【パディントンのどろぼう退治】クマと暮らす、幸せで平和な日々。出版社を替えてシリーズ第12巻。【くまのパディントンシリーズ】【小学校中学年以上】

2024年3月29日

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パディントンのどろぼう退治 マイケル・ボンド/作  ペギー・フォートナム /絵  三辺律子 /訳  WAVE出版

パディントン駅でブラウンさん一家と出会い、一緒に暮らすことになったパディントン。人間の暮らしに慣れては来たものの、まだまだわからないことだらけ、騒動の連続です。でも、不思議とおさまるところにおさまり、みんなハッピー。今回は、意外な出会いもあって……シリーズ12巻。

この本のイメージ ここに来て新キャラ☆☆☆☆☆ ハロウィンエピソードあり☆☆☆☆☆ しあわせ気分☆☆☆☆☆

パディントンのどろぼう退治 マイケル・ボンド/作  ペギー・フォートナム  R.W.アリー/絵  三辺律子 /訳  WAVE出版

<マイケル・ボンド>
Michael Bond(1926年1月13日~2017年6月27日)。イギリス・バークシャー州、ニューベリー出身の小説家。代表作は児童文学『くまのパディントン』シリーズ。

<ペギー・フォートナム>
1919年、イギリスで生まれた。ロンドンの美術工芸セントラルに在学中、ハンガリーの出版社の依頼でエリナー・ファージョンなど子どもの本にさし絵を描いたものが好評で、引き続きさし絵やポスターの仕事をする。

<三辺律子>
英米文学翻訳家。フェリス女学院大学・白百合女子大学講師。「夢の彼方への旅」の翻訳で2008年度やまねこ賞受賞。他の訳書に「龍のすむ家」「モンタギューおじさんの怖い話」「緑の霧」など多数。

 イギリスからやってきた「くまのパディントン」シリーズ、第12巻目「パディントンのどろぼう退治」。原題はPaddington Here and Now.イギリスでの初版は2008年。日本の初版は2018年です。イギリスでも11巻が出版されてから30年近くして出版されたようです。実写映画化の発表が2007年だったので、その影響だったのかもしれません。

 パディントンのシリーズは、10作めまでは福音館から出版されており、以降はWAVE出版から出版されています。マイケル・ボンドのパディントンシリーズは全部で15作。13作めまでは日本で翻訳されていますので、残りの2作も翻訳されるといいですね。

 お話は、一話完結の短編集が多いので、どの巻から読んでも楽しめるのですが、パディントンがブラウン家に引き取られたいきさつなど、最初の設定を理解して読んだほうがわかりやすいと思います。最初から順番に読みたい方は、まずは第1巻「くまのパディントン」からお読みください。

 「くまのパディントン」のレビューはこちら

 さて、今回のパディントンは……

 ・レッカー移動事件
 ・パディントンのどろぼう退治
 ・パディントン、ピアニストになる
 ・パディントン、ハロウィーンパーティーをする
 ・パディントン、うっかり秘密をもらす
 ・パディントン、旅行社にいく
 ・クリスマスのサプライズ

 の7本です。
 
 パディントンのシリーズは、黄金パターンがあります。
 ペルーからやってきたクマのパディントン(この世界ではクマはしゃべります。どうしてなのかの説明はありません。魔法とかそういうのとは関係なくパディントンはしゃべるのです。ちなみに、ほかの動物はしゃべりません。このあたりがとても謎)が、人間世界のルールを知らないまま、見よう見まねで様々なことを体験します。

 パディントンは好奇心旺盛でチャレンジ精神があるので、とにかく何にでも前足を突っ込みますが、人間世界のことを詳しく知らないのと、とにかく言葉を言葉どおりに受け止める癖があるため、たいへんな誤解へと転がってゆく傾向があります。

 その結果、収集がつかなくなるような事態になるのですが、どういうわけかラスト近くで奇跡的なことが重なり、一部の人(たいていの場合、お隣のカリーさん)を除いて、みんなが幸せになるというハッピーエンド、と言うのが黄金パターン。

 パディントンの物語は、伝統的でお堅い「世間」に純粋だけどちょっとヘンテコな異端者が紛れ込んだときの幸せな共存が描かれています。

 また、毎回、パディントンの引き起こす騒動があまりにもダイナミックで、でもそれが最終的にとても綺麗に収束してしまうため、不思議な爽快感があります。

 「こうきたか!」と言う、スカッと感だけでなく、なんと言うか、自分の日常生活の、細かいことでクヨクヨしているのがばからしくなって来るのです。

 昔のお笑い番組のギャグなどで、誰かがボケると全員がズッコケて、その余波でセットの大道具とかが総崩れになる、と言うような演出がありました。

 パディントンの大騒動は、そんな感じなのです。

 ちょっとやりすぎ感があるレベルなのですが、「ラストにはどうせハッピーエンドにしてくれるのだろう」と言う安心感が、途中のドタバタを気持ちよく読ませてくれるのです。そう、それが「パディントン」の持つ謎のセラピー効果。

 たしかにフィクションなのですが、「こんな大騒動がちゃんと収まるのだから、わたしの悩みだってきっと解決するはず」と、思えてくるのです。いや、実際はフィクションでファンタジーなんだけども。

 このところは、伝染病や天変地異、戦争や哀しいニュースが続きます。このブログへおいでの方や、SNSその他で交流がある方々などを見ても、みなさま真面目で、すべてを真正面から受け止め、誠実に対応される方ばかり。

 けれど、そんなことを続けていたら、この激動の時代、つぶれてしまいかねません。どうぞ、定期的に休んで、優しくてほのぼのとしたものを見たり読んだり楽しんだりして、ご自分をいたわってあげてください。

 こんなときは、バカバカしいくらい楽しいお話のほうがいいと思い、今回はパディントンを推させていただきました。

 アマゾンプライムなどの動画サイトで映画も見ることが出来ます。映画がね、パディントンの引き起こす壊滅的騒動をかなり視覚的に再現していて、すばらしいのです。
 というか、わたしは最初に映画を見たので、「これはやりすぎだろう」と思ったんですけども、原作を読んで「原作リスペクト」の結果だと知って、たまげました。そういうお話です。

 でも、ちゃんとほのぼのとした心の交流もあって、大切なことも教えてくれて、すごくいいお話なんです。

 今回は、パディントンが語るルーシーおばさんの美徳をご紹介しましょう。

 「だからルーシーおばさんがぼくを育ててくれたんです。おばさんはテーブルマナーや、買い物にいったときはちゃんと『お願いします』と『ありがとうございます』って言うこととか、知ってる人にあったらぼうしをとってあいさつすることを教えてくれました。
 それに、いろんなことがうまくいかないときには、自分の恵まれている点を数えればいいってことも教えてくれました。おばさんが、朝、起きたらいちばんにやることなんです。たいてい、人は思っているよりもたくさんの幸せに恵まれているものだって言ってました」(引用 P144~P145)

 素敵な教えです。ハチャメチャなコメディなのに、こんなところでじーんとさせてくれるのです。

 古くて新しい、そして、面白くてじんわりあたたかいパディントン。心がくたくたに疲れたときは、ピュアでとぼけたクマの物語でほっこりしましょう。R.W.アリーのカラーの挿絵も入っていますよ。

 たまには気を抜いて生きてみましょう。楽しいことや、かわいいものを忘れずにね。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。とにかく楽しくて癒される児童文学です。大人が読んでも面白く、親子で楽しむのにぴったり。映画もパディントンの世界観を完全再現しているので、小説を読んだら映画を楽しむのもおすすめ。もちろん、逆でも楽しい。

 読み終わったら、濃く入れたミルクティーと、マーマレードをたっぷり塗ったトーストでひとやすみしたくなります。そして、ぜひそうしてください。心に休息は必要なのです。

 

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