【オタバリの少年探偵たち】一度は読みたい、名作児童文学。友情と冒険とスリルいっぱいの少年冒険小説。【小学校高学年以上】

2024年3月17日

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オタバリの少年探偵たち  セシル・ディ=ルイス/作 脇明子/訳 岩波少年文庫

ぼくたちがみんなで戦争ごっこで遊んでいるとき、運悪くニックの蹴ったボールが教室の窓ガラスを割ってしまった。弁償するには四ポンド十四シリング六ペンス。みんなで遊んでいたときに割ったんだから、みんなで弁償しよう。ぼくたちは、頑張ってお金を稼いだのだけど……

この本のイメージ 友情☆☆☆☆☆ 推理☆☆☆☆☆ 大冒険☆☆☆☆☆

オタバリの少年探偵たち  セシル・ディ=ルイス/作 脇明子/訳 岩波少年文庫

<セシル・ディ=ルイス>
セシル・デイ=ルイス(Cecil Day-Lewis, CBE, 1904年4月27日~ 1972年5月22日)は、アイルランド生まれのイギリスの詩人・作家・推理作家である。1967年から1972年までイギリスの桂冠詩人。別名ニコラス・ブレイク(Nicholas Blake)。息子は俳優のダニエル・デイ=ルイス。詩人のオリヴァー・ゴールドスミスは母方の傍系の親類にあたる(wikipediaより)。

<脇明子>
脇 明子(わき あきこ、1948年2月6日~ )は、日本の英国ファンタジー研究者・翻訳家。ノートルダム清心女子大学名誉教授。祖母は北原白秋門下の歌人・脇須美。母の脇和子とは絵本の共著がある。夫は児童文学研究者、翻訳者の歌崎秀史。
香川県出身。高松高校を経て、1971年東京大学教養学科科学史・科学哲学専修卒業、同大学院比較文学比較文化専修に進み、修士論文として泉鏡花論を『幻想の論理』として刊行。その後はデ・ラ・メア、ル=グウィンなど英語圏のファンタジーに専門を移行し、翻訳を多く刊行している。ノートルダム清心女子大学助教授、教授を歴任(wikipediaより)。

 かなり有名な児童文学ですが、恥ずかしながら初読です。原題は The Otterbury Incident.原書初版は1948年。日本語版初版は瀬田貞二版が1957年。脇明子先生の新訳が2008年です。

 スタジオジブリの宮崎駿監督が、「本へのとびら」で紹介していることでも知られています。

 「エーミールと探偵たち」や、「名探偵カッレくん」「オオバンクラブ物語」、「少年探偵団」などが好きなら、まちがいなくおすすめ。
そして、この中で、少年ミステリ活劇としては、最も本格的で面白いと思います。

 お話は……

 主人公ジョージたちは、テッド組とトピー組に分かれて戦争ごっこで遊ぶ悪ガキたち。ある日、ニックが蹴ったボールが校長室の隣の教室の窓ガラスを割ってしまい、弁償しなければならなくなりました。

 でも、リーダーのテッドは、「みんなで遊んでたときに蹴ったボールがガラスを割ったのだから、みんなで弁償しよう」と言い、皮肉屋のプルーン以外は大賛成。テッドとトピーは一時休戦して、ニックのためにお金を稼ぐことにしました。

 ガラスの弁償費は高額だったけれど、みんなで見事に目標額に達成。ところが、その大事なお金が、何者かに盗まれてしまい、デッドが濡れ衣をかけられてしまいます。

 テッドの濡れ衣をはらすために、事件の捜査を始める少年たち。
そうしているうちに、いつのまにか、悪者たちの大犯罪を知ってしまうのです……

 というのが、あらすじ。

 「名探偵コナン」など、小さな子どもが(正確にはコナンは子どもじゃないけど)大人たちの大犯罪に立ち向かう話が好きなら、絶対に夢中になるはず。
 立ち上がりが少しわかりにくいですが、第一章を読めたら、あとはラストまで一気に読めます。

 こんな面白い児童文学を今まで知らなかったのが、もったいないくらい。

 謎解きや展開が面白いのもさることながら、物語のなかには、子どもにとって大切な言葉やシーンもたくさん詰まっています。

 ぼくは体罰に効き目があるなんて、信じちゃいない。信じている子どもがいたら、お目にかかりたいもんだ。(p52)とか、イギリスの法律では、何びとも有罪と証明されるまでは無罪であり、罪を証明する義務は検察側にある(p117)とか。

 推定無罪ですね。ささいなことでも炎上しがちな昨今、子どもにこれを教えてくれる本は貴重です。
 また、泥棒の疑いをかけられて仲間たちたちから敬遠されるテッドに、ニックが駆け寄り腕を組むシーンにはぐっときました。

 昔の少年小説や、児童文学には見られたのですが、友だちの危機にみんなで力をあわせるお話は、ありきたりかもしれないけど、やっぱり胸が熱くなります。

 とくに、「オタバリの少年探偵たち」の少年たちは、絶体絶命のとき二つの選択肢があると、必ず踏み込むほうを選ぶのです。物語のキャラクターだとわかっていても、尊敬せざるをえません。

 あれです、さいきんは、とんと聞かなくなったことわざですが、
 「義を見てせざるは勇なきなり」と言うやつ。

 中盤のテッドの濡れ衣捜査に入ってからは、読むのをやめられません。ぐいぐい引き込まれながらラストまで読んでしまいます。そのあいだに、次から次へと危機が襲ってくるのですが、知恵と勇気で乗り切ってしまうのです。おそるべき子どもたち。

 本格派で、正統派で、さわやかな少年小説です。主人公が少年たちですが、探偵小説が好きなら女の子にもおすすめ。大人も楽しめる、読み応えたっぷりの小説です。

 文章は読みやすく、難しい漢字には振り仮名がふってあるので、小学校高学年から。イギリスの時代背景などを、冒頭で脇明子先生がわかりやすく説明してくださっています。

 読み終わると、わくわくとした元気が沸いてくる名作です。読書感想文の題材にもおすすめ。雨の季節は、さわやかな冒険小説でスカッとしましょう。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 アクションシーンがあり、怪我をする場面もあるのですが、気をつけて書かれているので残酷ではありません。「そういうシーンがあるのだな」と身構えていれば大丈夫なら、おすすめです。
 正統派で本格派の、ミステリー&アクション冒険小説です。
 週末などに、お気に入りの紅茶とともにお楽しみください。

 

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