オクタビアヌスの口車にのせられガイアとの戦いの発端をひらいた罪でアポロンは父ゼウスによって人間の姿に変えられて天界から落とされる。しかし、下界では再び新たな悪が生まれようとしていた。いや、生まれていたのだ、すでに……(アポロンと5つの神託 1 太陽の転落 【パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々シーズン3】 リック・リオーダン/作 金原瑞人・小林みき/訳 ほるぷ出版 )
ギリシャ神話の神々が現代によみがえる、リック・リオーダンのファンタジー「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」(Percy Jackson & the Olympians) のシーズン3「アポロンと5つの神託」(The Trials of APOLLO)の第1巻「太陽の転落」です。 原題はThe Trials of APOLLO;The Hidden Oracle.原書初版は2016年。日本語版初版は2017年。
このシリーズは、シーズン1から完全にお話が続いていますので、まずは「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」第1巻「盗まれた雷撃」からお読みください。
シーズン1第1巻のレビューはこちら ↓
今回のシリーズの主人公は太陽神アポロン。 前回のガイアとの戦いで、その発端となったとみなされ、父ゼウスによりレスター・パパドプロスと言う人間にされて下界へ落とされます。
助けてくれたのはメグ・マキャフリー と言う風変わりな女の子。成り行きでアポロンはメグに仕えることになり、珍道中がはじまります。
ハーフ訓練所にたどりついたアポロンたちは、デルポイの神託は機能不全。ハーフや神々をつなぐイリスメッセージなども使えなくなっており、異変がおきていました。
どうやら新しい敵が現れたようです。 さて、神託も得られないまま、アポロンたちはこの危機をどう乗り越えるのか……?
……と、いうのが今回のあらすじ。
神であるアポロンが神の力を取り上げられ、人間の貧民街へ落とされるところからはじまるこの物語、いままで「人間離れした自分の力に驚く」人間のパーシーやジェイソンの物語を読んできた読者にとって、かなり面白い逆転現象です。
なんでも自由自在にできたアポロンにとって、「ただの人間」の生活は不自由なことばかり。しかも、メグという風変わりな女の子の従者になる契約をしてしまい、さらに苦労が倍増します。
でも、根っから楽天的で自信満々なアポロンは、落ち込むことはあるけれど、ふつうの人間よりもずっとポジティブ。たくましく、ずうずうしく、困難に立ち向かいます。こういうところはいままでの主人公にはなかった魅力。
やがて、何千年も生きてきたのに下界の人間たちについて深く考えることもなかったアポロンは、人間の身体になったことで、人間らしい感情や愛情を抱くようになるのでした。
訓練所の子どもたちとの親子関係も、自分のほうが年下になってしまったことで最初はギクシャクしますが最終的にはぐっとくる場面も。
新たな敵の正体も判明し、懐かしい仲間たちも集結してきました。
文章はアポロンの一人称なので読みやすいのですが、かなりボリュームがあり鈍器にもなりえる分厚さ 。すべての漢字に振り仮名があるわけではないので、小学校高学年から。小説を読みなれた方向けです。
また、固有名詞がアメリカ名、ローマ名、ギリシャ名と難しいカタカナの名前が入り乱れるので、読むと混乱してしまう方もいるかもしれません。キャラクターの数も多め。メモやふせんを駆使して読むのがおすすめ。
各章のタイトルは翻訳の金原先生と小林先生の粋な翻訳で、アポロンの大好きな五・七・五の「俳句」形式になっているのも注目。
新しい物語の開幕に心躍る第1巻。今度はどんな冒険が待っているのでしょうか。続きが楽しみです。
※この本には電子書籍もあります。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
戦闘シーンも流血シーンもあります。気をつけて書かれているのであまり気になりません。「そういうシーンがあるのだな」とあらかじめ知っていれば大丈夫という方にはおすすめ。群像ものが好きな方に。 ただし、キャラクターや怪物の名前がややこしいので、メモをとりながら読むとわかりやすいでしょう。
いつもながら、パーシーのママのチョコチップクッキーがおいしそう。 読後はチョコチップクッキーとコーヒーでひとやすみ。
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