【戦争をやめた人たち】クリスマスにおきた奇跡。実話を描く絵本【1914年のクリスマス休戦】【小学校低学年以上】【子どもから大人まで】
今から100年前の1914年、第1次世界大戦が始まりました。このお話は、戦争が始まった五ヵ月後、ドイツ軍とイギリス軍のあいだに本当におこった12月24日のできごとです。
この本のイメージ 実話☆☆☆☆☆ 平和☆☆☆☆☆ クリスマス☆☆☆☆☆
戦争をやめた人たち 1914年のクリスマス休戦 鈴木まもる/文・絵 あすなろ書房
<鈴木まもる>
1952年、東京都に生まれ。「黒ねこサンゴロウ」シリーズで赤い鳥さしえ賞を、『ぼくの鳥の巣絵日記』で講談社出版文化賞絵本賞を受賞。
鈴木まもる先生の新刊絵本。初版は2022年5月。この本のあとがきの絵を描いているときに、ウクライナ侵攻がはじまってしまったそうです。
作家やクリエイターは、一種の予知能力のようなものがあって、歴史的な事件の少し前くらいに、それに関係することを創作してしまうことがよくあります。感受性のするどさのなせるわざなのです。
この物語は、第一次世界大戦中に、ドイツ軍とイギリス軍のあいだで本当に行われた「クリスマス休戦」を描いています。
第一次世界大戦勃発からおよそ五ヶ月が過ぎた1914年12月のこと
クリスマスイブの夜にドイツ軍の塹壕から、「きよしこの夜」を歌う声が聞こえてきました。
それは、ドイツ語でしたが、イギリス人にもメロディーは伝わりました。
イギリス人兵士たちも「きよしこの夜」を歌いました。
いつしか、彼らはクリスマスの歌を歌いあい、やがて一時的な停戦状態になったそうです。
この奇跡的なできごとは、それぞれの国の宗教が同じだったりなど、幸運が重なったことでおきたのかもしれません。しかし、本来、人間は争うのが嫌いな生きもので、お互いにわかりあい、手を取り合いたいと思っていることを示しているようにも思えます。
近代の戦争は複雑で、このような幸福なことが起きるとは思えなくなってきましたが、人がもっている「善性」を信じたい、そんな想いはあります。
今年の2月には、世界中のアスリートが北京に集い、あたたかく交流していたのですから。
本当に大切なもの、本当に美しいものはあまりにも儚く、そして、現実にするのは困難です。けれども、名もない、力のない人々が、少しでも守られ、生き延び、幸せに生きられる世界になってほしい。
どうすれば、そんな世界になるのか、まったくわからないのですが、しかし、かつてこんな奇跡がおきたのだと知ると、まだまだ人類は捨てたものではないんじゃないか、とも思えてきます。
この本は、漢字混じりの文章で、絵本としては文章が多めですが、すべての漢字に振り仮名が振ってあります。ひとり読みなら、小学校低学年以上、就学前のお子さまには読み聞かせがおすすめ。大人が読んでも、考えさせられるものがあります。
もうすぐクリスマス。
ひとりでも多くの人が、おだやかで幸せなクリスマスをおくれますように。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
1914年のクリスマス休戦のことを詳細に描いた実話絵本です。
非常にデリケートなテーマを取り扱っているので、お子さまにどのようにおあたえになるかは、保護者の方がそれぞれでご判断されてください。
現実にあったことだと思うと、人類の未来に希望を感じます。
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