【ランサム・サーガ】未知の場所を測量しながら探検する。出会いと冒険の夏休み。シリーズ8作目【ひみつの海】【小学校高学年以上】

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ひみつの海 上下  ランサム・サーガ 8 アーサー・ランサム/作 神宮輝夫/訳 岩波少年文庫

外海での大冒険から戻って来たウォーカーきょうだいは、お父さんたちと潮の満ち干きで浮き沈みする島々の探検にゆくことになりました。ところが、お父さんに突然の呼び出しが来てしまい……

この本のイメージ 新しい友だち☆☆☆☆☆ 測量☆☆☆☆☆ 潮の満ち干き☆☆☆☆☆

ひみつの海 上下  ランサム・サーガ 8 アーサー・ランサム/作 神宮輝夫/訳 岩波少年文庫

ひみつの海 上下  ランサム・サーガ 8 アーサー・ランサム/作 神宮輝夫/訳 岩波少年文庫

 ランサム・サーガのシリーズ8作目は、Secret Water.
 初版は1939年です。日本語版初版は1967年。岩波少年文庫版は2013年です。

 ランサム・サーガは、イギリスの作家アーサー・ランサムが書いた12作のシリーズで、かつては「アーサー・ランサム全集」として刊行されていました。ウォーカー四きょうだい、ブラケット姉妹、D姉弟が主な登場人物で、それぞれのお話で主人公が交替しながら、大きな流れをつくっています。

 子どもたちが休暇に帆走船でセーリンクをしたり、無人島でキャンプをしたり、宝探しをしたりする物語で、SF要素やファンタジー要素はなく、あくまで実現可能なことが書かれています。船やキャンプの知識の深いランサムが自分の経験を生かして書いているので、随所にリアリティがあるのです。

 どの巻から読んでも楽しめるのですが、子どもたちの成長物語でもあるので、第1巻「ツバメ号とアマゾン号」から順番に読むことをおすすめします。

 「ツバメ号とアマゾン号」のレビューはこちら

 今回のお話、「ひみつの海」の舞台は、英国サフォーク州ハリッジ。お話としては、「海へ出るつもりじゃなかった」の直後となります。生きるか死ぬかの大冒険をくぐりぬけたウォーカーきょうだいは、今度はお父さんたちと一緒に、潮の満ち干きで浮き沈みする無人島でのバカンスをすごすつもりでした。

 ところが、直前になって、お父さんは海軍大臣から呼び出し。子どもたちだけで、無人島のキャンプをすることになります。

ひみつの海 上下  ランサム・サーガ 8 アーサー・ランサム/作 神宮輝夫/訳 岩波少年文庫

 お父さんから出された「課題」は、未知の場所の「測量」。だいたいの地形が書き込まれた白地図に、子どもたちが自力で「調査」した内容を書き込んでゆく冒険です。これは、昔の子どもたちの遊びとしてわりとポピュラーだったようで、「グリーン・ノウの川」でも、子どもたちが白地図に自分なりの地名つけて書き込んでゆく遊びをしています。

 この場所はおそらく、Hamford Water National Nature Reserve(ハンフォードウォーター国立自然保護区)と呼ばれるところで、グーグルマップで検索すると、ジョンたちが描いた地図とほとんど同じ地形を見ることができます。

 ここは、潮の満ち干きで海になったり沼地になったりする場所。フランスのモン・サンミッシェルやイギリスのセント・マイケルズマウンテン(よくよく考えたら、このふたつの名前、意味が同じですね。「大天使ミカエルの島」)のように干潮時にだけ歩ける道ができるのです。

 ティティはここを「秘密多島海」と名づけました。この地域の調査の面白さは、どこまでが湖でどこからが海なのかわからないこと。水路にみえたものが行き止まりの場合もあるし、行き止まりだと思っていたら水路だったりもする。
 だいたいの地形はわかるけれど、現場で探検してみてはじめて「半島なのか島なのか」「湖なのか海なのか」がわかるのです。

 コンパスや定規をもって白地図を埋めてゆく彼らの探検はとことん本格的。それなのに、しっかりもののスーザンが目覚まし時計を忘れてきて、現場で日時計を作って対応するなど、そんなところもゆかいです。

 今回は、いままでは冒険に参加していなかった「船の赤ちゃん」こと末っ子のブリジットがはじめて参加します。「もうわたしは大きい、しっかりしているのよ」と自分で主張しつつも、ところどころ幼児特有のわけのわからなさがあるブリジット、そろそろ4歳くらいでしょうか。それまではずっとお母さんにだっこされていたところを考えると、おそらくは4歳くらいでしょう。このブリジットが今回は大活躍します。
 そして、海で拾った子猫、シンバットもブリジットとともにキャンプに参加。

 地元の子どもたちとの出会い、「地元っ子」と「よそ者」とのちょっとしたいざこざも、現代でもよくある問題ですが、それも、子どもたちだけでうまく乗り越えて、解決してしまうのがさすが。いつもいつも人生のヒントをたくさんくれる小説です。

 まだ家庭電話すら一般的ではなく電話に「交換手」がいた時代、最速の通信手段が「電報」だった時代の物語なのですが、今読んでもほとんど古さを感じさせません。それどころか、「これぞ夏休み」と言ったわくわく感に満ち溢れています。

 近代的なキャンプセットもないので、石でかまどを作って、たきぎを集めて火を起こし、料理をして食べるという原始的なキャンプです。子どもたちだけなのに、「いつどこでたきぎを集めるか」「どこにかまどをつくるか」「どうやって安全に火を作るか」など、いまの子どもでは知りようもないことを、自然に知っているのもすごい。

 白地図を完成させる冒険についても、「現地の子に協力してもらう」のはいいけれど、「かわりに調査してもらう」とか「教えてもらう」のはダメと言う厳格なルールを守って遊んでいるところも、気骨のある子どもたちです。
 未知のものを調査して知る楽しみ、喜びというのをウォーカーきょうだいは知っているのです。
 下巻巻末の解説で菅原成介氏が「学ぶことって、本当は楽しかったんだ!」と書いていらっしゃいますが、まさにそれが、今回のテーマなのかもしれません。

 また、「困ったとき、緊急事態ににどうするか」も、ちゃんと考えていて、冷静に、そして面白がって行動できる、子どもたちの対応力に舌を巻きます。外海からの冒険を乗り越えたばかりとはいえ、なかなか大人にもできないくらいの冷静さなのです。

 今回のお話もかなりボリュームがありますが、文章は平易で読みやすく、難しい漢字には振り仮名が振ってあります。通常は小学校高学年からですが、かしこい子なら四年生くらいから挑戦してもいいと思います。(ただし、まずは第1巻からお読みください)

 大人が読んでも、学ぶことが多いシリーズです。この冬、全巻読破してみてはいかがでしょう。

※現在、紙の本は中古しか流通していないので、図書館か電子書籍がおすすめです。電子書籍には、読書専用リーダーを。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。健康的ではつらつとした、子どもたちだけの冒険小説です。あっさり書いていますが、けっこう危険な場面もあり、しかし子どもたちは冷静な判断で切り抜けます。

 読後はうなぎが食べたくなるかもしれません。そうでなければ、熱々のお茶に、ずっしりとしたパウンドケーキでひとやすみ。ロジャの大好きなチョコレートか、ブラックベリーのケーキがおすすめです。

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