読みながらプログラミングについて学べる新感覚児童小説第二弾。親子で楽しんで!【小学校中学年以上】

2024年1月29日

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プログラミングガールズ!2  ステイシア・ドイツ/作 美馬しょうこ/訳 高橋由季/絵 監修/石戸奈々子

 ソフィアはしっかりもののみんなの「お姉さん」。今度の土曜日には、仲間たちとハッカソンに参加することになりました。ところが、トラブル続出で、このままではソフィアのせいでチームが失格になるかもしれないのです……

この本のイメージ ためになる☆☆☆☆☆ 友情☆☆☆☆ プロジェクトマネジメント☆☆☆☆

プログラミングガールズ!2  ステイシア・ドイツ/作 美馬しょうこ/訳 高橋由季/絵 監修/石戸奈々子

 小学生の必須科目に「プログラミング」が入る時代になりました。
なんと大変な世の中でしょう。ちなみに、わたしはソフトウェア開発のお手伝いを何年もやってきていますが、プログラム自体はできません。でも、今後は勉強していかないといけないんでしょうね……時代の流れ的に。  

 そんな、新時代の児童小説がこれ。
読んでいるだけで、プログラミングについて学べる「プログラミングガールズ!」のシリーズ第二弾です。
第一巻の「ルーシー、なぞのメッセージを追え」があまりにもすばらしいのでまず読んでいただきたいのですが、この本もテクノロジーに対するあこがれいっぱいの楽しい本です。(「ルーシー、なぞのメッセージを追え」は本当に、わかりやすく「プログラミングとはこういうものだ」と物語によって説明してあり、親子で読むのに最適です)

 今回のテーマは、「プロジェクトマネジメント」。プログラミングをチームで行うさいに必要な知識です。 だから、プログラミングの基礎を覚えたのち、ちょっと先に進んだテーマになります。でも、プログラムコードを書く技能がついてもこのあたりの能力がつかないと、仕事をしていくうえで困るので、大切なテーマです。(と、とあるプログラマーが言っておりました)

 ソフィアは、スポーツが大好きな六年生。(ミドルスクール(中学校)一年生くらい)
アメフト部のマネージャーをやりながら、プログラミングクラブにも掛け持ちで所属しているアクティブな女の子です。家では、しっかりもののお姉さん。みんなのまとめ役で、頼りになる存在です。

 プログラミングクラブの顧問クラーク先生のすすめで、ソフィアたちは土曜日にハッカソンに参加することになりました。ハッカソンとは、個人またはチームで、一日特定のテーマでプログラミングして、協力したり競ったりするイベントです。
ソフィアは、楽しみでワクワク。

 けれど、共働きで忙しいママは話をしても、なんとなく上の空です。それでも、ハッカソンに見に来て欲しいと頼むソフィア。
ところが…

 この後のトラブり方がリアルな展開です。見に来て欲しいと頼んだはずなのに、ママはあまり重大に考えていない。そのうえ、両親の予定が土曜日にかちあって、二人とも家にいないことになってしまった。
ママがハッカソンを見に来られないどころか、妹たちの子守や家事のためにソフィアが参加できなくなるかもしれないのです。
そして、あとから参加者を変更できないために、ソフィアたちのチームは全員失格になるかもしれなくなり大ピンチ。

 このメンバー変更の問題にもタイムラグがあって、わずかな時間だけどソフィアが仲間たちに相談するタイミングはあったのです。が、ソフィアが「これは自分個人の家庭の問題」と思い、自分でなんとかできる、またはママがきっとわかってくれてベビーシッターを手配してくれる、と思い込んだためにタイミングを逸してしまうのです。

 親子の会話の成り立たなさが、たいへんリアルです。
パパとママの言葉にはパターンがあって、「あなたの事は大切に思っているし、あなたがどんなにプログラミングクラブの活動を大切にしているかはわかってる。でもどうしようもないの」「パパとママには大事な仕事があって、これはどうしようもないんだ」
「今からでも話せば、お友達もわかってくれるわよ」(失格なのに?)

 と、わりと言い返せないけど納得行かない言葉の数々。つまり、この家においてソフィアは、パパとママに不測の事態が起きたときの「両親のスペア」としての役割が固定されており、両親の予定の中に「保険」として常にソフィアが組み込まれている状態なのです。
これは、予定の立て方としてまずい……非常にまずい……と言うのは、アホのわたしでもわかります。
 
すでに両親の予定は「余白」がなく、ぎりぎり限界まで詰まっています。あふれたときには「ソフィアがなんとかしてくれるはず」とあてにされている。けれど、子供にだって動かせない予定はあるし、ある日突然病気になることもあるわけですよ……

 ソフィアの判断がすべて間違っているわけではないんです。
彼女は、トラブルがおきたとき、まずは「直属の目上の人」(つまりパパとママ)に相談して、問題の解決を頼んでいます。そして、友達たちには「私的なトラブルだから」と言う理由で、事情を話しません。日本人なら100点満点の対応です。

 ところが、パパもママも、「あなたの気持ちはわかるけど、これはどうしようもないこと」と、何の解決策もなく、問題をまるごと戻してきます。これは、実際に社会でとてもよくあることなのです。
目上の人に問題を預けるのが筋なのですが、預けている間に事態は解決せず、ただ止まったままで戻ってくる……戻ってきた頃には問題が悪化している

 ついにソフィアは、仲間たちにすべてを打ち明けます。

 そして……

 これが前半の物語。

 後半は、無事、ハッカソンに参加できたソフィアたちの奮戦が描かれます。
ポイントとしては、ほんのちょっとしたスペルミスや書き間違いでもプログラムは動かなくなるので、細かくコードを確認する必要があること、うまくいかないときに、いちいちゼロからやり直すのではなく、自分たちのプロジェクトの方向性を信じて、どこが間違っているか(バグ)のありかを探ることの大切さが描かれています。

 第二巻は、第一巻より高度になりましたが、ソフトウエア開発について大切なことが物語として、わかりやすく描かれています。
チームでひとつのソフトウエアを長い期間開発していくうえで、必要なことがたくさん詰まっているだけでなく、女の子たちのわくわくスクールライフ物語としても完成度が高いので、ぜひ、親子でお読みいただきたいです。

 今回、ハッカソンパートに登場するテックタウンの最高技術責任者アナ・カマットさんがとってもかっこいい。クラーク先生もオシャレで素敵ですし、全編に「プログラミングする女子はかっこいいよ!」と言うメッセージが込められていて、物語にありがちなボサボサ頭でぶあついレンズの眼鏡、暗い色のジャージで猫背みたいなステレオタイプの女の子は出てきません。つまり、この本には明確な「目的」があるんです。

 優秀なプログラマーを育てるには、まずあこがれてもらうところから。

 こんなときにアメリカの底力を感じてしまいます。「プログラミングガールズ!」シリーズは全4巻。随時ご案内していきます。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。さわやかで明るいスクールライフものです。読み物として楽しみながら、ソフトウェア開発について大切なことを学ぶことが出来ます。第一巻とあわせてぜひどうぞ。

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第一巻のレビューはこちら

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