【ありがとう、フォルカーせんせい】きっと読めるようになる!可能性を切り開いた女の子の物語。【絵本】【5歳 6歳 7歳】
トリシャが5歳になったとき、本を読む練習をはじめました。けれど、どんなにがんばってもトリシャにとって字はくねくねした模様にしか見えません。絵はとっても上手なのに……(ありがとう、フォルカーせんせい パトリシア・ポラッコ/作・絵 香咲弥須子/訳 岩崎書店)
この本のイメージ あきらめない☆☆☆☆☆ 可能性をひらく☆☆☆☆☆ ひととは違うとき☆☆☆☆☆
ありがとう、フォルカーせんせい パトリシア・ポラッコ/作・絵 香咲弥須子/訳 岩崎書店
<パトリシア・ポラッコ>
アメリカの有名なイラストレーターで絵本作家。数多くの絵本賞を受賞し、日本でも絵本が紹介されている。
<香咲弥須子>
日本の作家、エッセイスト、翻訳家、スピリチュアルカウンセラー。
原題はTHANK YOU, MR.FALKER. アメリカでの初版は1998年。日本での初版は2001年です。
これは、LDと呼ばれる学習障害の少女の物語です。
LDとは、知能は決して低くはないのに、読み、書き、算数、あるいは聞いたり話したりする力のどこかに不思議な学びにくさがある子どもたちのことです。
LDに理解がなかった時代には、こうした子どもたちを乱暴に「知恵遅れ」と言う言葉でひとくくりにしていた時代がありました。
今はかなり理解が進んでいて、そのような偏見も少なくなっていますが、それでもまだまだ誤解がなくはありません。
主人公のトリシャは物語が大好きで、読み聞かせしてもらえれば理解ができるし、他人が話した言葉は記憶ができるのに、文章を読むことができませんでした。
彼女にはどうしても、字がくねくねした模様に見えてしまうのです。
何年たっても本が読めなくて絶望していたトリシャの学校に、フォルカー先生という非常に愛情深く教育熱心な先生が赴任してきます。
フォルカー先生はトリシャが必ず字を読めるようになれると信じ、放課後に様々な工夫をこらして根気よく教えてくれました。
やがて、トリシャは文章が読めるようになったのです!
そして………
……と、いうのがあらすじ。
トリシャは物語が大好きで読み聞かせしてもらえばすぐ覚えてしまうくらい、耳からの記憶力はいいのに、字が読めない女の子でした。
けれども、フォルカー先生の粘り強い指導と本人の努力でやがて本が読めるようになります。
その背景には彼女を肯定し続け、信じ続けてくれたおばあちゃんやおじいちゃんの存在もありました。
人と違うとき、どこかが変わっているとき、それが優れていても劣っていても、いじめの対象になることがあります。
トリシャは絵が抜群にうまく、字が全く読めないという、極端に優れたところと極端に劣っているところがあったため、いじめの対象になってしまいました。
フォルカー先生はトリシャをからかう子どもたちを叱り、トリシャの絵を褒め、そしてトリシャが字が読めるようになると信じて毎日指導してくれました。
何年か経ったあとに、フォルカー先生がトリシャのことを覚えていないのが印象的です。彼にとってトリシャはごく普通の子、あたりまえの子だと思っていたからなのでしょう。
LDではなくても、自分に絶望せず苦手なことを克服してゆく物語として、学ぶことの多い絵本です。
自分に自信が持てなくて、何もできないと思い込んで絶望してしまう子どもにも、その子のありのままを肯定し、愛し、信じて根気よく学びに付き合うことで、立ち上がれるよう促すことができるのかもしれません。
文章はほぼひらがなとカタカナですが、一部使われている漢字にはすべて振り仮名が振ってあります。
ですから、五十音が読めるお子さまなら、コツコツひとり読みで読み切ることができるでしょう。
しかし、これはぜひ、読み聞かせで。
文章量はわりとあって見開きに最大で17行前後、扱われているテーマもやや高度なので、幼稚園の年長から小学校低学年くらい向けでしょう。
自分にもフォルカー先生がいたら……
自分もフォルカー先生のようになれたら……
子どもも大人も多くのことを感じ取り、学ぶことができる絵本です。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
おすすめです。
HSPやHSCのお子さまのほうがより多くのメッセージを受け取れるでしょう。
何があっても肯定し続けてくれる、トリシャの家族やフォルカー先生が素敵です。
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