【氷の上のプリンセス・ジュニア編３】ジュニアグランプリファイナル開幕！ フィギュアスケート愛あふれる少女小説ジュニア編第三巻【小学校中学年以上】
全日本ジュニア選手権に出場し、ジュニアグランプリファイナルに向けて練習に励むかすみは、ある日「瀬賀くんに彼女が出来た」と言うネットニュースを見てショックを受ける。はたして、グランプリファイナルのゆくえは？（氷の上のプリンセス・ジュニア編３ 風野潮/作 Nardak/絵 講談社青い鳥文庫）
この本のイメージ フィギュアスケート☆☆☆☆☆ 少女小説☆☆☆☆☆ 成長☆☆☆☆☆
氷の上のプリンセス・ジュニア編３ 風野潮/作 Nardak/絵 講談社青い鳥文庫
＜風野潮＞
大阪府生まれ。大学時代は吹奏楽部に所属。第38回講談社児童文学新人賞を受賞した「ビートキッズ」で1998年にデビュー。同作で、第36回野間児童文芸新人賞・第9回椋鳩十児童文学賞受賞。その他の作品に「クリスタル エッジ」シリーズ、「竜巻少女」シリーズ、「レントゲン」(いずれも講談社)などがある。
＜Nardak＞
韓国在住のイラストレーター。おもな挿絵に、「失恋探偵ももせ」(電撃文庫)、「睦笠神社と神さまじゃない人たち」(宝島社)などがある
<この季節おなじみのスケートトーク。不要な方はスクロールしてね>
先週末は中国開催、フィギュアスケートグランプリファイナルでした。グランプリシリーズの六戦を戦い抜いたなかでシングル、ペア、アイスダンスの六人六組がグランプリファイナルで競います。
まずは、女子。
坂本花織選手、金メダルおめでとうございます！これで世界選手権、四大陸選手権、グランプリファイナルとキャリアグランドスラム達成です。
堂々たる滑り、わずかなミスはありましたが冷静沈着なリカバリー、すばらしい演技でした。スピード感あふれる演技、でっかくて豪快なジャンプ。そして、さわやかで明るい笑顔。大好きな選手です。落ち込んでいるときに坂本選手の演技を見ると元気になります。全日本もぶちかましてくださいね！
吉田陽菜選手、銅メダルおめでとうございます。ショートフリーともにトリプルアクセルを投入する、アグレッシブな構成がかっこいい。ショートでは転倒しましたが、フリーでは引きずらずにしっかりリベンジ。竜巻のようなトリプルアクセルでした。和をイメージしたフリーは鶴の優雅さを表現、ジャンプも決まって素晴らしい仕上がりでした。このまま波に乗っていきそう。全日本、期待しています！
住吉りをん選手、順位的には悔しいと思いますが、内容的にはすばらしい演技でした。とくにフリーは四回転トゥループ以外は文句なしと言っていいほどの出来。このハイレベルな戦いを経験したことは、きっと糧になると思います。全日本ではすばらしい演技を魅せてくれるでしょう。楽しみです！
そして男子。
宇野昌磨選手、銀メダルおめでとうございます！あのマリニン選手のショートの演技を見てしまっても自分の演技ができる、それが宇野選手の強さ。今回もすばらしい演技をありがとうございます。フリー後半の3A1Eu3Fでは、思わず声が出ました。淡々としているように見えて、こういうところが宇野選手の熱いところ。宇野選手の魅力は表現力ではありますが、それもショーではなく試合の場でぎりぎりの鍔迫り合いのなかで繰り出される技が芸術的演技と融合しているのが魅力なのです。
これからも、できるだけ長く「宇野ワールド」を見たい。その願いがかないますように。
鍵山優真選手、銅メダルおめでとうございます。まだまだ秘めた潜在能力が開花するのを待っている、進化の過程まっただなかの鍵山選手です。カロリーナ先生の指導がだんだん染み渡ってきて、身のこなしや所作が一段と優雅になってきました。このうえで四回転の種類を増やしたりとまだまだ伸びしろ満載なのが末恐ろしく、そして楽しみです。全日本、応援しています！
三浦佳生選手、体調不良ななか渾身の演技をありがとうございました。中国のフィギュアスケートファンは昔から苦難に立ち向かう選手が大好きなので、今回、おそらく中国のスケートファンの心を鷲づかみにしたことでしょう。
万全の状態ではないのに、四回転の数を減らすこともなくむしろ挑戦する、魂の演技でした。きっと持てる力をすべて搾り出したと思うので、ゆっくり休んで回復してください。全日本で元気な姿を見られることを祈っています。
海外選手のことも少し。
イリヤ・マリニン選手、優勝おめでとうございます。……とんでもない怪物くんに成長してしまったマリニン選手。
彼のクワドアクセルは空を駆け上がるかのようです。しかも今回は四回転ループも投入。ついに全種類の四回転を試合に投入したことになります。クワドアクセルの基礎点の低さを補ってあまりあるトリプルアクセル以上のアクセルを三本入れられる強さ。そのうえ、4Lz1Eu3Sとか3Lz3Aとか、投入されるコンビネーションジャンプも、もうわけがわからないく凄い。
ラスト近くに投入される必殺技「ラズベリーツイスト」とか、まるで少年漫画です。バタフライっぽく跳躍する選手は他にもいるのですが、マリニン選手のは跳躍が高くて身体が完全に横向きになってしまったりしてこれまたわけがわからない。
はたして彼に勝てる選手はいるのでしょうか。個人的にはアルトゥル・ガチンスキー選手がデビューした当時の羽生選手とのしのぎを削る戦いを思い出します。日本人選手と熱い戦いが繰り広げられることを期待します。
そうそう、マリニン選手の夢は「サイドバイサイドでクワドアクセルを跳ぶこと」だそうです。は、羽生選手……
アダム・シャオ・イムファ選手、フリーの巻き返し、すばらしかった！高い技術を持ち、表現力も優れた選手です。今回は緊張やプレッシャーもあったと思いますが、フリーで渾身の演技を魅せてくれてありがとう。世界選手権が楽しみです！
そして、今回、同時開催されたジュニアグランプリファイナルから大ニュースが！
男子、中田璃士選手と女子島田麻央選手のアベック優勝です。
島田麻央選手はフリーでトリプルアクセルと四回転トゥループを同時に成功させており、これも日本女子初の快挙です。おふたりは、年末のシニアの全日本選手権に出場すると思われるので、そのときにきっとテレビの前のお茶の間でも演技を見ることができるはず。楽しみですね！
<ここからが本題。本日の本紹介>
さて、本日ご紹介するのは「氷の上のプリンセス・ジュニア編３」。ノービス編の第１巻からコツコツ読み続けてついにジュニア編に突入しました。初版は2018年12月。たいへん人気のシリーズで、ノービス編から始まり、ジュニア編と続き、つい先日シニア編が完結したもようです。
このシリーズは、第１巻から完全にお話が続いていますので、レビューを読んで興味を持たれた方は、まずは「氷の上のプリンセス」ノービス編第１巻「ジゼルがくれた魔法の力」からお読みください。
ノービス編第１巻のレビューはこちら↓
https://www.mmanorhouse.com/2022/11/07/post-11458/今回のストーリーは……
全日本ジュニアを戦い抜き、シニアの全日本選手権の出場資格を得たかすみはジュニアグランプリファイナルに向けて練習に励んでいました。
ところがある日、クラスメイトから「瀬賀くんにカナダ選手の彼女がいる」と言うネットニュースを見せられ、心が乱れてしまいます。
名古屋で開催されるグランプリファイナルで瀬賀くんに再会するのを楽しみにしていたかすみでしたが、大試合のプレッシャーや、瀬賀くんのニュースのショックが重なって思いもよらないことに……
……と、いうのがあらすじ。
前回はインターネット時代のSNSの書き込みでショックをうける少女たちを描きましたが、今回は根も葉もないゴシップニュースに傷つく様子が描かれています。
華やかな衣装に身を包んで笑顔で演技をしている彼女たちも、まだ10代のアスリート。ゴシップニュースには免疫もなく、どうしたらいいのかわからないまま、かすみちゃんはうちのめされてしまいます。
でも、こういったことも乗り越えていかないといけないんですね……こういうときは涼森美桜ちゃんがいっそう頼もしく感じます。
最初はいじわるに感じられた美桜ちゃんがこんな立ち位置になるとは。彼女はピリリと辛いところはあるけれど、核心を突くところもあり、そして、わかりにくいけれど心に優しさをたくさん持っています。
落ち込みやすいかすみちゃんに発破をかけてくれつつ、繊細なかすみちゃんらしさも大切にしてくれている。
かつての瀬賀くんポジションのような、ちょっぴり毒舌彼氏っぽいところもある男前な美桜ちゃんです。
トリプルアクセルがだんだん安定して跳べるようになってきたかすみちゃんは、ジュニアでトップ選手の仲間入りをするようになりました。まだまだ繊細なところもあるかすみちゃんですが、少しずつ自信も持てるようになってきました。
ジュニアグランプリファイナルが終わると次は全日本選手権です。かすみちゃんはベストを尽くせるでしょうか？
続きを読むのが楽しみです。
文章はかすみちゃんの一人称で書かれており、とても読みやすく、すべての漢字に振り仮名が振ってあります。小学校中学年から。海外選手も続々登場し、群像劇の側面もある少女小説なので、きっとお気に入りのキャラが見つかるでしょう。
また、綿密な取材の上で書かれており、ちょっとした裏事情なども交えつつ試合やルールなどがわかりやすく説明されていて、臨場感があります。フィギュアスケートをよりいっそう楽しめるようにもなっています。
フィギュア大好きなお子さまに。「氷の上のプリンセス・ジュニア編３」はスポーツものや何かを目指す女の子のお話が好きなお子さまにおすすめの少女小説です。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はありません。SNSやネットニュースなど、現代の世相も反映したストーリーでいまどきの中学生らしい悩みも描かれている少女小説です。
群像劇でもあるので、次々と登場する魅力的なキャラクターたちも楽しみです。
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