【魔女のシュークリーム】100倍のシュークリームを食べて「いのち」を救え!とぼけたファンタジーストーリー【小学校低学年以上】
ダイスケはシュークリームがだいすき。あたまのなかはいつもシュークリームのことでいっぱい。そんなダイスケを奇妙な動物たちが迎えに来たのだ。自分たちの「いのち」を助けてもらうために……
この本のイメージ ファンタジー☆☆☆☆☆ 魔女☆☆☆☆☆ シュークリーム☆☆☆☆☆
魔女のシュークリーム 岡田淳/作 BL出版
<岡田淳>
日本の児童文学作家。著書『雨やどりはすべり台の下で』で産経児童出版文化賞を、『こそあどの森の物語』で野間児童文芸賞を受賞し国際アンデルセン賞の国際児童図書評議会(IBBY) オナーリストに選ばれた。翻訳家、挿絵・イラスト作家、エッセイストでもある。
ハロウィンシーズンに入りましたので、魔女や魔法にちなんだ本をご紹介しています。
これは2013年初版。「こそあどの森」や「二分間の冒険」などで知られる岡田淳先生の小学校低学年向けのファンタジーです。
お話は……
ダイスケはシュークリームが大好き。
お姉ちゃんのおやつのシュークリームまで食べてしまい、お母さんに怒られるほど。頭の中はシュークリームのことでいっぱいです。
そんなダイスケのもとに、しゃべる黒猫とカラスがやってきます。
ダイスケにとあるシュークリームを食べてもらいたい。そして、自分たちの「いのち」を助けてもらいたい。
それが黒猫たちの頼みでした。
いったい、それはどんなシュークリーム?
はたして、ダイスケは黒猫たちの「いのち」を助けられるの?
……と、いうのがあらすじ。
短いお話なのですが、とぼけた設定でとにかくゆかいで楽しい。
ダイスケは日ごろはおねえちゃんのおやつを食べてしまうくらいシュークリームが大好き。
お手伝いもしない、勉強もしない、頭の中はシュークリームのことだけ。
他人に迷惑をかけてしまうくらいのダイスケの食い意地が、ひょんなことから異世界で役に立つことになるのでした。
いやあ、どんなことでも「好き」と言うパワーは何かの役に立つことがあるんですねえ。
これが「動物が大好き」とか「花を育てるのが得意」とか、同じ「好き」でももう少し世の中の役に立ちそうな「好き」だったら理解はできるのですが、ダイスケの場合は「シュークリームが好き」。しかも、作るのじゃなくて食べるのが好き。
こんなどうしようもない「好き」が、誰かの「いのち」を救うために役に立つというわけのわからなさ。
その「わけのわからない」力でダイスケは大活躍します。
もう、笑うしかありません。
でも、考えてみれば、まだまだ小さな子どもの頃は「食べる」ことは大切なこと。
大人になってからは「よく食べる」ことを褒められることはないけれど、小学校低学年くらいまでは「よく食べる」ことは親から褒められるような大切なことでした。もちろん、好きなものだけを食べて嫌いなものを残していたら怒られるけども。
だいたい、年寄りになるとたとえ好きなものでもそんなに大量には食べられなくなりますからね。「食べる」と言うことも、若さの特権ではあります。
「大好物をおなかいっぱい食べる」は、小さな子どもの憧れ。そのうえ、誰かのピンチを助けるヒーローになれたら……
字はかなり大きめで、すべての漢字に振り仮名がふってある総ルビです。そんなにボリュームはないので絵本を卒業して「本」を読み始めたお子さま向け。
五十音が読めればひとりでコツコツ読みきれる分量ですし、とにかく明るくゆかいなファンタジーなのでついつい楽しみながら読めてしまいます。
もちろん、読み聞かせにもおすすめ。
小さな子どもが大好きな食べものを元気よくたいらげるだけで誰かの役に立つ、子どもにとっては夢のようなお話です。
長いお話の読みはじめにいかがでしょう。
物語を読むこと、空想することの楽しさを教えてくれるファンタジー。
ハロウィンシーズンの読書にぜひどうぞ!
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はまったくありません。
楽しくてゆかいなファンタジーです。肩の力を抜いてアハハと笑うことができ、疲れた心がほどける面白さ。
読後のおやつはもちろんシュークリーム。ぜったい食べたくなりますから、あらかじめご用意を。
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