【プー横丁にたった家】少年の日の思い出と、黄色いクマ。羽生結弦選手の「相棒」の物語、完結編。【小学校低学年以上】

2024年2月17日

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プー横丁にたった家

羽生結弦選手のリンクサイド、キスアンドクライにいつもいる、黄色いクマ。「クマのプーさん」の原作をご存知ですか?少年の日の思い出を閉じ込めた名作です。今日は、その完結編「プー横丁にたった家」をご紹介。

この本のイメージ かわいい☆☆☆☆☆ なごむ☆☆☆ せつない☆☆☆☆☆

プー横丁にたった家 A.A.ミルン/作 石井桃子/訳 岩波少年文庫

<アラン・アレクサンダー・ミルン>
ロンドン生まれのスコットランド人で、イギリスの児童文学作家、ファンタジー作家、推理作家、詩人、劇作家。

 「クマのプーさん」は、いろんな装丁で出版されているので、どの版を買うかはお好みなのですが、岩波少年文庫版は、手軽に持ち歩けるメリットがあります。

 先日の、フィギュアスレート全日本選手権は、様々なドラマがあり、手に汗を握りましたね。

 今シーズン、どん底だった宇野選手がみごとな復活をとげ、優勝したのは、素直に「おめでとうございます」と言いたいです。本当に、よかったですね!そして、ステファン先生、よろしくお願いします!

 また、今シーズンで男子シングルを引退される高橋選手!おつかれさまでした。最後のショートプログラム、「フェニックス」は、個人的には現役期間最高の名作と言っていいと思いました。「この、ぜんぜん得点にならない部分の凄さを、いったい他人にどう伝えたらいいんだろう」と何度も思いました。あの部分を継承できる若手選手はいるのでしょうか。

 そして、羽生選手。ショートプログラム、素晴らしかったです。そして、フリーは悔しさがこちらにも伝わってきました。

 でも、NHK杯、グランプリファイナル、全日本選手権と三連戦になって、全部勝ち抜けた人は、ほとんど見たことがありません。この鬼スケジュールで、ショートとフリーあわせて四回転が六本以上入るという構成は、人類の限界に挑戦していると思います。でも、スター選手になると、どうしてもこの三試合は出ることになるので、難しい問題なんですよね…

 女子は、紀平選手の初優勝はめでたいですし、坂本選手の悔し涙にはぐっと来ましたし、本田選手の復活はうれしかったです。クリスマスシーズンになると、フィギュアスケートの季節だなあ、と思います。この季節に、いつも最高のわくわくをくれてありがとうございます!

 そして、プー。

 うれしいときも、つらいときも、いつも羽生選手のそばにいるプー。

 今回も、いてくれましたね。

 今日、ご紹介する本は、「クマのプーさん」の続編で完結編、「プー横丁にたった家」です。(前説が長すぎる!)

 この本には、トラー(ティガー)や、カンガとルー親子などが出てきます。前半はいつもの勘違いが勘違いを呼ぶトラブルをクリストファー・ロビンが解決する、ほのぼのストーリーです。

 が、後半にいきなりこの物語が終了する兆しが現れます。

 なんだかわからないけれど、クリストファー・ロビンがもうここにこられなくなる……

 つまり、現実の世界で、クリストファー・ロビンは「ぬいぐるみ遊び」を卒業する年齢にさしかかってきた、と言うことなんですね。

 「クマのプーさん」は、基本的に子供向けの童話なので、ほとんどのエピソードは、子供らしい、他愛も無い話ですすみます。とくに、プーの行動がとりとめもなく衝動的で、まさに幼児なので、子供感覚を忘れ去ってしまった大人が読むと、なにがなんだかわからない部分があると思います。(それを文章にできちゃった作者が凄いとは思うのですが)

 ところが、この物語のラスト、「クリストファー・ロビンとプーが、魔法の丘に出かけ、ふたりは、いまもそこにおります」の章だけは、大人のためのものだと思っています。子供時代にこの章を読んでも、おそらく、意味がわからないでしょう。ここだけがテイストがまったく違うのです。

 「クマのプーさん」シリーズは、この「プー横丁にたった家」のラスト12ページほどのために、買う価値がある、と強くおすすめいたします。

ここからネタバレ 平気な方だけクリック

 このあたりの文章が、読んでいて涙ぐんでしまうんですが(以下引用)

 「ぼくも、そういうのはすきだ。」とクリストファー・ロビンはいいました。「だけど、ぼくがいちばんしていたいのは、なにもしないでいることさ。」

 プーは。ずいぶんながくかかってかんがえてから、ききました。

 「なにもしないって、どんなことするんです?」

 「それは、ぼくが出かけようとおもっていると、だれかが『クリストファー・ロビン、なにしにいくの?』ってきくだろ?そうしたら、『べつになんにも。』っていって、そして、ひとりでいって、するだろ?そういうことさ」

 「ああ、そうか。」

 「ぼくたちがいまやってることが、なにもしてないことさ。」

 「ああ、そうか」とプーはいいました。

 「ただブラブラ歩きながらね、きこえないことをきいたり、なにも気にかけないでいることさ。」

 「はあ!」とプーはいいました。

 もう100年近く昔に執筆された本になりますが、このくだりは、心から共感します。「何もしてない時間」ってものすごく貴重じゃないでしょうか?それは、他人から見たときに、「ダラダラしてて何も生産してない時間」にされてしまうとしても。

 そして、まだ幼いはずのクリストファー・ロビンも、学校に行ってたくさん難しいことを勉強したりして忙しくなり、もう「なにもしないでいる」ことはできなくなった、と言うんですね。(かなしい)

 その後、プーとクリストファー・ロビンは連れ立って、魔法の場所「ギャレオン凹地」に行き、最後の会話をします。

 「たとえ、どんなことがあっても、プー、きみはわかってくれるね?」 (引用)

 ここでもう号泣ですよ。

 でも、プーはここで「わかるって、なにを?」って聞いちゃうんですよ。さすが、プー。プーってそういうクマですよね。なんで幼児をここまで理解しているのか。作者すごすぎる。

 大人になって、忙しくなって、いろんなつらい体験をして、「なにもしないでいる」ことができなくなっても、心の奥のたいせつな場所に、プーはいるよ。そこにいつでも帰っておいでね、というところでこの物語は終わります。

 素敵な話でしょう? 作者は、この童話が、小さい子どもたちを楽しませるだけでなく、大人になってから辛い目に遭っても、その人を守る御守りになってほしいと、願ったんだと思います。(実の息子、クリストファー・ロビンがその後どうなったかというと、わりと哀しい話になってしまうのですが……)

 こう考えると、羽生選手の傍に黄色いクマがいつも一緒にいるのも、深い意味を感じてぐっときてしまいますよね。

 新書か文庫で買って、カバンに入れて持ち歩き、元気の出ないときにカフェなどで読んでみるのもおすすめです。100年経っても、人間って、本質的にはあまり変わらないのだと思います。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ラストは泣いてしまうかもしれません。でも、支えてくれる言葉もあります。いい本です。泣いてもいいなら、おすすめです。

 

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