【長い冬】7ヶ月の長い冬。ローラの物語六冊目です。【ローラシリーズ 6】【中学生以上】

2024年2月13日

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長い冬 ローラ・インガルス・ワイルダー/作 谷口由美子/訳 岩波少年文庫

ローラたちインガルス一家が暮らす小さな町に、厳しく長い長い冬が襲いました。毎日、激しい吹雪が襲います。汽車が止まり、食べ物が乏しくなるなか、ローラたちは力を合わせて冬を乗り切ります。

この本のイメージ  創意工夫☆☆☆☆ 勇気☆☆☆☆☆ 協力☆☆☆☆☆

長い冬 ローラ・インガルス・ワイルダー/作 谷口由美子/訳 岩波少年文庫

 平和なときと、つらいときで、読みたくなる本や読んで元気の出る本は違うんだなと思います。
日本の景気が良くて明るくて、豊かだった時期は、ダメな主人公が反省する話や、平凡な子がいざというときに勇気を出す話が多かった気がします。

 この物語が出版された頃は、まだまだアメリカが開拓途上で大自然も厳しい時代だったでしょう。21世紀になって、この本に共感するような、こんな時代などになるとは思いませんでしたが、三十年ほど前に比べたら、大地震、津波、火山の噴火、台風、伝染病と、次から次へと過酷です。

 9年前の大地震を境に、違う国に来てしまったようだと思ったりもしました。あの時も、これからどうなるんだろう、どうなるんだろうと、毎日不安だった時期があります。今もなんだか、いつ終わるとわからない薄暗さの中にいる気持ちになるときが、たまにあります。

 この本は、ローラ・インガルス・ワイルダーの出版した六冊目にあたり、「シルバー湖のほとりで」のあとの話になります。「大きな森の小さな家」から「シルバー湖のほとりで」までは、講談社や福音館から出版されていますが、「シルバー湖のほとりで」のすぐ後の話である「長い冬」は、岩波少年文庫でのみ手に入るようです。そのあとは「大草原の小さな町」へと続きます。

 今回、原作の2巻目「農場の少年」で登場した、アルマンゾ・ワイルダーが再登場し、ローラの物語とアルマンゾの物語が合流します。

 あるとき、ローラたちの町にインディアンの老人がやってきて、今年の冬は長い、「7ヶ月の冬が来る」と言い残して去っていくのです。そして、予言どおり、10月から翌年の4月まで、7ヵ月の厳しく長い冬がやってきました。

 町は雪に閉ざされ、やがて汽車もこなくなります。街の食料はだんだん尽きてゆき、ローラの家の食べるものもなくなってゆきました。
 灯りをともす灯油や、ストーブを温める薪や石炭もなくなり、それぞれが工夫してなんとか冬を乗り越えようとします。

 今回印象的だったのは、このシーン

「子どものころは、こういう新式の灯油ランプなど聞いたこともなかったけど、明かりに不自由したときなんか、ありませんでしたよ」

「その通りだ」とうさんがうなずく。「時代は進みすぎているよ。すべてがとてつもない速さで進んでしまった。鉄道、電信、灯油、石炭ストーブ、こういうものはあれば便利だが、問題は人々がそれに頼りすぎてしまうという点だね」(引用)

 ろうそくなどでまかなえていたころは、こんなに不便になることもなかった、というのです。
 80年前の小説なのに、なんと現代に似ていることでしょう。今だって、ハイテクで便利になっているからこそ、なにかあったときに不便なのです。

 ローラたちは、原始的な方法に知恵を使ってひと工夫して、なんとか乗り切ります。小麦はコーヒーミルでひいてパンを作り、薪が絶えたストーブには、干草をねじって固めた棒をくべます。

 それでも町に小麦がなくなったとき、アルマンゾとキャップの二人は、町から遠くはなれたところに1人で暮らしている農家に、命がけで麦を買いに行きます。

 そうして手に入った麦は、さまざまな紆余曲折はありましたが、最終的に町の人たちの困窮具合に応じて、平等に分け合ったのです。

 「アメリカは自由の国だ」と言う言葉はくり返し出てきます。だから、この物語の中でも人々は、それぞれみな、自己責任において自分の暮らしを頑張って支えていました。でも、ほんとうにほんとうに大変なときは、率直にそれを語り合い、助け合って支えあって乗り切ることが出来たのです。
 とても誠実な世界を見ました。

 危機に際しては、どんなときも人は同じなのかもしれません。時代が流れても。
 迷惑をかけたくないという思いも、そんなに困っているなら言ってくれれば助けるのにと言う思いも。そして、すれちがって時にはぎくしゃくすることも、です。そして、そういうトラブルを、誰が悪い彼が悪いとののしりあうのではなく、きちんと向き合って誠実に話し合って、解決していくことが出来たら、いつの時代も乗り越えてゆけるのかな、とそんなふうに思ったりもしました。

 実話なので、当然ラストはローラたちはちゃんと生き残るのですが、物語の中で街の人たちが全員無事に冬を乗り切り、生き残ることが出来て、本当にほっとして本を閉じました。もっとも厳しいお話ですが、わたしはこの本が一番好きです。

 途中の過酷さが報われるハッピーエンドでした。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 過酷ですが、ハッピーエンドですし、人間関係は温かく支えあっていて、辛い話なのに心が和みます。いまだからこそ、読むと励まされます。大自然や、人生や、いろんなことがあまりにもきつく感じられたときにはおすすめの本です。シリーズ全巻そろえなくてもこの本だけでもお話は通じますし、人生のつらいときに、支えをくれる物語だと思います。むしろ、繊細な方のほうが励まされることが多いように思います。
 読後は、温かい紅茶がおすすめです。

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