巣山ひろみ/文 佐竹美保/絵 河出書房新社
<巣山ひろみ>
広島県生まれ。パン屋ではたらきながら創作活動をつづけている。「雪の翼」で第20 回ゆきのまち幻想文学賞長編賞受賞。「逢魔が時のものがたり」(学研)で第42 回児童文芸新人賞受賞。作品に「雪ぼんぼりのかくれ道」「おばけのナンダッケ」シリーズ(共に国土社)、「パン屋のイーストン」シリーズ(小社)がある。日本児童文芸家協会会員。
<佐竹美保>
富山県生まれ。古典名作から最新のファンタジーまで、児童書の挿絵を中心に幅広く手がける。主なシリーズ作品に「ブンダバー」(ポプラ社)「大魔法使いクレストマンシー」「ハウルの動く城」(共に徳間書店)「リンの谷のローワン」(あすなろ書房)「魔女の宅急便」3 ~ 6・特別編(福音館書店)「パン屋のイーストン」(小社)ほか多数。
パン屋さんやパンを題材にした童話や絵本って、名作が多いイメージです。
何かをこねて形にして焼くって言うのは、大人にも子供にもわくわくする作業な気がします。
この絵本の主人公は、「かぐわし森」のイーストン。人間なのか、精霊なのか、ちょっとわかりません。挿絵のイーストンの耳が少しとがっているように見えるので、もしかしたら人間ではないのかもしれません。
イーストンはひとつだけ、魔法がつかえる。それはパンをふくらませる力だ。(引用)とあるので、イーストンはイースト菌の精霊なんじゃないでしょうか。
相棒は、火の精霊のアチネ。彼がかまどを担当してくれています。
アチネとイーストンのコンビは、森の動物たちや、妖精(?)たちのために、毎日パンを焼いています。
あるとき、イーストンは、「麦ばあさん」の娘、エッピと知り合います。麦ばあさんは、麦畑に力を与える、魔女のような妖精のような存在です。どうもエッピにもその力があるようです。
でも、エッピは、ちょっとへそまがりで、他人に対してトゲトゲしてしまう性格のようです。
イーストンは、それを察して、彼女にやさしく接します。なぜなら、麦ばあさんの力のおかげで、いい小麦が手に入り、パンが焼けるからです。
イーストンのお店は評判がよく、ふくろうさんたちがパーティーのためのパンを注文しに来るほど。けれど、その大事な日の前日に、突然森にふしぎな精霊がやってきました。それは、「つむじ雨」。つまり台風だったのです。
あまりにも巨大な台風に、イーストンの家も水びだし。大切な小麦粉も全部ダメになってしまいました。
しょげるイーストン。でも、そのとき……
という、お話。
挿絵は佐竹美保先生。大魔法使いクレストマンシーシリーズをはじめとして、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの本の挿絵で有名です。細密で、かわいくって動きのある、チャーミングな絵です。
また、装丁も美しいのでインテリアのように飾る収納をするのもおすすめ。
文章は平易で読みやすく漢字にはすべてルビがふってあり、小さなお子様が物語を読み始めるのに最適です。ボリュームがあるので、小学校低学年から。
登場人物はみんないい人で、最初はギクシャクしていても、だんだん仲良くなっていく過程は、読んでいるだけで心が和みます。挿絵はフルカラーで、読み聞かせをしても楽しいでしょう。
ストーリーは正統派の児童向けファンタジーです。ツンツンして意地悪そうに見えた子が実は優しい子で、とか、偏見なく人と接していたイーストンは困ったときにいろんな人たちに助けられる、とか、子供向けの童話で大切な話が詰まっています。
途中で出てくる台風こと「つむじ雨」も、悪者としては出てきません。ついうっかり、大きすぎる台風でイーストンたちを困らせましたが、台風が運んできた水が森を豊かにすることはきちんと説明されていますし、つむじ雨が去っていくシーンではきれいな虹がかかっています。物語の登場人物が全員、なんらかの形で「欠かせない人」として描かれており、やさしい世界観を作っています。
麦からどうやってパンができるのかも物語にそって説明されており、パン屋さんの完成形のパンしか知らないお子様の食育にもなりそう。
パン屋のイーストンはシリーズ化されていて、他にも何冊か刊行されているようなので、今後も紹介して行きたいと思います。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はいっさいありません。小さなお子様へのプレゼントにも、ご自分で週末やお風呂上りに読むのもおすすめです。おいしいパンと、あたたかい紅茶と一緒にぜひどうぞ。
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