【大どろぼうホッツェンプロッツ】大どろぼうと少年たちの頭脳戦ふたたび。プロイスラーの名作。【ふたたびあらわる】【小学校中学年以上】

2024年3月18日

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大どろぼうホッツェンプロッツ ふたたびあらわる  プロイスラー/作 トリップ/絵 中村浩三/訳 偕成社

つかまって牢屋に入ったはずのホッツェンプロッツ。ところが、まんまと牢屋を抜け出して、カスパールとゼッペルに復讐しようとします。腕白少年たちと大どろぼうの対決、ふたたびです。

この本のイメージ 腕白少年☆☆☆☆☆ 大冒険☆☆☆☆☆ じつはファンタジー☆☆☆☆☆

大どろぼうホッツェンプロッツ ふたたびあらわる  プロイスラー/作 トリップ/絵 中村浩三/訳 偕成社

<オトフリート・プロイスラー>
オトフリート・プロイスラー(Otfried Preusler、1923年10月20日~2013年2月18日)は、チェコスロバキア生まれのドイツの児童文学者。長年教師をしながら童話を次々に発表する。代表作に「大どろぼうホッツェンプロッツ」「小さい魔女」「クラバート」など。本国ドイツをはじめ世界各国で多くの文学賞を受賞している。

<フランツ・ヨーゼフ・トリップ>
フランツ・ヨーゼフ・トリップ(Franz Josef Tripp、1915年12月7日~1978年2月18日)は、ドイツのエッセンに生まれる。新聞関係の仕事をしながらハインリック・C・ベランに師事、1949年に独立。ドイツの画家、イラストレーターとして多くの児童書の挿絵を描いた。息子は芸術家ヤン・ペーター・トリップ。

<中村浩三>
中村 浩三(なかむら こうぞう、1917年(大正6年)7月10日~ 2008年(平成20年))は、日本のドイツ文学者、翻訳家、早稲田大学名誉教授。 島根県生まれ。1944年早稲田大学文学部独文科卒。早稲田高等学校講師、1951年早大理工学部助教授、57年教授、68 ~74年語学教育研究所長、88年定年退任、名誉教授。1991年「少年ルーカスの遠い旅」で産経児童出版文化賞受賞。ドイツの児童文学を多く訳し、「大どろぼうホッツェンプロッツ」三部作がロングセラーとなっている。

 今回ご紹介するのは、児童文学のロングセラー「大どろぼうホッツェンプロッツ ふたたびあらわる」です。原題はNeues vom Rauber Hotzenplotz. ドイツでの初版は1969年。日本語版初版は1970年です。

 最初のお話「大どろぼうホッツェンプロッツ」から、完全にお話が続いているので、まずは第1巻からお読みになることをおすすめします。第1巻のレビューはこちら

 日本語訳では「大どろぼう」となっていますが、どうやらRauber は「強盗」のようです(グーグル先生訳)。たしかに、押し込み、誘拐、監禁、なんでもありですもんね。

 今回のお話は……

 無事につかまって牢屋に入れられたはずのホッツェンプロッツでしたが、ディンペルモーザー巡査を襲い、制服を奪い取って変装し、脱獄してしまいました。

 その足で、カスパールの家に来たホッツェンプロッツは、おばあさんのつくった焼きソーセージとザワークウトを全部平らげ、恐怖でおばあさんを気絶させます。

 家に帰ったカスパールたちは、気絶したおばあさんと、食べつくされた焼きソーセージとザワークラウトを見て、大ショック。なんとかホッツェンプロッツをもういちどつかまえようと、罠を考えますが……

 と、いうのがあらすじ。

 前回のお話では、ホッツェンプロッツの友達の悪い魔法使いが登場しましたが、今回のお話では、カスパールとゼッペルの味方をしてくれる、良い魔女が登場します。この魔女が……と言うか、この魔女の愛犬が切り札となります。

 毎回、ホッツェンプロッツをやっつけようと、二人の少年が知恵を絞るのですが、このふたりだけだと叶わないのもお約束。でも、それはわりとリアル。子どもの悪知恵って、案外、大人には通用しないものです。とくに、このような悪い大人には。

 ところが、超自然的な存在が味方してくれるのも、前回と同じ。前回は、悪い魔法使いにカエルに変えられて囚われていた妖精でしたが、今回は、シュロッターベック夫人という、千里眼師の国家資格を持つ未亡人が登場します。

 魔女で未亡人で、千里眼師の国家資格。なんだか、属性盛りすぎって感じの濃ゆさ。でも、とっても頼りになるおばさんだったのでした。このおはなしは、カスパールのおばあさんや、シュロッターベック夫人など、おばさんが大活躍します。

 そして、今回もホッツェンプロッツとカスパールたちの騙しあいが面白い。
 暴力シーンはあるにはあるのですが、そんなに痛そうには書かれていません。ただ、コメディタッチにしてはありますが、ホツツェンプロッツがかなり暴力的で恐ろしい、大悪党として書かれています。安易なギャグではないのです。

 昔は、こういう人さらいや強盗がお年寄りや子どもを襲うことは多かったので、お話として、わりとシビアなところがあって、そのうえで、勇気や知恵で大どろぼうと戦う少年たちの活躍が書かれています。

 現実に、ここまでのことがあったら、立ち向かえる子どもはいないと思うし、(実際は犯罪者と直接子どもは戦えないし戦ってはいけないけど)、自分の身に恐ろしいことがおきたときに、それでも頭をフル回転させて、できることをやる。勇気を出す、と言う、わりとストレートな冒険物語を描ききっていると思います。

 あきらめずにがんばれば、予想もしないところから助けが現れる、と言うのも前回と同じ。

 文章は平易で読みやすく、トリップのとぼけた挿絵がふんだんに入っています。
 案外長い物語なので、小学校中学年から。けれども、すべての漢字にふりがなが振ってあるので、かしこい子なら小学校低学年からコツコツ読むことができます。ぜひ、1巻から順番に挑戦してみてください。小さな章に分かれているので、読み聞かせにもおすすめです。

 児童文学界で長く愛されてきた名作シリーズです。
 くじけない男の子たちの、冒険物語。この季節にぜひどうぞ。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 強盗が出てくるおはなしなので、暴力シーンはあります。しかし、気をつけて書かれているので、そんなに残酷ではありません。「そういうシーンがあるのだな」と前もって身構えていれば大丈夫な人なら、大丈夫でしょう。

 何があってもくじけないで知恵を出す男の子たちは、つい応援してしまいます。
 正統派の児童文学です。男の子だけでなく、冒険好きな女の子にもおすすめです。

 読後は、ソーセージとザワークラウトを。

 

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