【大どろぼうホッツェンプロッツ】プロイスラーの名作。少年たちと大泥棒の大冒険!【三たびあらわる】【小学校中学年以上】

2024年3月27日

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大どろぼうホッツェンプロッツ 三たびあらわる  プロイスラー/作 トリップ/絵 中村浩三/訳 偕成社

晴れて釈放されたホッツェンプロッツは、泥棒家業を廃業しました。今度こそ、堅気になろうとしたホッツェンプロッツですが、逆に世間はそうは思っていないようで……?少年たちとホッツェンプロッツの大冒険が始まります。

この本のイメージ 腕白少年☆☆☆☆☆ 大冒険☆☆☆☆☆ じつはファンタジー☆☆☆☆☆

大どろぼうホッツェンプロッツ 三たびあらわる  プロイスラー/作 トリップ/絵 中村浩三/訳 偕成社

<オトフリート・プロイスラー>
オトフリート・プロイスラー(Otfried Preusler、1923年10月20日~2013年2月18日)は、チェコスロバキア生まれのドイツの児童文学者。長年教師をしながら童話を次々に発表する。代表作に「大どろぼうホッツェンプロッツ」「小さい魔女」「クラバート」など。本国ドイツをはじめ世界各国で多くの文学賞を受賞している。

<フランツ・ヨーゼフ・トリップ>
フランツ・ヨーゼフ・トリップ(Franz Josef Tripp、1915年12月7日~1978年2月18日)は、ドイツのエッセンに生まれる。新聞関係の仕事をしながらハインリック・C・ベランに師事、1949年に独立。ドイツの画家、イラストレーターとして多くの児童書の挿絵を描いた。息子は芸術家ヤン・ペーター・トリップ。

<中村浩三>
中村 浩三(なかむら こうぞう、1917年(大正6年)7月10日~ 2008年(平成20年))は、日本のドイツ文学者、翻訳家、早稲田大学名誉教授。 島根県生まれ。1944年早稲田大学文学部独文科卒。早稲田高等学校講師、1951年早大理工学部助教授、57年教授、68 ~74年語学教育研究所長、88年定年退任、名誉教授。1991年「少年ルーカスの遠い旅」で産経児童出版文化賞受賞。ドイツの児童文学を多く訳し、「大どろぼうホッツェンプロッツ」三部作がロングセラーとなっている。

 児童文学界のロングセラー「大どろぼうホッツェンプロッツ 三たびあらわる」です。原題はHotzenplotz3.ドイツでの初版は1973年。日本語版初版は1975年です。

 最初のお話「大どろぼうホッツェンプロッツ」から、完全にお話が続いているので、まずは第1巻からお読みになることをおすすめします。第1巻のレビューはこちら

 今回のお話は……

 ついに泥棒家業から足を洗い、堅気になろうと決心したホッツェンプロッツ。ところが、逆に世間がそれを信じてくれません。
 正式に釈放されたはずなのに、村の人たちから追いかけまわされます。

 そんなとき、千里眼師のシュロッターベック夫人の水晶玉がなくなってしまいました。「きっとホッツェンプロッツのしわざだ」とディンペルモーザー警部は指名手配しますが、カスパールとゼッペルはホッツェンプロッツにアリバイがあることを知っていました……

 ……と、いうのが今回のあらすじ。

 第1巻と第2巻を読んだ人は、このお話にはまだ解決していない問題がいくつかあることに気づいていると思います。
 妖精アマリリスの行方と、シュローターべック夫人の愛犬ヴァスティの運命です。

 ヴァスティは、シュローターべック夫人がおぼつかない魔法をかけて失敗した結果、ワニになってしまったダックスフンド。ワニの姿をしているのに、ワンワンと鳴くのです。ヴァスティはすごくいい子なので、幸せになってほしいですよね……

 「大どろぼうホッツェンプロッツ」と「大どろぼうホッツェンプロッツふたたびあらわる」では、悪逆非道で反省なんてこれっぽっちもしないホッツェンプロッツは、どうやら牢屋で深く反省して、いい人になったようでした。

 完全に反省したホッツェンプロッツですが、世間は信用してくれません(まあ、あたりまえですよね……)。

 最初は疑っていたカスパールとゼッペルでしたが、どうやらホッツェンプロッツが改心したと悟ると、まさかの共同戦線に……

 これがホッツェンプロッツシリーズの最後のお話ですが、明るく、ゆかいで楽しい物語です。第1巻でカエルにされてカスパールたちに助けられた妖精アマリリスもふたたび登場しますし、ワニにされてしまいながらもけなげに生きてしたダックスフンドのヴァスティも登場。最後は、みんな幸せになるハッピーエンドです。

 ホッツェンプロッツは、子どもたちの身近に森や野原があって、世の中かがかなり物騒だった時代の物語です。
 当時、世の中には小さな子どもをさらって売り飛ばしたり、強制労働をさせるような悪い人攫いや強盗もいました。さすがに妖精や魔女は現実にはいないけれども、ホッツェンプロッツみたいな奴はいたのです。

 けれど、子どもたちはけっして負けていないし、いつだってたくましく困難に立ち向かいます。もちろん、現代で、現実に怖い人や悪人と出会ったとき、子どもが本気で戦おうとするのは危険です。

 しかし、カスパールとゼッペルの、何があってもめげずに頭をフル回転して問題に挑むところや冒険を面白がるところなど、見習うべきところはたくさんあります。
 また、シュローターべック夫人の「千里眼」や、アマリリスの魔法などが万能でないのもいいのです。シュロッターべック夫人は国家公認の千里眼師(謎の肩書き……)なのに、自分のことになるとまったく占えなかったり、カスパールのおばあさんの不思議なかぼちゃが予想通りにはできず、ちょっとズレてるというのも面白い。

 どのキャラも魅力的で、それぞれがどんなに強くても絶対無敵と言うわけではなく弱点があり、それがまたこの物語の面白さを増しています。

 文章は平易で読みやすく、トリップのとぼけた挿絵がふんだんに入っています。
 わりとボリュームがあるので小学校中学年から。すべての漢字にふりがなが振ってある総ルビなので、かしこい子なら小学校低学年からコツコツ読むことができるでしょう。ぜひ、1巻から順番に挑戦してみてください。小さな章に分かれているので、読み聞かせにもおすすめ。

 児童文学界で長く愛されてきた名作シリーズです。おうち時間にぜひ、まとめてどうぞ。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はほとんどありません。3巻目がいちばん暴力要素が少なく、楽しくゆかいなお話です。いままでの物語の中で残されていた謎や問題が解決します。

 いままで敵対していた相手とも、納得すれば仲良く出来るし協力もできるという、少年たちの子どもらしい心の柔軟性には、大人になってから読むと純粋に感動します。

 読後はもちろん、アップルシュトルーデルとコーヒーでひとやすみ。

 

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