【オンネリとアンネリのおうち】かわいい女の子二人の夢の家。北欧からやってきた名作児童文学です。【小学校中学年以上】
アンネリは、おとうさんとおかあさんが別々に暮らしていて、学校でもあまり友達がいないけど、オンネリという大親友がいるのでだいじょうぶ。そんなオンネリも、大家族すぎておかあさんに忘れられがちで、家では居場所がありません。そんなふたりが、ある日、封筒を拾います……
この本のイメージ ファンタジー☆☆☆☆☆ 友情☆☆☆☆☆ 家族愛☆☆☆☆☆
オンネリとアンネリのおうち マリヤッタ・クレンエミ/作 マイヤ・カルマ/絵 渡部翠/訳 福音館書店
<マリヤッタ・クレンエミ>
1918~2004年。フィンランドの児童文学作家。1946年、「赤蟻プッケの冒険」でデビュー。やがて30作品を著し、そのうち5作品で自国フィンランドを始め北欧の児童文学賞を受賞。また、200作品にものぼる海外児童文学の翻訳等も手掛けた。
子供の頃、自分だけの「秘密基地」が欲しいと思った事はありませんか?
男の子たちは、よくそういったのを友達どうしで作っていたのではないでしょうか。
女の子だって「秘密基地」が欲しいんです。けれど、男の子たちのように掘っ立て小屋とかじゃなくて、もう少しかわいいやつ。それに、ペットだっていたほうがいい……
そんな、小さな女の子の夢が、全部詰まったお話です。
1966年、フィンランドで発表された作品を2015年に翻訳し出版された本です。2014年にフィンランドで映画化され、日本でも2018年に公開されました。
小さな女の子たちの友情と、家族愛のハートフルストーリーだと思って手に取ったのですが、読んでみたらけっこう本格派の日常系ファンタジーでした。
主人公のアンネリは、お金持ちの子どもですが、お父さんとお母さんが別居しており、ふたりの間を行き来するような生活をしています。二人とも、仕事やお付き合いで忙しそうで、アンネリのことは、ツンツンしたお手伝いさんにまかせっきり。
アンネリの大親友、オンネリは貧しい大家族の娘です。9人きょうだいとお父さんお母さんが小さな家でぎゅうぎゅうに暮らしているので、真ん中っこのオンネリは、いつもお母さんに忘れられがち。
そんなふたりが、ある日、道で封筒を拾います。そこには「正直な ひろいぬしさんに さしあげます」と書いてありました。さて、正直なふたりは、それを交番に届けます。なんと入っていたのはお札の束がふたつ。
そして、これまた正直なおまわりさんは、ふたりにこれはふたりのものだから、もらっておきなさいと言います。(おそらく、当時のフィンランドの法律ではそうなんでしょう)
それにしても、このおまわりさんはいい人です。現代の現実にはなかなかこうはゆかないでしょう。でも、これは伏線なんです。このおまわりさんの親切さと正直さが、あとあとで、ちゃんと生きてきます。
さて、お金を拾ってしまったふたりは、そのお金をひろったあたりを歩いていると、可愛らしい小さなおうちの前を通ります。そこから出てきた、バラの花がたくさんついたエプロンを着た、上品なおばあさんに声をかけられ、ジュースでもてなされながらお話を聞くと、この家を売りに出すというお話でした。
おばあさんの名は薔薇乃木夫人。自分が暮らすかわいいおうちを立てたはずなのに、どういうわけか手違いで、小さな女の子が二人で暮らすおうちを立ててしまったのだと言うのです。
だから、この家は仲良しの小さな女の子に売りたいのよ。でも、小さな子が家を買うほどのお金をもっていることなんて、そうそうないわよね。宝くじがあたるとか、遺産を受け継ぐとか……お金を拾うとか。
と、意味ありげな薔薇乃木夫人。
そうだ!わたしたちにはお金があるわ!と、気づいたオンネリとアンネリは、その場で、薔薇乃木夫人から、このおうちを買い取ります。そして、夫人は喜んでスーツケースを持って旅立ってゆきました。
さてさて。
オンネリとアンネリは、手に入れたおうちを探検します。
そこは、家具も食べ物も、おもちゃもお洋服も、ペットのインコも、なにもかも二人ぶん、全部揃った夢の家だったのです!
何かの罠なんじゃ……って思ってしまいますが、これはオカルトでもホラーでもありません。安心してください。夢いっぱいのメルヘンファンタジーですから。
ふたりは大喜びですが、それぞれのお父さんとお母さんが許してくれるかどうか、心配になってきます。
ところが、アンネリの両親は、家を閉めて旅行に行ってしまっていました。それぞれがアンネリは相手が連れて行ったものと思い込んでいたようです。置き去りにされて呆然とするアンネリ。
オンネリの家は、きょうだいが多すぎてしっちゃかめっちゃかです。オンネリがアンネリと一緒に暮らしたい、とお母さんに許可をもとめますが、いそがしすぎるお母さんは、なんのことかよくわからず、事情を理解しないまま、適当に許可してしまいます。
と、言うわけで、晴れて二人のおうちで仲良く暮らすことになったオンネリとアンネリ。
これは、二人が買ったふたりだけのおうちなので、オンネリとアンネリは、とっても大切に、丁寧に暮らします。家事もふたりでちゃんとやるのです。だって、自分のものなんですもんね。
ふたりで楽しく暮らしていると、不思議なお隣さんが訪ねてきます。ノッポティーナさんとプクティーナさんの姉妹です。このふたりは、妖精のような、魔法使いのような姉妹で、お庭でたくさんの不思議なものを育てていたのでした。
ノッポティーナさんとプクティーナさんが出てきてはじめて「ああ、これ、ファンタジーだったんだ」とわかりました。それまでは、ファミリーストーリーなのかなと思って読んでいたんですけども。
この不思議なお隣さんと、そして、もう片方のお隣さん、未亡人のウメ夫人との出会いでオンネリとアンネリは事件に巻き込まれてしまいます。けれど、ふたりの大活躍でみごとに事件は解決し、ハッピーエンド。
と、いうのがあらすじ。
ああ、こういうふうに終わるのか!とびっくりしますが、でも、何もかもまるっと解決して、みんな幸せになる結末です。
この「オンネリとアンネリのおうち」はフィンランドでは大人気で、本国では全4冊出版されているようです。日本では、福音館書店から、シリーズ2冊が出版されています。(どうぞ続きを……)
こんなかわいらしいお話が、あったんですね。知らなかったなんて、今までほんとうにもったいなかった!
字はほどよい大きさで読みやすく、漢字には振り仮名がふってあります。小学校中学年からの本ですが、かしこい子なら低学年からでも、根気よく読めばだいじょうぶ。もちろん、読み聞かせにも。
小さな女の子なら、大喜びまちがいなしの華やかで愛らしいファンタジーです。プレゼントにもおすすめ。
また、大人の女性の和みタイムの読書にも。
なんともいえない、ふんわりとあたたかい気持ちになれるお話です。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はまったくありません。華やかで、かわいくて、ほのぼのとした楽しいお話です。ふたりのための小さなおうちがとにかくかわいい。
映画も、ふたりの女の子と、かわいいおうちが、カラフルで華やかで、最高におしゃれ。
小さなお子様から、大人の女性まで、乙女心をお持ちなら誰でも楽しめる、メルヘンファンタジーです。
週末の午後、お気に入りのハーブティをお供にぜひどうぞ。読み終わったら、映画もね。
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