【魔法の庭ものがたり】魔女の家を相続できる?ふしぎな家と、ほのぼのハーバルライフ。【ハーブ魔女のふしぎなレシピ】【小学校低学年以上】
有名音楽家夫妻の一人娘、ジャレットはいつもホテル暮らし。そんな彼女のもとに、一通の手紙が届けられました。魔女の家を相続できるというのです…
この本のイメージ ふんわり☆☆☆☆☆ かわいい☆☆☆☆ ハーブ豆知識☆☆☆☆
ハーブ魔女のふしぎなレシピ 魔法の庭ものがたり 1 あんびるやすこ/作 ポプラ社
初読です。
とってもかわいい、ファンタジーストーリーです。作者は「ルルとララ」シリーズのあんびるやすこ先生。多作な方です。
有名音楽家夫妻のひとり娘、ジャレットは、世界中を公演しながら旅する両親と一緒にホテル暮らしをしながら暮らしています。ジャレットには定住する家がありません。ホテルで暮らしながら、学校にも行かず、ホテルで勉強しています。
そんな彼女のもとに、一通の手紙が届きます。
それは、遠縁の魔女トパーズが死に、彼女の家の相続人としてジャレットが選ばれたというもの。けれど、それは正式ではなく、「家に気に入られる」と言うテストに合格したら、なのです。
さて、「家に気に入られる」とは? そして、はたしてジャレットはトパーズの家を相続できるのでしょうか?
ハーブガーデンつきの魔女の家、すごい。なんてうらやましい!ターシャ・テューダーの生活にあこがれているわたしには、これ以上ないほどの理想的な暮らしです。
それに、「家に相続魔法がかけてある」設定が面白い。
ずっとホテル暮らしで座学しかしてないジャレットは、家でひとりで暮らしながら、机上の知識だけでなく、じっさいにいろんなことをやってみて、学んで成長してゆきます。
最初は朝ごはんも作れなかった彼女ですが、テスト期間の間にいろんなことができるようになっていくのです。そんな彼女を、厳しいながらやさしく導いてくれる相続管理人、ガーディ。
ジャレットのいいところは、打たれ強くてポジティブなところ。彼女のルールで「失敗は三回まで」と言うのがあり、三回までの失敗なら落ち込まなくていい、どんどんやればいい、というものです。四回目になったら、落ち込む。
演奏家の両親の教えなのですが、いいですよね。子供には反省も必要ですが、それ以上にこわがらずにチャレンジするのも大切です。なので、ジャレットは、テストに合格すべく、いいと思ったことはどんどん挑戦していきます。
この物語のテーマは「相手の気持ちを知ろうとする」こと。
ジャレットは、歳のわりにはしっかりしていてかしこい子供です。
けれどずっとホテルでは「お客さん」で、きょうだいのいない一人っ子でしたから、相手の気持ちを知ることが苦手でした。
魔女の家で一人で暮らしながら、彼女はそれを学んでゆくのです。
捨て猫たちをひろい、猫たちのしてほしいことを想像したり、家について考え、家の持ち主や家がどうしてほしがっているのかを考えたり。
そして、少しずつ正解に近づいてゆきます。
わたし事で恐縮ですが、わたしはオンラインゲームのサポートを長らくやっています。この本を読んでいて、この仕事を始めたときのころを思い出しました。
いずれは、ITのカスタマーサポートは人間がやるのではなく、AIがやる仕事になるでしょう。わたしの経験や知識などは、いずれ役に立たないものとなって行くと思います。
けれども、わたし自身のなかには、貴重な財産としてあって、それはやはり「ユーザーの気持ちを知ろうとする」ことに尽きるのです。
同じシステムでも、相手の受け取り方はさまざまです。解消したいお困りごともさまざまです。それらに寄り添うことがサポートの勤めだと思っています。
わたしは、自分でも自覚のあるHSPなので、失敗をおそれますし、基本的に怖がりです。ジャレットのように失敗を恐れずガンガンやるというのがどうしても苦手です。
と言うのも、ITサービスと言うのは少しのほころびやバグでも大変大きなトラブルになることが多く、その波を最初に引き受けるのがサポート係だからです。
けれども、その「お問い合わせ」が必ずしも迷惑かと言うと、そうではありません。そのお問い合わせの数々が、システムの問題の原因に気づかせてくれたり、潜んでいるバグをあきらかにしたりしてくれることが多いのです。
つまり、システムと言うのは、「創る人」と「使う人」の共同作業で完成されると言っても過言ではなく、サポート係は、その双方に橋をかける仕事なのです。
わたしは、この仕事に誇りを持っています。矛盾しているようですが、自分が長年携わり大切にしてきたことは、そんなに簡単にAIに置き換わることはないとも思っています。
プログラマーは人間です。システムを作るという、特殊な作業をするプロフェッショナルです。
そして、ユーザーはふつうの人間です。
この両者のあいだに「システム」という無機物が入ります。
サポート係は、両者の間を取り持つのが仕事です。「システム」に反映された「創り手」の気持ちと、「使用者」の気持ちをつなぐのが仕事です。でも、いつもいつも上手にはできません。それでも、せいいっぱいやるのが、わたしの務めだと思っています。
無機物である「家」の気持ちに寄り添おうとしてがんばるジャレットを見て、わたしもそんなことを考えていました。
このお話、冒頭でお父さんとお母さんが退場してから、人間はジャレットしか出てこないんですよ。(ほんのりネタバレ)
でも、とっても温かな心の交流がある話です。
「魔法の庭ものがたり」は、シリーズで23冊も出ている人気シリーズらしいので、一年に一冊以上のハイペースで刊行されていたんですね。
これから楽しみに読んでゆこうと思います。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな表現はまったくありません。かわいらしく、癒されるファンタジーです。お気に入りのハーブティーとビスケットをお供にぜひどうぞ。
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