【はくぶつかんのよる】夜、博物館では何が起きる? 美しく幻想的な絵本【4歳 5歳 6歳】
その夜、コンフリュエンス博物館は、しずかな眠りについてついていました。でも、黄色いチョウが羽ばたいたことがきっかけに、しずかだった博物館に不思議なざわめきがおこります……
はくぶつかんのよる イザベル・シムレール/作 石津ちひろ/訳 岩波書店
<イザベル・シムレール>
フランス生まれ。ストラスブールの美術学校出身。絵本作家、イラストレーターとして活躍するかたわら、アニメーション作品も数多く手がける。美術館や博物館とのコラボレーションで、子どもたちのための教材を作ったり、ワークショップを行ったりしている
<石津ちひろ>
絵本作家、詩人、翻訳家。愛媛県生まれ。早稲田大学文学部仏文科卒業。3年間フランスに暮らす
美しい絵本です。原題はCette Nuit-La’…Au MuSee.(その夜、ミュージアムで。)原書初版は2015年。日本語版初版は2017年です。
「本の探偵」赤木かん子先生によると、絵本を読む子どもは、おおまかに分けると、物語好きの子と図鑑好きの子がいるらしいです。
わたしは、自分が物語派なので、どうしても図鑑系のご紹介が手薄になります。また、絵柄にこだわる子もいると思うのですが、わたしの好みからはずれたものは、どうしても取りこぼしてしまったりします。
でも、今回の本は、物語派の子も、図鑑派の子も満足する、そして芸術的なまでに美しい本なのです。
物語、図鑑、そして美! 三拍子揃った絵本です。最強。
おはなしは……
川のほとりにある博物館(コンフュリュアンス博物館)で。
ある夜、黄色いチョウの標本が動き出し、博物館のなかを羽ばたきました。
それを合図に、次々と昆虫標本や、化石、動物の剥製、さまざまな展示品たちが目を覚まし、博物館の中を自由に動き回ります。
それは夢のようなひととき。
朝日が昇ると、みんなは、それぞれの場所にもどりました。
……と、いうのがあらすじ。
舞台は、フランスの実在の博物館、コンフュリュエンス博物館。とても、前衛的でおしゃれなデザインの建築です。
この博物館の展示品たちが、夜、人間が知らないうちに、動き始めて楽しいお祭り騒ぎをします。
お話としては単純なのですが、美麗なイラストで、それぞれの展示品が克明に描かれており、図鑑好きも美術好きの心もそそられます。
いちど読んでしまえばおしまい、の絵本ではなく、どの絵も生き生きとして美しく、隅から隅まで楽しめるんです。
絵本といえば、かわいらしい絵と楽しいお話、できれば教訓的な、と言うのがセオリーなのでしょうが、
これは、ただただ、「美」の力が強い本。
非常に稀ではありますが、たまに、こういう、美しい絵の絵本が好きな子がいるんですよね。
小さい子だと、あまりにも美の力が強いと「怖い」と感じてしまい、かえってよろこばれないことも多いのですが、人数が少なくても、こういう絵が好きな子がいるのも確かなので、美しい絵本を見ると、義務感のように紹介してしまいます。
大人が読んでも、心が癒される美しさです。
たまには、こういう絵本もいいですよねえ。
小さな子どもだけでなく、博物館や美術館の独特な雰囲気が好きな方にもおすすめです。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
おすすめです。図鑑の魅力も、ファンタジー物語の魅力もあり、そして、芸術としても美しい、三拍子揃った最強絵本です。
感受性の鋭いお子さまや、美術館博や博物館が好きな方に。
秋の夜のなごみ本としてもおすすめです。お風呂上りに、ハーブティーかコーヒーとともに。
美術館をテーマにした絵本には、こんなのもあります。
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