【クリスマスをとりもどせ!】マット・ヘイグのクリスマス三部作完結編。エルフの国で暮らす人間の女の子の物語

2024年4月1日

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クリスマスをとりどせ! マット・ヘイグ/文 クリス・モルド/絵 杉本詠美/訳 西村書店

ファーザー・クリスマスが助けた女の子アメリアは、エルフヘルムで暮らしていました。昔のように飢えることも無く、家もあるアメリア。けれど、慣れないエルフヘルムの暮らしに苦しむようになり……

クリスマスをとりどせ! マット・ヘイグ/文 クリス・モルド/絵 杉本詠美/訳 西村書店

<マット・ヘイグ>
イギリスの作家。大人向けの作品に、「今日から地球人」(早川書房)などの小説やビジネス書がある。児童書作品で、ブルー・ピーター・ブック賞、ネスレ子どもの本賞金賞を受賞。

<クリス・モルド>
イギリスの作家、イラストレーター。文と絵の両方を手がけた作品を多数発表するほか、「ガチャガチャゆうれい」(ほるぷ出版)など多くの子どもの本のイラストも担当し、ノッティンガム・チルドレンズ・ブック賞を受賞。

<杉本詠美>
広島県出身。広島大学文学部卒。おもな訳書に、「テンプル・グランディン 自閉症と生きる」(汐文社、第63回産経児童出版文化賞翻訳作品賞を受賞)など。

 昨年Netflixで映像化された「クリスマスとよばれた男の子」「クリスマスを救った女の子」に続く、クリスマス三部作の完結編です。
 原題はFather Christmas And Me.アメリカでの初版は2017年。日本での初版は2018年です。

 お話が、最初から完全に続いているので、まずは「クリスマスとよばれた男の子」からお読みください。

 「クリスマスとよばれた男の子」のレビューはこちら

 今回のお話は……

 貧しく苦しい生活から助け出され、エルフヘルムで暮らせるようになったアメリア。おいしい食べ物はたくさんあるし、あたたかい家もあるし、大好きなファーザー・クリスマスもいます。

 けれど、魔法の力がないアメリアは、エルフたちの暮らしにあわせるのに四苦八苦。何をやっても上手にできません。

 そんなとき、アメリアは悪いエルフ、ファーザー・ヴォドルの陰謀を知ってしまいます。
 ファーザー・クリスマスを助けなきゃ。

 アメリアは真実の妖精とともにおそろしい陰謀を暴くために立ち上がります……

 ……と、いうのがあらすじ。

 ファンジーの形をとっていますが、人間のアメリアが慣れないエルフヘルムの生活で四苦八苦することや、人間のアメリアを警戒してエルフたちが心に壁を作ってしまうこと、そして、ふだんは信頼関係で結ばれ、敬意さえ抱いてもらっているはずのファーザー・クリスマスがひとたび悪い噂がたったときに、あっさり疑われてしまうことなど、人間社会の問題も風刺しています。

 もちろん、慣れない暮らしに降り舞わされすぎてエルフたちにあと一歩心を開くことができないアメリアや、先入観で距離をおいてしまうエルフたちには、問題がないとは言えません。

 しかし、誰もが悪人だと認識しているはずのファーザー・ヴォドルが、嘘っぱちだらけの新聞を「ほんとうの新聞」と言って配ったとき、またしても多くのエルフがその扇動にまんまと乗って騙されてしまうなど、個人の日々の努力の積み重ねや地道な信頼関係がばからしくなってしまうような世の中の理不尽もリアル。

 どうしてそんな嘘を信じてしまうんだろう、と言う純粋な問いに対するこたえは「そのほうが面白いから」。

 人は真実なんて求めてないんだ、面白いほうを信じるんだ、と言うヴォドルの主張は、現実世界のマスコミや噂の世界を見ると、なんだか納得してしまいます。

 いえいえ、そこで納得してはいけません。
 人は絶望なんかしちゃいけない、希望を持たなくちゃ。「不可能」なんて言っちゃいけない「可能」にするんだ、と言うのが、この「クリスマス三部作」の一貫したテーマです。

 アメリアがどうやってこの困難を乗り越えるのか、どんなふうに「不可能」を「可能」にするのか、は読んでみてのお楽しみ。

 字はほどよく行間があいていて読みやすく、簡単な漢字以外は振り仮名が振ってあります。小学校高学年から。でも、賢い子なら中学年から読めると思います。

 今回も「真実の妖精」が大活躍しますよ!

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。わくわくする女の子の冒険物語です。クリスマスの季節にぴったり。

 読後は、クリスマスオレンジとも呼ばれるミカン(この小説には「ミカン」として登場しますが、本当に日本のみかんのことだそうです。日本のみかんは世界中で愛されてるんですね)と、熱々の紅茶でティータイムはいかがでしょう。

 

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