【森のささやきの標本室】森の音ってどんな音? 心に響く、音たちの絵本【小学校低学年以上】

2024年3月29日

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森のささやきの標本室 たなか鮎子/作 A&FBOOKS

「森のずかん」という本を読んでいたら、リリはいつのまにか森の中に。そこへ、こだまという女の子がやってきます。「森の音が消えてしまったの。一緒にさがしてくれる?」ふたりは、失われた音を探しに森を歩きます。すると……

この本のイメージ 不思議ファンタジー☆☆☆☆☆ 音の世界☆☆☆☆☆ 静寂の世界☆☆☆☆☆

森のささやきの標本室 たなか鮎子/作 A&FBOOKS

<たなか鮎子>
絵本作家、イラストレーター。ピコグラフィカパブリッシング&デザイン主宰。
1972年福岡県生まれ、宮城県に育つ。 パリ在住。 ロンドン芸術大学チェルシー校大学院修了。デザイン会社勤務を経て、個展を中心に活動中。2000年ボローニャ国際児童図書展の絵本原画展入選。
おもな絵本に『かいぶつトロルのまほうのおしろ』(文絵/たなか鮎子 アリス館刊)、『うらしまたろう』(文/令状ヒロ子 講談社刊)『フィオーラとふこうのまじょ』(文絵/たなか鮎子 講談社刊)、『星うさぎと月のふね』『マルーシカと12の月』『あきねこ』(文/かんのゆうこ 講談社刊)、『碧空のかけら』(文/かんのゆうこ エイト社刊)『針つくりの花むこさん』(文/瀬戸内寂聴 講談社)など。書籍装画に『1リットルの涙』『数学ガール』『幼子にきかせたい おやすみまえの365話』。(公式HPより)

 ヨーロッパで暮らす、たなか鮎子先生の物語絵本。初版は2022年6月です。

 お話は……

 ある日、「森のずかん」を読んでいたリリは、本の中から音が聞こえます。その音に耳をすませていると、いつのまにか森の中にいました。そこで出会った女の子、こだま。

 「森の音と、弟が消えてしまったので一緒にさがしてほしい」と言うこだまの願いに、リリは一緒に森を歩くことに。

 すると、深い霧のむこうに霧の精フォッグ氏のおうちがありました。そこにあるのは、「森のささやきの標本室」。そこに保管されていたのは……

 ……と、いうのがあらすじ。

 普段生活していると、クラクションやサイレン、駅のアナウンス、雑踏、人の話し声など、現代社会には音が多すぎます。
 本来は、鳥の鳴き声や風のそよぎ、川の傍にゆけばせせらぎの音も聞こえるのかもしれませんが、そのような繊細な音は、まったくかき消されてしまっています。

 この本は、そんな、現代の生活で忘れがちな「音」をテーマにしたファンタジーです。

 わたしは、母の胎内にいたときに国道沿いの騒音の多い家にいたため、普通の人より五月蝿い場所に耐性があります。どうやら耳に開閉可能な扉がついているようで、何かに集中しているときは、人の話し声などがあまり聞こえません。

 ところが、このブログでも時々登場する、知人のプログラマはたいへん耳がよく、常人が聞こえないような音でも聞き分けます。

 スピーカーやアンプの配線がおかしかったり故障しているらしい店や、妙に音が反響する建物などに入ると、数秒で店を出てしまいます(耳が大雑把なわたしは気がつかない)。「何かが激しく間違っている」らしく、耐えられないのだそうです。

 耳の良い人の世界では、何が聞こえているんだろうか……

 それは、ちょっぴり知りたい、世界の秘密です。
 この絵本は、そんな「音の世界」を視覚化したファンタジー。

 そこには、「音」だけでなく「静寂」も登場します。

たとえば霧や雪でとざされたとき。世界からは、いっさいの音が消え去ります。
「静寂」と言う言葉は、「静かで寂しい」と書きますが、すべての音が消えた世界では不思議と寂しい感じはしません。現代社会は、生活音や環境音などあまりにも音が多いので、時々、「まったく音がない世界」にひたると、かえって安心して癒されるのです。

 何にも追い立てられない、ゆったりとした時間がそこにあります。

 自然が与えてくれる、雨の音、風のそよぐ音、水が流れる音、鳥のさえずり、枯葉をさくさくと踏む音など、繊細でやさしい音たちの魅力と、すべての音を吸収する霧の持つ静寂の魅力。

 リリはこのふたつのすばらしさを知って、本の森から帰ってきました。

 現代の日本で忙しく生活していると、忘れがちな「音の世界」。小さな子どもの感受性を呼び覚ましてくれそうな絵本です。文章の量が多く、読み物としてもボリュームがあるので、小学校低学年から。けれど、すべての漢字に振り仮名が振ってあるので、読みやすいですよ。

 幼児期に何に興味を持つかは個性があり、言葉にこだわる子、絵や色に興味を示す子、「動き」に興味を示す子、「匂い」が気になる子、音にこだわる子など、その子が惹かれるものはさまざま。

 この絵本は、音をテーマにしたファンタジックなストーリーを美しいイラストで表現しており、言葉と絵、音と言う三つの要素を、空想と言う大きな力でくるんで子どもたちを惹きつけます。

 忙しい日常に疲れたら、早朝の公園にひとりで散歩に出て、耳を済ませてみましょう。リリのように、今まで気がつかなかった音が聞こえてくるかもしれません。

 子供から大人まで、やさしい音に癒されたい人におすすめの物語絵本です。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。自然が与えてくれる繊細な音たちの魅力に気づかせてくれる絵本です。読後は、早朝に公園や海、川のほとりに出かけてみましょう。

 いままで気づかなかった、たくさんの素敵な音に気づくことでしょう。

 ラベンダーのハーブティでほっと一息してくださいね。

 

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