【ヒミツのひだりききクラブ】右利きが知らない、左利きの世界。サウスポー伯爵とともに探検するレアキッズのための絵本【4歳 5歳 6歳】

2024年4月2日

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ヒミツのひだりききクラブ キリーロバ・ナージャ/作 古谷萌と五十嵐淳子/絵 文響社

とあるかわのほとりに たたずむおしろ。 そこにむかう サウスポー伯爵。そう、ここは「ヒミツのひだりききクラブ」。ひだりききの世界を案内しよう……

この本のイメージ 左利き☆☆☆☆☆ 左利きの偉人☆☆☆☆☆ 左利きの特徴☆☆☆☆☆

ヒミツのひだりききクラブ キリーロバ・ナージャ/作 古谷萌と五十嵐淳子/絵 文響社

<キリーロバ・ナージャ>
ソ連(当時)レニングラード生まれ。両親の転勤とともに6カ国(ロシア、日本、イギリス、フランス、アメリカ、カナダ)の各国の地元校で多様な教育を受けた。その中で、何事も絶対的な「ふつう」は存在せず、誰もがどこかちょっとユニークな部分を持っていることに気づく。移民。左利き。ペスカタリアン。人見知り。日本では、早生まれ。他の著書に「ナージャの5つのがっこう」(大日本図書)がある

<古谷萌>
1984年生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。株式会社電通を経て、2017年「Study and Design」設立。グラフィックデザインを中心に、商品開発、CI、VI、広告キャンペーン、パッケージデザイン、ブックデザイン、イラストレーション、キャラクター開発など、幅広い分野で活動。

<五十嵐淳子>
東京生まれ。緑が多めな東京育ち。 多摩美術大学造形学科舞台美術コース卒業。 物語好き。 都内の2つのデザイン会社でグラフィックデザイナー・アートディレクターを経て、2022年よりKiiro Design(キイロデザイン)という会社をつくり、仲間とデザイン活動を始める。

 

 古いアイドルのヒット曲に「わたしの彼は左きき」って歌がありました。麻丘めぐみさんという方の歌です。どんな歌かお知りになりたい方は、ぜひ検索してみてください。気絶しそうなくらい愛らしい女の子が歌っていますよ。

 本日ご紹介するのはそんな「左利き」について描かれた絵本です。初版は2021年。

 わたしが子どもの頃は、左利きというと「矯正しなければならない」とされていて、かなり厳しく右手を使うようにしつけをうけた時代でした。
 わたし自身は右利きですが、身近な左利きの子たちが相当な訓練でちょっと見ではわからないくらいに右手を使えるようにしつけられてきたのを知っています。

 自分が左利きか、または家族や近しい人に左利きの人がいないと、利き手についてあまり深く考えた事はないかもしれません。
 けれども、この世界は、かなり右利き向きにできています。

 たとえば、駅の自動改札。あれは、切符を右手に持つことが前提で作られています。学校の教室の設計は、必ず左側から陽がさすように作られているので、左利きだとノートに影ができてしまいます。

 いちばん使いにくいのははさみです。はさみは、たいてい右利き用に作られています。定規もよく見るとそうですね。カメラも。

 そんなわけで、左利きの人は幼児期に右利きに矯正されることが多いのです。左利きのままだと生活が不便だから。
 でも、とっさのときの動きなど「利き手じゃないとうまくできない」事はわりと多いので、右手をなんとか使えるようになったとしても不自由さは残ります。

 これは、そんな「左利きの世界」を描いた絵本。

 日本の左利き比率は4.7%。かなり少ないですね。
 ところが、これがアメリカだと13.1パーセント。一割を超えています。ほかにも一割を超えているのは、オランダ、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、イタリア。一割を超えるとかなり社会との関わり方も違ってきそうです。

 左利きの偉人も掲載されています。レオナルド・ダビンチは筆致で左利きとわかるようです。モーツァルトやヘレン・ケラー、ベイブ・ルース、アイルトン・セナ、ウーピー・ゴールドバーグ、レディ・ガガ、バラク・オバマなどなど……左利きとわかっている偉人たちが掲載されています。

 芸術家やスポーツ選手には多いですね。というよりも、芸術やスポーツは利き手や効き足を矯正して実力を発揮する事は難しいからでしょう。芸術分野をつかさどるという右脳は身体の左側と密接な関わりがあるのとも関係しているようです。

 また、中世では左利きは「悪魔の子」「魔女」と言われて迫害されてきた歴史があることも書かれています。

 右利きのために便利につくられた世界で生きている左利きの人たち。
 この絵本では、そんな彼らの気持ちを受け止めて、これから右利きの世界に本格的に飛び込んでゆく左利きの子どもたちと、これから広い世界で左利きの子に出会うであろう右利きの子どもたちのために優しいメッセージを送っています。

 多くの小さな子が社会に出てはじめて出会う、いちばん身近な「レアな子」が、左利きの子たちです。
 なぜその子が左利きなのか、それは誰にもわからない。
 そして、左利きの子は一生、左利き。

 右利きのために作られた世界で左利きの子は、ときどきイライラするかもしれない。自信をなくすかもしれない。
 それでも、左利きの子には楽しく乗り越えてほしいし、右利きの子はそんな気持ちを理解して励ましてあげてほしい。
 わたしたちは、みんな「ちがう」んだから。

 文章はほとんどひらがなとカタカナですが、たまに漢字も使われています。しかし、すべての漢字には振り仮名が振ってあるので、がんばればひとりでコツコツ読むことができます。

 けれど、お子さまが左利きの場合は、ぜひ、読み聞かせしてあげてください。
 字を読んだりする時期にはすでに鉛筆やお箸などのトレーニングを始めているはず。
 もしも、右手でも使う練習もしているならば、そのときのイライラやもどかしさへの励ましになるかもしれません。

 令和では利き手矯正はそれほど厳しくされないかもしれませんが、やはり、利き手が違うと不便さはあります。

 左利きは希少ではありますが少ないと言うだけで「悪い」わけではありません。
 右手を使えるように訓練するのは多数派の右利きのために作られた社会に適応するため、あくまで利便性のためで「悪いところをなおしている」わけではないはず。

 でも、なかなかうまくゆかないと、イライラして「自分が悪いのか」と思ってしまうこともあるかもしれない。

 この本は、そんな左利きのもどかしさに寄り添い、右利きの世界とのあいだに橋をかける絵本です。右利きの子が左利きの世界を垣間見て、その苦労を知ることにもなり、どちらの子が読んでも新しい発見や学びがあるように書かれています。

 左利きのお子さま、パパやママが左利きのお子さま、お友だちに左利きの子がいるなど、利き手について考えるようになったすべてのお子さまにおすすめの絵本です!

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。
 右利きの子が右利きの世界で生きていると普段は考えもしなかった左利きの世界について、わかりやすく書かれています。HSCのお子さまのほうが多くのことを感じ取れるでしょう。

 字はほどよく大きく、絵は可愛らしくてとても読みやすい絵本です。
 左利きの小さなお子さまなら励まされ、右利きの小さなお子さまなら世界が二倍に広がった気持ちになるでしょう。

 

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