【ももたろう】昔話を新しく!ヒョーゴノスケの描く鮮やかで美しい絵本。【絵本】【4歳 5歳 6歳】
むかしむかし あるところに おじいさんとおばあさんがすんでいました。おじいさんは やまへ しばかりに おばあさんは かわへ せんたくにいきました…… 伝統的な昔話を新感覚の鮮やかな筆致で描く絵本。
この本のイメージ 桃太郎の昔話☆☆☆☆☆ 鮮やかで美しい絵☆☆☆☆☆ 詳細な物語☆☆☆☆☆
ももたろう ヒョーゴノスケ/絵 文 株式会社マイナビ出版
<ヒョーゴノスケ>
どこか懐かしくて温かみのある作風が人気のイラストレーター。
「ドラえもん」や「星のカービィ」「ポケットモンスター」「鬼滅の刃」 などの公式グッズイラストなども手がけている。
2021年5月初版。
日本の伝統的な昔話、「桃太郎」を絵本にしたものです。
最近、伝統的な昔話を知らない子どもたちが増えているようです。
これは日本だけでなく、アメリカでもそうで、そのため、「ワンス・アポンア・タイム」や「ザ・ランド・オブ・ストーリーズ」など、昔話を題材にした新しいファンタジーを生み出し、子どもたちに興味をもってもらおうとする試みが行われています。
日本でも、携帯電話のCMや、特撮番組などで伝統的な昔話を題材にしています。昔話は、大切な文化なだけでなく、世代を超えて共通言語となるフリーコンテンツ。こういう試みはうれしいですね。
本日ご紹介するのは、ヒョーゴノスケ先生の絵本、「ももたろう」。
昔ながらの桃太郎の物語を、大きな脚色もなく、オーソドックスに描いています。
桃太郎はお爺さんとお婆さんに拾われ、育てられて幸せに成長しますが、村が鬼に襲われ、鬼退治に出る決意をします。
犬、猿、雉をそれぞれきびだんごでお供にするのも詳しく描かれています。
子どもの頃に聞かされた、鬼が島の門を雉が開けるところも書いてあり、素晴らしい。
すべての絵に奥行きが感じられ、色鮮やかで美しい。惹きこまれる絵本です。
時代に合わせた変更点は、「鬼が自分の村を焼き討ちにきた鬼であること」「桃太郎が奪還したのは、鬼が自分の村を襲って奪った金品であること」くらいです。これは、昔話では諸説あって、桃太郎の村は直接は襲われていないバージョン、直接襲われたバージョン、鬼が島には金銀財宝ざっくざくで、桃太郎はそれをすべて手に入れた一攫千金バージョンなどがあります。
桃太郎のお話は、日本の昔話では珍しく、冒険をして財宝を手に入れるお話。平安時代くらいまでは、年老いた善良な夫婦や正直者が財宝を手に入れる昔話がわりとあるのですが、時代と共にだんだんと財宝を手放したり失ったり、実は財宝は無かった、というような話が増えてゆきます。
おそらくは仏教の「諸行無常」の考えが定着したからではないでしょうか。
無欲な日本人の昔話のなかでも、桃太郎はかなり華やかなほうのお話なので、どうするかなと思っていたのですが、この絵本ではシンプルに「奪われたものを返してもらう」と言うことでかたがついています。
鬼も退治はしましたが、命は奪っておらず、そこらへんも改変ポイントでしょう。主人公に略奪はさせないという配慮かもしれません。
字はすべてひらがなで見開きに五行前後なので、50音がわかればお子さまがひとりで読むことも難しくないと思います。
しかし、表紙の愛らしい絵からは想像も出来ないほど、ダイナミックで美しい絵の連続。これはぜひ、親子で読み聞かせしていただきたい名作。
今風のゲームや漫画に慣れたお子さまにはまさにストライクの、ディフォルメされた絵柄でありながら、光の美しさ、影の使い方、微妙な陰影を表現する美しい色彩、そして壮大なロマンあふれる構図など、大人でも心躍る絵の数々。
自分も桃太郎と一緒に冒険している気持ちになれる、絵本の中に吸い込まれるような、魔力を持った絵本です。
子どもに昔話を読み聞かせてあげたいな、と思ったら、ぜひこれを。
ほかにも「かぐやひめ」や「うらしまたろう」もあるようです。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素には極力の配慮がなされています。
桃太郎は鬼退治に出かけますが、鬼は懲らしめるだけで殺しません。金銀財宝は鬼の財産ではなく、村から奪われたものを取り返す、と言う設定になっています。
それ以外は、かなり詳細な設定も書かれており、雉が鬼ヶ島の門のかんぬきを開ける場面もあります。
とにかく絵が美しいのでお手にとっていただきたい絵本です。
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