地獄でだって、芸は身を助く?くすっとして元気が出る絵本。読み聞かせにも。【幼稚園以上】
こたろうは、バナナの皮を踏んですってんころりん、死んでしまいました。そこは、地獄。かまゆで地獄のかまどが爆発して、大火事になってしまいました。みんなで消火したあと、冷たいものが食べたくなります。そこでこたろうは……
この本のイメージ くすっと☆☆☆☆☆ ゆかいな☆☆☆☆ 特技って大事☆☆☆☆
じごくにアイス ナカオマサトシ/作 澤野秋文/絵 ひさかたチャイルド
こたろうは、移動販売車でアイスを売るアイス屋さん。今日も元気にアイスを売っていましたが、バナナの皮を踏んで転んでしまい、頭を打って死んで(?)しまいます。
そこは地獄。閻魔様に裁かれようとしていたそのとき、かまゆで地獄のかまどが爆発してしまい、大火事になってしまいます。あわてて、みんなで三途の川から水を汲み、なんとか鎮火。
へとへとになった地獄の鬼たちのために、こたろうは、アイスを作ってあげようと思い立ちます。
地獄のマッドホルスタインの乳をしぼり、デラックスプテラノドンの卵を使い、氷地獄の氷を使ってアイスを作ります。(あっ、砂糖がないよ?)
鬼たちは大喜び。そして、閻魔様もニッコリ。
そして、どうやら臨死状態だったこたろうは、アイスのお礼にこの世に還ってくるのです!めでたしめでたし。というお話でした。
この閻魔様が、火事のときに冷静に指揮していたりして、案外、頼りになるのです。とぼけた鬼たちも、アイスに大喜びしていて、怖い顔をしているけれど意外とかわいい。
あらすじとしては、「芸は身を助ける」と言うシンプルなお話ですが、思わずくすっとしてしまいます。
子供向けの絵本では「死」や「おばけ」などをユーモラスに描くジャンルがあります。感受性の高い小さな子供の「怖いもの予防系」の絵本ですが、わたしは、こういうタイプのものは大好きです。
「オバケのQ太郎」と言う、藤子不二雄先生の、あまりにも有名な児童向け名作漫画があります。あの漫画が生まれた時代は、世界中でたくさんたくさん人が死んだ後なので、人間の生活に「死」も「おばけ」ももっと身近だったのです。そんなときに、「おばけ」をかわいく描いて親しませてくれる漫画は、子どもたちの心をなごませ、一緒に読んでいた多くの大人たちの心も救ったはずです。(アメリカのおばけが出てくるところも、「アメリカ人もたくさん死んだんだよ」と言う気持ちがこもっていて、やさしい)
絵本や、漫画や児童文学には、そう言った特別なパワーがあり、子どもたちがこれからの人生を生きていくうえで出会う、さまざまな恐怖や困難への「予防接種」になってくれるのです。(エレイン・アーロン博士が「ひといちばい敏感な子」で書いていますが、HSPやHSCにとって大切なのは、不安の克服ではなくて予防です)
こたろうさんは、アイスを作るのも、アイスを食べさせるのも大好きなんですね。そして、鬼たちと協力して大量のアイスを作る過程、こういうのは、男の子ならぜったい楽しいはず。みんなでアイスを食べている地獄は、まるで文化祭のようなにぎわいです。
アイスのお礼に生き返らせてくれた閻魔様は義理堅い。
そして、きっとこたろうさんは、この世でも再び楽しくアイスを作って売るのでしょう。
外出の機会を減らさざるを得ない昨今、逆に言えば思う存分読書が出来る貴重な機会です。ユーモアたっぷりの絵本は、重苦しい気持ちを吹き飛ばしてくれるはず。
どうぞ、親子で楽しく読んでくださいね。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はありません。むしろ、HSCが怖がる「死」や「地獄」に対して耐性をつけてくれるユーモアあふれた絵本です。感受性ゆたかな男の子におすすめです。HSCの女の子向けの絵本はわりとあるのですが、HSCの男の子向けは少ないので貴重だと思います。読み終わったらアイスが食べたくなるので、用意しておきましょう。
プレゼントにもおすすめです。
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