【おしいれのぼうけん】絵本界のロングセラー。少年たちの押入れでの大冒険。読み聞かせにおすすめです。【小学校低学年以上】
さくらようちえんには、怖いものがふたつあります。それは、先生たちの人形劇で出てくる「ねずみばあさん」と、いたずらしたときに入れられる「おしいれ」でした。
この本のイメージ 怖くない押入れ☆☆☆☆☆ 大冒険☆☆☆☆☆ 友情☆☆☆☆
おしいれのぼうけん ふるたたるひ たばたせいいち /さく 童心社
絵本界のロングセラー「おしいれのぼうけん」です。先日亡くなられた田畑精一氏が絵を描いています。
実はわたしは読んだことがなく、ニュースをきっかけにして今回はじめて読みました。
このブログを書き始めて知ったのですが、絵本のサイクルはたいへん短くて、あっという間に絶版なんです。ですから、いいなと思った絵本でもなかなかご紹介できないんですよ。
そんななかで、何十年もロングセラーを誇っている絵本と言うのは、やはり、それぞれ、ストーリーにも絵にも、他にはない魅力を持っているものが多く、さすがはこの厳しい世界を生き残ってきただけのことはあるなと納得のものばかりです。
この「おしいれのぼうけん」も1974年に初版が出版されてから、かれこれ40年以上愛されてきたわけですが、時代を超えた魅力がある本です。
最近は「押入れ」の無い家も多くなりましたが、昔の日本では、子どもたちが恐れるものは「押入れ」。いたずらすると、押入れに入れられ、出してもらえなくなる罰がスタンダードでした。
これは、そんな時代に生まれた童話です。
舞台はさくらようちえん。たくさんの子どもたちが、そこで楽しくすごしています。みんなが大好きなのは、やさしい水野先生。でも、怖いものもあります。
それは、先生たちの人形劇で出てくる「ねずみばあさん」。そして、いたずらしたときにお仕置きで入れられる「押入れ」です。
ある日、あきらくんとさとしくんはあきらくんのミニカーを貸す貸さないで喧嘩になり、お昼寝の時間に追いかけっこをします。お昼寝している園児たちをまたいで騒いだため、「危ないでしょう」と水野先生に𠮟られ、押入れに入れられてしまいます。
さしとくんが上の段、あきらくんは下の段です。
それから、ふたりの大冒険が始まります。
最初は、押入れの小さな穴から外の様子を伺うふたり。小さな穴から向こう側を覗くと、望遠鏡みたいにすこし大きく見えて、面白いんですよね。気がついた水野先生は、穴をふさぎます。
真っ暗になって少し怖くなったふたりは、手をつないで励ましあいます。さとしくんはあきらくんに謝ってミニカーを返すと、あきらくんはさとしくんに蒸気機関車のミニカーを貸してあげ、ふたりはそれぞれミニカー遊びを始めます。
まったく反省しそうにないふたりに困る水野先生。「このふたり、どこまでがんばるかな」と、楽しそうな木村先生。
その後、押入れの木目が顔に見えてきたりと、だんだん怖くなってきます。そして、押入れの中の不思議な世界に入り込んでいきます。
ふたりは、押入れで大冒険。力をあわせてねずみばあさんと戦って勝つのです。
最後は素敵なハッピーエンドで、ラストの四行で思わず顔がほころんでしまいます。
罰なんか与えなくても子どもは反省するし、怖いことも楽しんでしまえば冒険になるよ、と言うお話でした。
蒸気機関車「D51」を「デゴイチ」と書いてあるのが、時代を感じます。機関車ものの童話やテレビドラマ、アニメが流行した時代です。高速道路が出てくるのも、当時のはしりだったのだろうなと思います。「デゴイチ」だけが今の子どもにはわかりにくいかな、でも、その他はおそらく今でも共感できるところがたくさんあると思います。
読み聞かせだと3歳くらいから。自分で読む場合は、絵本にしてはボリュームがあるので、幼稚園上級さんか小学校低学年以上、長い物語の読み始めの時期におすすめです。
なつかしい要素がたくさんあるので、お孫さんがおじいさんおばあさんのために読んであげるのにもおすすめの絵本です。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はありません。むしろ、小さなお子様(とくにHSC)が過敏に怖がりやすい暗闇やお仕置きのようなものに対して、耐性をつけてくれます。HSCのお子様とそのご両親にとくにおすすめです。
自分で全部読みきったら、どうぞほめてあげてくださいね。
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