【シルバー湖のほとりで】ローラの子ども時代の終わりと、鉄道黎明期【ローラシリーズ 4】【小学校高学年以上】

2024年2月13日

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シルバー湖のほとりで ローラ・インガルス・ワイルダー/作 こだまともこ・渡辺南都子/訳 

プラム川を離れたローラたちは、シルバー湖のほとりに居をかまえました。愛犬ジャックとの別れや、メアリーの失明、様々な困難が訪れて、ローラは大人になることを余儀なくされます…

この本のイメージ 人生の困難☆☆☆☆☆ 街が生まれる☆☆☆☆☆ 

シルバー湖のほとりで ローラ・インガルス・ワイルダー/作 こだまともこ・渡辺南都子/訳 

 そろそろ入手困難になってきた、インガルス一家の物語4冊目。
角川からの電子書籍が三巻の「プラムクリークの土手で」までなのは、四巻を読んだら理解できました。

 家族全員が猩紅熱にかかり、しっかり者の長女メアリーが失明してしまうのです。また、頼れる愛犬ジャックも、ついに寿命が来て死んでしまいます。

 この本からローラの子ども時代は終わりを告げます。まだ12歳で、そろそろ13歳になろうとしていたローラですが、親のあとをついて歩いているだけの子どもではいられなくなりました。

 「おまえがメアリーの目になりなさい」と言われ、ローラは、自分の見えたものをすべて言葉にしてメアリーに聞かせます。縫い物のときは、糸の色を選ぶのを助けたり、メアリーの出来ない家のお手伝いをしたりと、いたずらっ子だったローラはとてもしっかりした子になってゆきます。

 冒頭で、ドーシアおばさんがお父さんを出稼ぎに迎えに来るところから物語は始まり、インガルス一家はプラムクリークを離れ、西部の新しい鉄道の駅の建設現場に引っ越します。
そこは、開発地で、人手が足りないのです。

お父さん、移住を決意

 いままで大自然の中で暮らすのが大好きなお父さんが、一念発起して、開発現場に向かうことにするのでした。

 ローラたちは、生まれてはじめて列車に乗って移動します。はじめてずくしのローラが、目に付くものすべてをメアリーに教えるためにしゃべり続けているのがいじらしくかわいらしい。
初めての土地で、ローラたちは、自分たちの暮らしを作り上げていきます。

 そこは、街が生まれようとしている場所でした。
新しい土地に、人間が押し寄せてきて、鉄道と駅が出来上がっていき、そして移住者もやってきます。そのなかで、お父さんは望んでいた農地を手に入れたり、なつかしい友人に助けられたりと、いろんな体験をします。

 このあたりの騒動と言うのは、わたしの親世代から戦後の混乱期や高度成長期のエピソードとして聞いたことと、わりと共通点があり、なにもないところから街や文明が生まれて育っていく力強さを感じました。

大人になろうとするローラ

 ローラは13歳になりますが、近所の女の子は14歳で結婚したりしているので、もうそろそろ大人として扱われる年齢になりつつあるのでした。13歳で大人って。
いまなら、小学校を卒業したばかりくらいの歳です。

 昔の人が大人になるのが速かったわけではなく、大人扱いせざるを得ない状況があっただけで、精神的な問題とかは、今とあまり変わらなかったようです。
 読んでいても、いきなりローラの考え方が大人びたわけではなく、メアリーもローラもまだまだあどけないまま。
 でも、世の中がもう大人扱いする年齢に近づいてきてしまっているんです。ちょっと前まで、ぬいぐるみのことで真剣に泣いていた女の子なのに……。

 14歳で結婚なんて。ローラも嫌だと言ってるので、やっぱり当時の女の子も、そんなに早く結婚するのは嫌だったんだなとしみじみ思いました。そりゃ、やりたいことがたくさんありますよねえ、その歳じゃ。

 プラム川のそばで別れたオルデン牧師が若い牧師さんを連れてきて再会し、「目の見えない人のための大学がある」と言う貴重な情報を教えてくれたことで、インガルス一家に大きな目標が生まれます。


 いままで子ども子どもしてたローラも、メアリーをその大学に行かせるためにがんばろう、と心を決めるのです。

困難に立ち向かう

 キリスト教の考えに、主は愛するものにこそ試練にあわせたもう、という言葉があるそうです。キリスト教徒じゃないわたしは、うへえ、とつい思ってしまいますが、確かにこう考えれば、いいことがあったときには神様に愛されてると感じ、よくないときにはもっと愛されてると感じるわけですから、励まされます。

 キリスト教圏の人たちのチャレンジ精神はこれが源なんですね。逆に、日本人などは、困難を我慢するのは強いように思いますから、どっちがよりどうとは思いませんけれども。

 住むところを転々として、いなごや伝染病など様々な困難に見舞われながらも、ローラたちの暮らしはだんだん上向きになっていきます。「大きな森の小さな家」時代の、ほのぼのとした自給自足の暮らしとは違って、めまぐるしく発展していく文明の車輪に巻き込まれていくような四巻ですが、どんな運命にも深刻さを抱かずに挑戦していくインガルス一家には元気をもらえます。

 なかなか、入手困難なのが残念です。各出版社に電子版のリクエストをするのもいいかもしれません。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 メアリーが失明してしまい、愛犬ジャックが死にと悲しいシーンが続きます。また、飯場の荒っぽい人たちのトラブルとか、すこしいままでとはテイストが変わってくるので、もしかしたら苦手な人にはきついかしれません。そう言う話だと前もってわかっていれば大丈夫な人にはおすすめです。アツアツの紅茶とアップルパイをお供にぜひどうぞ。

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