【星の使者】「地球は回っている」。未知へ挑戦し続けたガリレオ・ガリレイを描いた、芸術的な大型絵本【4歳 5歳 6歳 7歳】

2024年3月30日

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星の使者 ガリレオ・ガリレイ  ピーター・シス/文・絵  原田勝/訳

何千年ものあいだ、ひとびとは、地球が宇宙の中心だと考えていました。その時代に地動説を唱え続けたガリレオ。自分の目で見たことを信じ、自分の信念を貫いたガリレオ・ガリレイの生涯を美しい絵で織り上げた絵本です。

この本のイメージ ガリレオ・ガリレイ☆☆☆☆☆ 芸術的☆☆☆☆☆ 詳細☆☆☆☆☆

星の使者 ガリレオ・ガリレイ  ピーター・シス/文・絵  原田勝/訳  徳間書店

<ピーター・シス>
ピーター・シス(Peter Sis, Petr Sis, 1949年5月11日~)は、チェコスロバキア出身でアメリカ合衆国の絵本作家、イラストレーター。
アニメーション制作者としてキャリアを開始したシスは、ロサンゼルス・オリンピックにおける東欧諸国のボイコットに対して、帰国を拒否し、アメリカへと移住した。
イラストレーターとしての児童文学への永続的な寄与により、2012年に国際アンデルセン賞画家賞を受賞した。主な作品は「マドレンカ」「夢を追いかけろ━クリストファー・コロンブスの物語」など。

<原田勝>
1957年生まれ。 東京外国語大学卒業。 長編の翻訳に「弟の戦争」「ハーレムの闘う本屋」「ペーパーボーイ」「コピーボーイ」「ヒトラーと暮らした少年」「夢見る人」、絵本の翻訳に「夜のあいだに」「セント・ギルダの子」などがある。

 原題はStarry Messenger. 原書初版は1996年。日本語版初版は1997年です。
 あまりにも美しい絵と、凝った構成に圧倒される大型絵本です。

 ガリレオ・ガリレイの生涯について、あらためてご紹介する必要もないかと思うのですが、一応、少しだけ。 彼は太陽の周りを太陽系の惑星が回っていると言う「地動説」を唱えた人です。

 当時、地球は不動のもので、地球の周りを太陽や月が回っていると考えられていました。それは、地球こそが神様が人間のために創りたもうた栄えある大地と思われていたからです。

 地球が丸いのはずいぶん前にわかっていました。遠くの水平線から船の姿が近づいてくるとき、マストの先から見えてくるので、船乗りたちがなんとなく気がつき始めたのでした。そして、望遠鏡が開発され、丸い地球の周りに球体の惑星が浮かんでいることもわかってきました。

 それでも、地球が宇宙の中心で、ほかの惑星たちは地球の周囲を回っているのだというのは、当時のキリスト教に裏打ちされた強固な考えでした。

 ちなみに、ガリレオは「人類ではじめて」地動説を唱えた人ではなく、最初に地動説を唱えたのはコペルニクスです。ガリレオはこのコペルニクスの地動説の正しさをより強固にした人と言えます。

 この絵本では、ガリレオの人生の前半の功績も詳しく描いています。
 25歳でピサ大学の数学器用樹煮なり、その後パドヴァ大学の数学教授になったこと、アリストテレスのあやまちを証明する実験を行ったこと、望遠鏡や顕微鏡、温度計、コンパス、静水秤など、科学器具の発明や改良など……

 しかし、彼は晩年「地動説」を提唱して宗教裁判にかけられ、敗訴して異端として裁かれました。
 おそらく「地動説は間違っている」と言えば、許されたのだと思います。それでも、ガリレオは地動説を捨てませんでした。

 これがどんなに困難なことかは、大人になるとわかってきます。

 日本は「和」を尊ぶ国なので、集団内の秩序や調和が大切です。
 それはむやみに争わない、おだやかな良さがあるのですが、他人とは違う考え方や価値観に対して狭量だという欠点もあります。

 そんな環境では、まれに、「災難自己責任論」を唱える人がいます。 仏教の「カルマ━因果応報」を曲解した考えともいえます。

 カルマというのは、自分の行ったことが自分に返ってくると言う仏教の教えで、悪いことをしたら自分に罰が返ってくるし、いいことをしたら自分にいいことが返ってくると言う考え方です。この考え自体は、道徳教育として良いことなのですが、まれに暴走して、他人を裁くような考えに利用してしまう人がいます。

 それが「災難自己責任論」です。「ひどい目に遭った人は、ひどい目に遭ってしかるべき過去の行いがきっとあったにちがいない」と言う暴走した考えで、このような極論を唱える人はもちろんまれです。そんなこと言い出したら、大地震や津波で亡くなった人は何か悪事を働いたのか、ってことになりますからね。(そんなわけはない)

 ガリレオの人生もそうです。
 彼が宗教裁判で裁かれて、苦しい晩年をすごさなければならないようなことを若いときにしたのか、と言うと、そんなことはまったくありません。さかのぼると立派な功績ばかりです。この方の発明や発見のおかげでどれだけ科学が発展し、どれだけの人々が助かったか。

 この理不尽さや悲劇性が、彼のエピソードが後世に語り継がれることになったゆえんでしょう。
 1633年6月に有罪となり1642年1月8日に死去したガリレオが、教会に許されたのは300年以上経った後の1992年10月31日です。

 発達した科学文明によって、豊かに暮らせる現代のわたしたちは、一人残らずガリレオの恩恵に預かっています。これだけの多くの人々を幸せにしたガリレオの人生は、価値あるものでなくてなんでしょうか。

 この絵本「星の使者」は、わざと簡単には読めないように作られています。
 「小さな子どもにわかりやすくガリレオの伝記を読ませる」というような、単純な絵本ではないようです。

 渦巻状に書かれた文章や細密な絵は、パズルのようでもあり、暗号のようでもあり……
 文章は縦横無尽に飛び、さらりと読めるようなところがまったくない。それなのに文章は、すべての漢字に振り仮名がふってあります。(でも、漢字は使われている)

 小さな子どもへの「頑張って読んでほしい」と言う願いが感じられるのです。
 そして、絵は芸術的に美しい。するどい感受性で「精一杯感じ取ってほしい」と言う願いも感じられます。

 星が好きで不思議なことが大好き、科学が大好きなお子さまに、丁寧に丁寧に読んでいただきたい絵本です。読み聞かせは難しいですが、大判の本なので一緒に読みながら、あれこれとお話するのもいいかもしれません。

 ガリレオの時代のヨーロッパの地図もあり、今の地図と比べてみる面白さもあります。
 何度も何度も読んで、彼がどうしてそうなったのか、そして、今の世界はどうなっているのかをゆっくり考えることができるよう、作られています。

 頭で学ぶことも、美しい絵から感じ取れることも多い絵本です。
 表紙もすばらしく、読み終わったらリビングにインテリアとして飾っても。

 ガリレオを愛する大人にもおすすめします。お子さまやお孫さんへのプレゼントにしても素敵です。美しい絵本なので、もしプレゼントがかぶったとしても、一冊は保存用にすればなんの問題もありません。

 心弱くなりそうなとき、静かに励ましてくれる絵本でもあります。
 天変地異、伝染病、動乱と、大変な時代ですが、信念を貫いた人の美しい絵本を今こそどうぞ。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 最後に宗教裁判にかけられ有罪となってしまう、ガリレオの非業の生涯が美しい絵とともに描かれます。理不尽な史実ですが、HSPHSCのお子さまのほうが多くのメッセージを受け取れるでしょう。

 繊細な絵が美しく、絵を見ているだけでもうっとりします。
 癒されるというより、励まされる、気が引き締まる絵本です。

 

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