【風の丘のルルー】ほんとうの友情は手に入る? 児童小説の名作を電子書籍で。ロマンあふれる第三巻【魔女のルルーと時の魔法】【電子書籍】【小学校中学年以上】
風の丘のルルーのもとに、カーリンという元気で明るい女の子が訪ねてきました。お医者さんになりたいカーリン、魔女の知識を教えて欲しいというのです。勉強熱心なカーリンに心をひらいたルルーでしたが……
この本のイメージ 異世界ファンタジー☆☆☆☆☆ 時を超えて☆☆☆☆☆ 友情☆☆☆☆☆
魔女のルルーと時の魔法 風の丘のルルー 3 村山早紀/作 ふりやかよこ/絵 ポプラ社
<村山早紀>
1963年長崎県生まれ。日本の児童小説作家。「ちいさいえりちゃん」で毎日童話新人賞最優秀賞、椋鳩十児童文学賞を受賞。主な作品は『シェーラひめのぼうけん』『新シェーラひめのぼうけん』シリーズ、『風の丘のルルー』シリーズ、『はるかな空の東』などであり、近年は風早の街を舞台にした『コンビニたそがれ堂』シリーズ、『カフェかもめ亭』シリーズ等が人気を博している。
<ふりやかよこ>
山口県生まれ。 大分県立芸術短期大学油絵科卒。 「ばあちゃんママのなつやすみ」で絵本にっぽん新人佳作、「いらいらあきあきとりかえっこ」でニッサン童話と絵本のグランプリ優秀賞。
1999年にポプラ社から出版された名作です。現在は電子書籍で読むことができます。
児童文学の名作「シェーラ姫の冒険」の村山早紀先生の魔女シリーズ。シェーラ姫は太陽のような元気なお姫さまですが、ルルーのお話は、いつも少し哀愁を帯びています。
お話自体は、一話完結の形でどこから読んでもわかるようになっています。しかし、大きな流れはありますので、ルルーが風の丘で暮らすようになった第1巻から読み始めたほうがわかりやすいでしょう。まずは、第1巻「魔女の友だちになりませんか?」から。
「魔女の友だちになりませんか?」のレビューはこちら↓
今回のお話は……
はるか昔、どこか遠い国で。
魔女が人間から恐れられ、遠ざけられていた時代から、少し経った頃のこと。
風の丘に住む魔女ルルーのところに、カーリンという元気な女の子が訪ねてきました。
お医者さんになりたいカーリンは、魔女の知識を知りたいというのです。
最初は警戒していたルルーも、明るいカーリンに次第に心を開き、親友になります。
しかし、辺境の町で聞いた噂話から、カーリンに疑いを抱き、口論の末、家を飛び出してしまうのでした。
さまよったルルーは、満月の夜に願いをかなえてくれるという「願い川」で、無自覚のうちに願いをかけてしまい、思わぬ場所へと飛ばされてしまいます。
はたして、ルルーは風の丘に戻れるのでしょうか。
……と、言うのがあらすじ。
ルルーのお話は、初読なので1巻から順番に読んでいるのですが、いままでのなかではこの話がいちばん好き。
魔女という、迫害されてきた存在のルルーは、がんばりやだけど繊細でさみしがりやです。
そのルルーの性格を反映してか、毎回、物語の展開も哀愁を帯びていて、切ないものになってしまいがちなのですが、今回はカーリンとレニカという元気な女の子が出てきてくれて、沈みがちな雰囲気を引っ張り上げてくれるのです。
とくに、魔法おおかみのレニカは、おおらかで優しく、傷ついたルルーを受け止めてくれます。
ぬいぐるみのペルタはいつも一緒にいてくれるけれど少し皮肉屋なので、こういうまっすぐに自分を支えてくれる友だちができて、どんなにルルーの心は救われたでしょう。
ルルーは自分の存在と生き方について、真剣に悩み始めていました。
辺境の街で倒れていた若者を助け、重い病をなおしてあげたルルー。でも、そのせいで元気になった彼は兵隊さん志願して戦争に行ってしまいました。本人は喜んでいましたが、ルルーの心は痛みます。
自分がやっていることは良いことなのか、悪いことなのか……ルルーは悩んでしまいます。そのうえ、カーリンとの気持ちのすれ違いで、人とわかりあうことはできないのではないかと思いつめてしまいました。
人と人はわかりあえるのか、そして、自分のしていることはいいことなのか悪いことなのか……
悩みがちな人が、若いときに一度は悩むことかもしれません。わたしもそうでした。
その後、ルルーとレニカが出した結論は、わたしが若い頃に考えたこととかなり似ていて、心から共感しました。
ルルーの物語は、繊細で傷つきやすく、悩みがちな子におすすめです。長い時間を生きる魔女であるルルーは、なかなか理解できない人間たちとの距離をさぐりながら、懸命に生きてゆこうとします。
傷つき、もがきながらも、自分なりの道を見つけてゆくルルー。
彼女のひたむきな生き方は、きっとあなたの背中をそっと押してくれるでしょう。
残念ながら紙の本では入手困難ですので、電子書籍か図書館で。まれに中古で手に入ります。
漢字とひらがなの配分がほどよく読みやすい文章ですが、内容が哲学的なので小学校中学年から。読み応えがある物語です。総ルビ(すべての漢字にふりがな)なので、賢い子なら低学年からでも、コツコツ頑張れば読むことが出来ます。
電子書籍には、電子書籍専用の読書リーダー端末をおすすめします。メールやSNSで読書を邪魔されず、本を読むことだけに集中することが出来ます。また、電子書籍だと表示フォントを大きくすることも出来るので、目に負担をかけません。家のなかのスペースを圧迫することもないので便利です。
電子書籍、紙の本、図書館、それぞれに、それぞれのよさがあります。自分のライフスタイルにあわせて賢く使い分けたいものですね。
※この本は現在、Amazonでは新品の「紙の本」は入手困難です。マーケットプレイス、中古(古書)でお求めになるか、図書館、またはまれに書店にある場合があるので、お近くの書店の書店員さんにお尋ねください。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
おすすめです。
ルルーが生きる意味、人とかかわる意味について真剣に悩みますが、自分なりの結論を出すお話です。
しみじみとした情緒があり、HSCのお子さまのほうがより多くのメッセージを受け取れるでしょう。
毎回、物語の根底に哲学的なテーマが流れています。今、現在、苦しい状態にあるお子さまにもおすすめです。電子書籍でルルーの本を読んでみてくださいね。
読後は、ハーブティーでひとやすみを。
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