【すきなことにがてにこと】わたしのすきなことは誰かのにがてなこと。支えあっていけたら……やさしさが循環する絵本。【4歳 5歳 6歳】

2024年4月16日

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すきなことにがてなこと 新井洋行/作 嶽まい

ぼくはスポーツが大好き。ボールを使うと大活躍。でも、みんなの前で発表するのは苦手。こんなときは話すのが大好きなりんちゃんが一緒に発表してくれる。りんちゃんは動物が苦手だけど……(すきなことにがてなこと 新井洋行/作 嶽まいこ/絵 くもん出版)

この本のイメージ やさしさの循環☆☆☆☆☆ 「好き」を生かす☆☆☆☆☆ やさしい世界☆☆☆☆☆

すきなことにがてなこ 新井洋行/作 嶽まいこ/絵 くもん出版

<新井洋行>
1974年、東京生まれ。二人の娘の父。絵本作家・デザイナー。 絵本に「れいぞうこ」(偕成社)、「いろいろ ばあ」(えほんの社)、「みず ちゃぽん」(童心社)、「どじにんじゃ」(講談社)、「おおごえずかん」(コクヨS&T)、「ころころぽーん」(ほるぷ出版)など多数。挿画に「パーシー・ジャクソン」シリーズ(ほるぷ出版)、「モーキー・ジョー」シリーズ(フレーベル館)など。くもん出版からは、「えほんとあそぼ」シリーズのほかに「ぴーかーぶー!」「カチン コチン!」(絵・小林ゆき子)の2冊がある。

<嶽まいこ>
1985年石川県生まれ。東京都在住。金沢美術工芸大学視覚デザイン専攻卒業。 広告、雑誌、Web、パッケージなどでイラストレーションを手がける。イラストレーター、漫画家。"日常の中のふしぎなモノ・コト"をテーマに個展、グループ展など展覧会でも作品を発表。物語や文芸書の装画多数、漫画に「なんてことないふつうの夜に」「世にも奇妙なスーパーマーケット」、絵本に「すきなひと」(作・桜庭一樹 岩崎書店)「すきなこと にがてなこと」(作・新井洋行 くもん出版)などがある。

 本日はやさしさが循環する、素敵な絵本のご紹介です。初版は2021年。

 ぼくはスポーツが大好き。とくにボールを使うと大活躍。
 だけど、みんなの前で発表するのは苦手。
 こんなときは、話すのが大好きなりんちゃんが一緒に発表してくれる。

 りんちゃんは動物が苦手なのに飼育係に。でも、
 動物大好きけんちゃんが手伝ってくれる。

 けんちゃんは謳うのが苦手。でも、歌が大好きなソフィアちゃんがそばで
 歌えばけんちゃんも歌える。

 ソフィアちゃんは工作が苦手だけど、こうくんがヒントをくれる。

 そんなふうに、みんながそれぞれ好きなことで誰かの苦手を補います。

 この、「誰かの『好き』で誰かの『苦手』を補う」は、学校の友だち関係だけでなく、家族や、ご近所や、知らない人同士でも成り立ちます。

 そんなふうにやさしさの循環をひろげてゆけば、この世界はもっともっと優しい世界になってゆくはず……

 ……と、言うメッセージ絵本です。

 日本人は努力家で、謙虚な民族です。
 しかし、あるときから「自己責任」という言葉がひとり歩きをはじめてしまった気がします。もともとはこの国の人たちはもっと人情があったのです。

 今は、困っている人は「自己責任」、他人に助けてもらうのは「依存」、と言う風潮が昔よりずっと強い気がします。

 もちろん、どう考えても無理なサポートを求め、相手に迷惑をかけながら無理目な助けをしてもらうようごり押しするのは論外ですが、この絵本のように誰かの「好き」が自然と誰かの助けになるようになれば、それは負担になりません。

 仕事場では、自分一人ではできないと思われるトラブルを抱え込んで救助を求めないと大変なことになるので、トラブルに見舞われたらいちはやく声を上げる必要があります。

 でも往々にして、善良で我慢強い人が「どうして今まで助けを求めなかったんだ」と責められ、そんなに困っていないのに大きな声を上げる人の要求が通る、なんてことになってしまいがち。

 もっと誰かの「好き」で誰かの「苦手」をごく自然に補うことができたら……

 今は厳しい時代なので、誰かが誰かを助けることを「甘やかし」と言う人もいます。誰かにきつい意見を投げつけることが「親切」と言う人もいます。

 それはそれで正しい側面もあるのでしょうが、SNSなどでは実際にその人がどういう状況かはわからないので、心からの親切での「厳しいアドバイス」が「最後の一押し」になってしまう場合もありえます。

 それよりは、「いいね」を押したり「好き」を語ったりして、あたたかい気持ちを循環させていったほうが、誰かに何かが届くかもしれません。

 この絵本のすばらしいところは、誰かの助けになることが誰かの自己犠牲によって行われるのではなく、誰かの「好き」で行われるところ。

 助けてもらうほうは「苦手」なことなのだけど、助けるほうは「得意」ではなく「好き」なのだと言うのがポイント。

 わたしはここが大好き。

 よく日常生活でもめる原因として「料理は得意なほうがやればよい」「掃除は得意なほうがやればよい」という考えを耳にします。
 でも、得意な人って必要にせまられて上手にできるようになっただけで別にそれが好きでもなんでもない場合が往々にしてあるのですよ。

 だからこそ「得意」ではなく「好き」
 上手にできてもできなくても、完璧にできなくても「好き」なことは、嫌だと思わずに手助けできるものです。

 誰かの「好き」が誰かの「苦手」を支えることができたら、誰も犠牲にならない優しい世界が完成します。それは、ただの理想のように思えても……それに少しずつ近づけてゆくことはできるかもしれません。

 字はすべてひらがなとカタカナ。文章はややボリュームがあって、最大で見開きに20行前後ありますが、だいたいは見開きに8行前後で、五十音が読めるお子さまならコツコツとひとりで読み切ることができるでしょう。

 もちろん、読み聞かせにもおすすめです。

 読み終わると、ほっこりあたたかい気持ちになり、誰かにふと優しくしたくなる絵本です。
 誰も犠牲にならず、やさしさが循環する世界をぜひどうぞ!

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 おすすめです。ネガティブな要素は全くありません。

 お父さんが好きなことがお料理で、お母さんが好きなことが車庫入れというのが地味にお気に入りです。

 

商品ページはこち

 

 

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