【パディントン街へ行く】幸せを運ぶクマ、パディントンののどかな日常、第8巻。誰もが笑顔になる名作児童文学【くまのパディントンシリーズ】【小学校中学年以上】

2024年3月24日

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パディントン街へいく マイケル・ボンド/作  ペギー・フォートナム /絵  田中琢治 松岡 享子 /訳  福音館

今回もパディントンは大活躍。結婚式のお手伝いをしたり、ゴルフをしたり、病院に行ったり、パーティーの給仕をしてみたり……大騒動になったかと思いきや、最後はみんなが満足する大ハッピーエンドというぐあい。さて、今回のパディントンの起こす奇跡は……。

この本のイメージ クマと暮らす☆☆☆☆☆ 短編集☆☆☆☆☆ クリスマスのストーリーあり☆☆☆☆☆

パディントン街へいく マイケル・ボンド/作  ペギー・フォートナム /絵  田中琢治 松岡 享子 /訳  福音館

<マイケル・ボンド>
Michael Bond(1926年1月13日~2017年6月27日)。イギリス・バークシャー州、ニューベリー出身の小説家。代表作は児童文学『くまのパディントン』シリーズ。

<ペギー・フォートナム>
1919年、イギリスで生まれた。ロンドンの美術工芸セントラルに在学中、ハンガリーの出版社の依頼でエリナー・ファージョンなど子どもの本にさし絵を描いたものが好評で、引き続きさし絵やポスターの仕事をする。

<田中琢治>
1962年、大阪に生まれた。京都大学農芸化学科卒。農学博士。民間企業の研究者、京都大学助手を経て、カナダに移住。オンタリオ州のゲルフ大学で研究に従事したのち、カナダの大平原の小さな街、サスカトゥーンに移り、現在サスカチュワン大学で助教授として教育、研究に携わる。ペプチドに関連する酵素の研究が専門

<松岡 享子>
松岡 享子(まつおか きょうこ、1935年3月12日~2022年1月25日)、神戸で生まれた。大学卒業後、ウェスタンミシガン大学大学院で児童図書館学を学び、ボルチモア市の公共図書館に勤めた。帰国後、東京子ども図書館を設立し、子どもと関わる幅広い分野で活動をする。1974年、石井桃子氏らと、財団法人東京子ども図書館を設立し、同館理事長を務める。

 くまのパディントンシリーズの8巻目。原題はPaddington Goes to Town.(パディントン街へ行く) 原書初版は1968年。日本語版初版は2008年です。

 7巻が翻訳されてから、8巻が日本で出版されるまで、かなり間があいてしまったようです。これにより、翻訳は田中琢治先生と松岡享子先生のおふたりの名前が入るようになりました。

 くまのパディントンシリーズは、イギリスの平凡な家族、ブラウン家とペルーから一匹でやってきた好奇心旺盛なクマが引き起こすドタバタコメディです。

 このクマ、どういうわけか英語を流暢にしゃべるし、帽子をかぶって服を着て二足歩行して、人間のすることはたいていやりますが、クマなのです。呪いでクマになった人間とかではなく、本当に、ただのクマ。

 一応、どの巻から読んでも楽しく読めるのですが、パディントンがブラウン一家と同居することになった最初の話「くまのパディントン」から読んだほうがわかりやすいかと思います。第一巻のレビューはこちら

 今回のお話は……

  ・思い出に残る日
  ・パディントン、ゴルフの前足をそめる
  ・カリーさんのお見舞い
  ・パディントンの治療法
  ・パディントンの「最後の仕上げ」
  ・パディントン、給仕人になる
  ・パディントン、街へ行く

 の七本です。

 今回もパディントンは、結婚式を手伝ったり、ゴルフをしたり、パーティーの給仕をしたりと大活躍。恒例のカリーさんとのドタバタもあります。

 そういえば、原作のパディントンは第1巻の出版が1958年ですから、この「パディントン街へ行く」が出版された1968年では、もう10年経っているんですね。この間、ブラウン家はどうなっていたんでしょうか。ジョナサンとジュディが相変わらず家にいるので、なんとなく「サザエさん」の時空に入ってしまったような気もするのですが……。

 「パディントンとテレビ」あたりまでは、ちゃんと時間が流れていたような気がしますが、このあたりからあやしくなってきています。

 パディントンのシリーズには、黄金のパターンがあって、パディントンがよかれと思ってしたことで、なんらかの事件がおき、途中はどんどん悪化して壊滅的な事態になると思いきや、びっくり仰天の展開で、最終的にみんなハッピー、パディントンは怒らせていた相手にすら感謝されると言う、ミラクルなストーリーです。

 本人はいたって真面目で、ピュアで、まっすぐで、人を笑わせようなんてこれっぽっちも思っていないクマなのに、読んでいると思わずほっこり、笑顔になってしまう、そんな素敵な物語です。

 それにしても、どうしてみんなクマが二足歩行してしゃべれることに、なんの疑問も抱かないんでしょう……そこが、最大のミステリー。

 ラストシーンで、パディントンがグルーパーさんに「露出に、まだ時間がかかりそうなんですか、グルーパーさん?」と、グルーパーさんに聞くシーンがあります。

 このセリフ、たぶん若い人やお子さまには何のことだか、わからないと思います。

 夜のイルミネーションを見に、ブラウン一家とグルーパーさんが街に出たときのシーンでのパディントンの言葉ですが、グルーパーさんはおそらく、三脚を立てて、その上にカメラを固定して街の写真を撮影しているんですね。

 この当時はフィルムカメラの時代で、暗いところで綺麗な写真を撮影するときには「露出」と言って、暫くの間待つ時間が必要だったのです。パディントンは、グルーパーさんと仲良くするようになって、カメラのことも詳しくなっていたようです。

 今は、デジタルカメラの時代なので、昔のフィルムで写真を撮影して、現像して写真にする時代のことが、少しピンと来ないかもしれません。昔は、カメラで撮影するのは、いろいろと段取りがあって難しかったのです。

 今は「電話」で写真が撮れるんですから(というか、ムービーまで撮れる)すごい時代です。文明ってすばらしい。

 今回の短編集は、最後にクリスマスシーズンのお話になり、ブラウン一家とパディントンはグルーパーさんと一緒に町のクリスマスイルミネーションを見に出かけてゆくころで終わります。だから、クリスマスプレゼントにもおすすめです。表紙が緑色ですし、赤い包装紙で包んだらいい感じ!

 3月にクリスマスのことを言っても、気が早すぎますが、今年のクリスマスには、いろんなことが落ち着いて、みんなで和やかに過ごせますように、祈りましょう。

 きっと、パディントンのように、みんながハッピーになれるミラクルがやってくると信じて。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。楽しくゆかいな、子どものためのコメディです。落ち込んだ時、気持ちが暗いとき、くよくよしているのがばからしくなってくるほど、笑わせてくれます。
 何も考えず、楽しい時間を過ごしい時に、心の回復剤になってくれる児童文学です。

 読後は、ココアと、マーマレードサンドイッチでひとやすみ。

 

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