【カーディとお姫さまの物語】多くの作家に影響を与えた150年前の美しいファンタジー【小学校高学年以上】

2024年2月13日

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カーディとお姫さまの物語 ジョージ・マクドナルド/作 脇明子/訳 岩波少年文庫

カーディがゴブリンの国からお姫さまを救い出してから1年後。ふたたび王国が危険にさらされました。カーディは、王国の権力と富を狙う悪者たちから王さまとお姫さまを守る戦いに挑みます。

この本のイメージ 心の美しさ☆☆☆☆☆ 大逆転☆☆☆☆☆ 諸行無常☆☆☆

カーディとお姫さまの物語 ジョージ・マクドナルド/作 脇明子/訳 岩波少年文庫

<ジョージ・マクドナルド>
スコットランドの小説家、詩人、聖職者。『リリス』などの幻想文学や、「かるいお姫さま」など児童向けファンタジーの作者として知られる。彼の作品はW・H・オーデン、J・R・R・トールキン、C・S・ルイス、マデレイン・レングルらに賞賛され、マーク・トウェインも彼と友誼を結んだ。

 「お姫さまとゴブリンの物語」の1年後のお話になります。
 前半は、お姫さまと別れて、鉱山のある家でお父さんお母さんと暮らすカーディの日々。

 そういえば、お姫さまとカーディのあいだには、ひとつ、相容れない問題がありました。

 それは、お姫さまのひいひいおばあさま、超自然的な存在であるアイリーンおばあさまについてでした。

 お姫さまが館の屋上で出会った、アイリーンおばあさまをカーディは見ることが出来ず、アイリーンおばあさまの存在について、お姫さまを否定してしまったことでした。

 そして、カーディはずっと、アイリーンおばあさまについては、お姫さまの夢か妄想だと思っていたのです。

 物語前半は、カーディ自身もアイリーンおばあさまを見ることが出来るようになり、様々な試練の末に、アイリーンおばあさまから、不思議な力を授かるお話です。

 後半は、一年の間に驚くほど荒廃してしまった都と王宮にたどり着いたカーディが、王さまとお姫さまを助け出すお話。

 翻訳された脇明子先生のあとがきにもありますが、どうしてこんな短時間で立派な王国が荒廃してしまったのか、わからないほど、都は荒れ果てていました。前作「お姫さまとゴブリンの物語」が書かれてから数年が経過していますので、おそらく、当時の社会背景や、作者のおかれた環境などが変化し、心理状態も大きく変わってしまっていたのでしょう。

 小さなアイリーン姫も、変化していました。

 お姫様はまだ九つと十のあいだにすぎませんでしたが、それよりも四つ五つ大きいように見えました。ことに最近ひどく心を悩ませることがつづいたためか、目の表情などは一人前の女性を思わせるほどでした。(引用)

 とあります。9~10歳と言ったら小学校四年生です。そして、それより四つ五つ上と言ったら、中学校一年生とか二年生です。中学二年生に見える小学四年生って……!

 カーディがアイリーンおばあさまから授かった不思議なとは、相手の手を握ると、その人の内面がわかるという能力でした。

 手をとったときに、ありのままの、そのままの手に感じられたらその人はいい人、小さな子供の手に感じられるのは心の純粋な人、そうでない場合は、その人の内面に合わせて、動物の手だったり、蛇の手触りだったり、猛獣の手だったりするのです。

 そして、アイリーンおばあさまから授けられたリーナという醜く強い妖獣をお供にして、都の王宮にたどり着きます。(リーナの手はカーディが握ると小さな子どもの手)

 王宮はすでに荒廃し、悪人たちの住処になり、王さまは毒の入ったぶどう酒を飲まされ妄想にうなされながら寝込み、でたらめの遺言状にサインさせられそうになっていました。危機一髪で、カーディはそれを阻止します。

 しかし、都の庶民たちの心も荒廃し、もはや城にも城下にも、王さまとお姫さまの味方はいません。
さて、この難局からカーディは王さまとお姫さまを助けだせるでしょうか。

 というお話。

 たしかに、前作に比べると明らかに雰囲気は暗いのですが、「ほんとうにここまで深刻な事態がひっくりかえせるの?」くらいの状態を、カーディとお姫さまが力を合わせて打開していきます。

 暗い物語ではあるのですが、おとぎ話的だった前作よりも、困難に打ち勝つ力や、美しいものや真心を大切にする心、超自然的な美、善く生きようとする努力など、つらいときに考えなければならないことが、ひとつひとつ、丁寧に描かれていて、わたしはこちらのほうが好きです。

 マクドナルドはもと牧師さんだったそうですから、世の中の実情を見て、心を痛めていたのかもしれません。ファンタジーは、そのようなとき、読者の心を照らせるようにと世に送り出されることが多く、そんな「祈りの心」のようなものは、「お姫さまとゴブリンの物語」よりもこの作品のほうが強く感じます。

 わたしは、後半に出てくる、鳥使いのメイドさんが好きなんですけど、この人もラストにサプライズが待っています。
 カーディとお姫さまの行く末を、さいごまで読んで確認してみてください。

 翻訳の文章がとても上品で美しく、テンポがよく、すいすいと読めます。また、マクドナルドの作品は映像的で美しく、感受性の強いお子様にはおすすめです。電子書籍版もあります!

 多くのファンタジー作家に影響を与えたマクドナルドのファンタジーにどうぞ触れてみてください。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 美しい映像が目に浮かぶ150年前のファンタジーです。教訓的なこともたくさん書かれており、繊細なお子様にはおすすめです。大人にも。すこし諸行無常な雰囲気はありますが、おおむねハッピーエンドです。
こんなところからどうやって逆転するんだろう、という大逆転がおきるので、現在、学校などでつらい想いをしているお子様には励ましになるかもしれません。

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