【おはようスーちゃん】「思い出のマーニー」のジョーン・ロビンソンがおくる、ちっちゃなスーちゃんのストーリー。【小学校低学年以上】

2024年4月16日

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おはようスーちゃん ジョーン・G・ロビンソン/作・絵 中川李枝子/訳 アリス館

スーちゃんは、ちいさな家にパパとママとすんでいます。スーちゃんは、パパとおるすばんをしたり、ひみつでママの誕生日プレゼントを用意したり……スーちゃんの日常を描いた九つのお話。(おはようスーちゃ ジョーン・G・ロビンソン/作・絵 中川李枝子/訳 アリス館)

この本のイメージ 幼児あるある☆☆☆☆☆ かわいい☆☆☆☆☆ 日常☆☆☆☆☆

おはようスーちゃ ジョーン・G・ロビンソン/作・絵 中川李枝子/訳 アリス館

<ジョーン・ロビンソン>
Joan Gale Robinson、(1910年2月10日 ~ 1988年8月20日)はイギリスの児童文学作家。バッキンガムシャー州生まれ。イラストレーターとしての教育を受け、小説とイラストの両方を手がけた。代表作は「思い出のマーニー」「くまのテディ・ロビンソン」など。

<中川李枝子> 
日本の児童文学作家、作詞家。夫は画家の中川宗弥。1935年札幌生まれ。東京都立高等保母学院卒業後、「みどり保育園」の主任保母になる。72年まで17年間勤めた。62年に出版した「いやいやえん」で厚生大臣賞、NHK児童文学奨励賞、サンケイ児童出版文化賞、野間児童文芸賞推奨作品賞を受賞。翌年「ぐりとぐら」刊行。

 「思い出のマーニー」を書いたジョーン・ロビンソンに二人の娘がいます。その名はデボラとスザンナ。
 ロビンソンは出産後ふたりの子どもたちのために小さな子ども向けのストーリーを何作も書いています。

 有名なのはやんちゃな女の子メリー・メリーが活躍する「リー・メリー」シリーズ。
 そして、デボラと言う女の子が主人公の「くまのテディ・ロビンソン」シリーズ。おそらくこの「おはようスーちゃん」の「スーちゃん」はスザンナの愛称でしょう。

 「おはようスーちゃん」の原題はSUSIE AT HOME.イギリスでの初版は1953年。日本での初版は2007年です。

 お話は

  1 スーちゃんの砂場
  2 おるすばん
  3 スーちゃんとトム
  4 ママのたんじょう日
  5 スーちゃん 歯をぬく
  6 スーちゃんとポーターさん
  7 やねうらのせいり
  8 スーちゃん いぬをみつける
  9 スーちゃん くつを買う

 の九編で構成された短編集です。

 スーちゃんは「テディ・ロビンソン」のデボラよりは小さく、「メリー・メリー」ほどはやんちゃではありません。
 でも、子どもならではの無鉄砲さと無知さでよかれと思って大人が想像もしていないことをします。

 大人目線ではそれは大失敗なのですが、周囲の大人たちが優しく、愛情深くスーちゃんを見守ってくれているので、スーちゃんのあどけない思いやりや優しさがちゃんと大人に届き、スーちゃんにとっては大成功体験になっているのが素敵な世界です。

 ママのために一生懸命プレゼントを用意しようとする「ママのたんじょう日」は、心がほっこりとするお話で一番好きなのですが、本日はちょっと面白い「スーちゃん 歯をぬく」を少しだけご紹介。

 歯医者で歯を抜かなきゃならなくなったスーちゃんですが、未知のことなので少し怖いと思ってしまいます。
 そこで、ママがスーちゃんに歯医者さんでどういう風に歯を抜くかを説明してくれます。麻酔(おそらく笑気ガス)を吸って、気持ちよく寝ている間に全部おわっていますよ……と。

 そこでスーちゃんは、おうちでお人形を使って「歯医者さんごっこ」をすることにしました。ママもごっこに参加します。
 この「歯医者さんごっこ」がいいイメトレになって歯医者さんが怖くなくなる……と言うお話なのですが、これは「怖いこと克服」の方法としてなかなかに示唆に富んでいます。

 ちいさな子どもを歯医者に連れてゆくことは、大人にとって最難関の一つです。
 歯医者が好きな子どもはまずいません。
 「デパートに行きますよ」なんて嘘をついて連れてゆくとあとで盛大に恨まれますし、入り口の匂いや音だけで泣き出す子もいるし、診療台に大人しく座ってくれるほうが珍しいものです。

 でも、こんなふうに普段から「ごっこ遊び」を楽しんでいたら、もしかしたら遊びの延長で楽しく乗り越えられるのかもしれません。いや、わからないけど。

 文章は簡単な漢字混じりですが、すべての漢字に振り仮名が振ってありますので、五十音が読めればひとりで読み切ることも不可能ではありません。

 それぞれが短いお話なので、絵本を卒業したばかりで少し長めのお話に挑戦をはじめた年齢のお子さまにぴったり。読み聞かせにもおすすめです。

 小さな女の子のあどけない感受性がいっばいに詰まった「おはようスーちゃん」。
 お留守番のおともに、親子の読み聞かせタイムに、心があったかくなるほのぼの日常ストーリーをぜひどうぞ。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はまったくありません。スーちゃんが歯医者を克服するストーリは可愛らしいだけでなく、多くの示唆を含んでいます。

 読後はガラスのお皿に入ったアイスクリームを食べたくなるかも。

 

 

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