【魔法の庭ものがたり】魔法の庭を相続したジャレットのもとに、バラの谷の魔女がやってきた。ファンタジック・ハーバルストーリー第7巻【ジャレットとバラの谷の魔女】【小学校低学年以上】

2024年3月25日

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ジャレットとバラの谷の魔女 魔法の庭ものがたり 7  あんびるやすこ/作 ポプラ社

バラの季節、ジャレットのもとにバラの谷の魔女シシィがやってきました。トパーズが10年前に発注したバラのオイルを届けに来たというのです。でも、そのオイルには秘密があって……

この本のイメージ 新キャラ登場☆☆☆☆☆ バラのちから☆☆☆☆☆ 過程か結果か☆☆☆☆☆

ジャレットとバラの谷の魔女 魔法の庭ものがたり 7  あんびるやすこ/作 ポプラ社

<あんびるやすこ> 
群馬県生まれ。東海大学文学部日本文学科卒業。テレビアニメーションの美術設定を担当。作品に「だっこちゃんどこ?」「まじょのまほうやさん」「こじまのもり」シリーズなど。

 あんびるやすこ先生のハーブとアロマのハートフルストーリー「魔法の庭ものがたり」の第7巻です。初版は2010年。
 このお話は、魔女トパーズの家を「相続魔法」によって相続した少女ジャレットの成長物語。
一話完結で読みやすいのですが、どうしてそうなったのか、最初の設定をお知りになりたい方は、1巻から順番にお読みになったほうがいいでしょう。 

  第1巻のレビューはこちら

 今回のあらすじは……

 ある日ジャレットと猫たちは、物置で古い箱を見つけます。そこには「パープル・ローズ・オットー」と書かれたラベルのついたガラスの瓶に入った、不思議なバラのエッセンシャルオイル。どうやら、魔法の力があるようです。

 それは、先代魔女トパーズの親友バラの谷の魔女ローザが作ったものでした。

 さて、ジャレットのもとに内気な女性リンダがやってきます。彼女の願いは想い人とダンスパーティーで踊れるようになること。
 踊れないリンダを上手に躍らせるようになれるような薬なんて……そんな無茶な願いでしたが、ジャレットはできるかぎりは協力しようと思います。そして、マッサージオイルに思いつきで「パープル・ローズ・オットー」を1滴たらしたところ、思わぬ奇跡がおきてしまいます。

 一方その頃、スポーツの得意なスーはテニスの試合で優勝したいと願いますが、ライバルのマリーが強敵だと知って、動揺していました。スーは不思議な力のある「パープル・ローズ・オットー」をほしがりますが、拒むジャレットとのあいだで取り合いになり、瓶は割れてしまいました。

 そんなとき、バラの谷から二代目「バラの谷の魔女」として、シシィがやってきます。どうやら彼女も「相続魔法」でバラの谷を引き継いだようです。シシィは、トパーズから発注を請けた「パープル・ローズ・オットー」を届けにきたのですが……

 ……と、言うのがあらすじ。

 あんびる先生の作品の魅力は、悪人のいないやさしい世界観、子どもが日常で直面する精神的課題、主人公の成長、そして、ほのぼのとしたファンタジックなストーリーです。ふんだんに入った挿絵と、キャラクターたちのファッションも魅力です。

 今回のテーマは「過程か、結果か」

 バラの谷の魔女のローズオイルは本来は傷ついた妖精の羽の薬ですが、人間に使うと様々な奇跡が起きるオイルでした。今回は、それを使って願いをかなえることの是非、そして、努力して失敗するならばそれもすばらしい、ということを描いています。

 これは小さな子どもは、一度は悩むことです。なぜなら、小さな子どもにとって、大人が期待する結果はかなり遠く、そして努力で得られる成果は1日1日ではわかりにくいからです。

 また、この時期を努力で乗り越えることが出来ても、人生のどこかでふたたびつまずくこともありえます。
 大人の世界は結果主義ですから。

 わたしたち世代が若い頃、つまり昭和ですね、昭和の新社会人が社会に出るときによく言われる訓示に「『よくがんばりました』でほめてもらえるのは小学生まで」と言うのがありました。つまり、社会人ならがんばってあたりまえ、がんばりましたねとほめてもらえるのは子どもだけ、結果を出してようやく一人前、と言う言葉です。

 実際に、実力勝負の世界で仕事となるとそういう側面はありはするのですが、結果が出るまで頑張り続けると言うのは、なかなか結果が出ないとつらいものがあります。だからといって、がんばらなければ何も解決はしないので、そこは難しいところ……。
 「努力する」と言う過程、1日1日に充実感がなければ、「結果主義」で結果が得られなかったときに悲しみがつのるばかりです。

 「努力がむくわれなかったときにどうするか」は、このところマスコミやネットでおおいに話題になりました。これにはその人その人でそれぞれの答えがあり、「これ」という、唯一つの正解はないかもしれません。

 ただ、「努力が報われなかったとき」に感じる哀しみや辛さを緩和するすべは、「努力そのものを楽しく、やりがいのあるものにする」ことではないでしょうか。何か楽しいことやしたいことを犠牲にする努力ではなく、今がんばっている自分の生活を充実感に満ちたものにするということです。

 わたしが「子どもの勉強が楽しくなるように」との願いで、知育系の児童書をご紹介しているのも、成績を上げる近道として大量読書をおすすめしているのもそのためです。一度しかない子ども時代を、楽しみながら乗り越えてほしいのです。

 そうすれば、その後の人生も少しずつ変わってきます。努力=遊びなら、自分が思った以上に遠くへ行けるかもしれないから。

 この物語では、大切なのは結果ではなく、そこに向かう地道な努力と、自分を信じる心であることを描いています。

 ジャレットもシシィも先代魔女に比べたらまだまだ半人前。
 しかし、周囲の人たちはシシィが魔法を相続すればすぐにローザのように活躍できると期待してしまったため、シシィは潰れそうになっていました。たとえ努力家のシシィでも、一足飛びにはできません。

 でも、相続魔法で選ばれたと言うことは、その素質はあるのです。

 「ローマは一日にして成らず」。

 トパーズとローザの期待にこたえるべく頑張るふたりの努力と友情は、すがすがしい気持ちにさせてくれます。

 また、かぐわしいバラの香り、エッセンシャルオイルの使い方、そして簡単に作れる即席のローズウォーターの作り方についても詳しく書かれています。

 ※ただし、猫やうさぎにはエッセンシャルオイルは禁忌なので、実際の生活の場合、気をつけてください。調べたところ、ローズやラベンダーはそんなには害がないようなのですが、やはり避けたほうが無難だとは思います。こちらは、よくお調べになってください。物語の動物たちは、魔法の動物たちなんだよってことで。(人間の言葉をしゃべりますしね……)

 バラのオイルは高価なので、実際には子どもが使わせてもらえることはあまりないかもしれませんが、特別なときの香水替わりにちょっぴり使用するのもいいかもしれません。

 面白くて、ハーブの知識が得られ、心も成長する━━魅力いっぱいの児童向けファンタジーです。植物や香りが大好きな女の子なら、おすすめです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。誰かが特別に傷ついたり、罰を受けたりするようなお話ではありませんが、大切なことを子どもにもわかりやすく描いています。「結果主義」だと、ついつい近道を探してしまいますが、努力する過程で得られる知識や友情は人生を豊かにします。

 読後は、バラのジャムを入れた紅茶でティータイムとかだとおしゃれですね。

 

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